第15話 救助配信は誰のものか
避難計画を詰めている最中、澪の端末が鳴り止まなかった。
報道系の知人、切り抜き業者、動画広告会社、配信プラットフォームの担当。昨日まで見向きもしなかった連中が、救助配信に“独占性”を求めて群がってくる。
「取ると思います?」
屋上の喫煙所跡で、澪が苦笑した。彼女は煙草を吸わないのに、ここが一番静からしい。
画面には太字の文面が並ぶ。
『危険な現場ほど視聴率が取れる』
『救助瞬間を優先的に撮ってほしい』
『避難誘導より現場の迫力を』
「最悪ですね」
「ほんとに」
澪はその場で、一件だけかけ直した。
「柴崎です。今後うちの配信で、救助者の顔を煽る演出はしません。広告優先も、危険誘導も受けません。はい、切ります」
短く終えて、電源を落とす。
「スポンサー、切ったんですか」
「現場を売るために始めたわけじゃないので」
さらっと言うが、生活は痛むはずだ。
「後悔しません?」
「したら、その時はおでん奢ってください」
思わず笑ってしまった。
その頃、玲奈から連絡が入る。令状が通った。灰塔設備の臨時倉庫へ今夜入れる。
配信について、俺たちはルールを決めた。
避難経路優先。実況より案内。顔は映さない。危険区域への無謀な視聴者誘導をしない。投げ銭は装備と補給へ回し、会計は全部公開。
「地味ですね」
澪が言う。
「俺たちらしい」
その返事に、彼女は満足そうにうなずいた。
派手さはいらない。今必要なのは、壊れる前に人を遠ざける情報だ。
そして倉庫には、その逆をやってきた証拠が眠っている。




