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第24話 元クラン職員は三十五歳

夜の張り込みは、思ったよりあっさり終わらなかった。


 第四層旧換気路前で待っていたのは、違法ガイド本人じゃなく、先に来ていた女だった。


 三十五歳くらい。黒いパンツスーツに作業靴、髪は後ろで雑に結ばれている。逃げるでもなく、俺たちを見るなり肩をすくめた。


「やっと公の人が来た」


 名乗ったのは真壁由佳。元黒曜牙の物流担当だという。


「黒瀬の逮捕後に切られました。でも地下の抜け道商売だけは残ってる。案内してるのは別口の業者です」


 玲奈が警戒を解かないまま問う。


「どうして協力するんです」


「三十代半ばで前科持ちのクランに未来を預けたくないからです」


 まっとうな理由だった。


 由佳は換気路の鉄柵を指した。


「案内客は全員大人。副業探索者、動画配信者、企業の接待組。閉鎖エリアの方がレア魔石が残ってるって煽って、二万から五万取ってます」


「経路は」


「旧換気路から第四層保守床下。途中の送風機を勝手に直して、通れるようにしてる」


 直してる、という言葉にまた腹が立つ。


 俺たちの仕事をなぞりながら、人を死にやすい場所へ誘って金を取る。それがどれだけ最悪か、保守を知ってる人間ほど分かるはずだ。


「証拠はあります」


 由佳が渡してきた端末には、業者との連絡履歴と、古い保守用品の横流し伝票が残っていた。灰塔設備の残党と、別の設備下請け会社の名前が見える。


 辻本が小さく舌打ちする。


「まだ食ってやがったか」


 今夜の摘発もできる。だが由佳の情報で、もっと厄介な事実が分かった。


「連中、週末に“閉鎖第四層ツアー”をやるつもりです。十人以上」


 十人の大人が違法ルートで閉鎖エリアへ入れば、事故は一回で済まない。


 玲奈が端末を閉じた。


「先に入口を死なせます」


 俺は頷いた。


 壊すんじゃない。誰にも使えない正しい閉鎖状態へ戻す。


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