表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/40

第13話 元上司の再就職依頼

蒸気が薄れると、倉田はいつものスーツ姿のまま立っていた。


 隣には黒曜牙の装備を着た男が二人。黒瀬本人はいないが、用心棒としては十分だろう。


「余計な場所に鼻を突っ込んだな」


「灰塔設備の点検倉庫ですか。趣味が悪い」


 俺が返すと、倉田は小さく笑った。


「まだ口が回るなら大丈夫だ。須藤、お前に悪い話じゃない」


「悪い顔してますよ」


「現場主任へ戻してやる。給料も、手当も、前より上だ」


 澪が無言でカメラ角度を少し変える。胸元に仕込んだ予備端末へ音声が流れているのを、俺だけが知っていた。


 倉田は続ける。


「大人はな、全部正しくなくても生きていける方を選ぶんだ。事故なんてどこでも起きる。責任を押しつけ合うより、丸く収めた方が現場は守れる」


「守れてませんよ」


 俺は小部屋の積み上がった魔石箱を見た。


「ここにある全部が、その証拠だ」


 倉田の顔から笑みが消える。


「お前一人が騒いだところで、市は桜葉を止めない。黒曜牙もスポンサーも、灰塔設備も、この駅で食ってる人間もいる」


「だから壊していい理由にはならない」


「綺麗事だ」


「現場が壊れたら、綺麗事を言う場所すらなくなるんです」


 沈黙の後、倉田が吐き捨てるように言った。


「相変わらず扱いにくいな」


 用心棒の一人が前へ出た瞬間、澪が足元の工具箱を蹴った。転がったスパナを俺が拾い、蒸気で緩んだ点検扉のロックへ突っ込む。


 修繕。


 逆だ。壊れて戻らないようにするんじゃない。戻るべき形へ戻す。


 固着していた点検扉が一気に開き、俺たちは狭い非常通路へ飛び込んだ。背後で怒鳴り声が上がる。


 だが逃げ切ったと思った直後、通路全体の風が止まった。


「……換気が死んだ」


 肌で分かる。ダンジョンの呼吸そのものが鈍っている。


 これは通路一つの問題じゃない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ