21 ミニミニ演壇
「体調はどう? メナリスさん」
仮拠点内に存在する二階の個室を、『白夜』は当代『独行の羽根』メナリスに一室貸し出していた。
リルはメナリスが居る個室の扉をノックする。拒絶の返事が返ってこなかったために、扉を遠慮なく開け放った。
「また、キミが来るのか」
「また私でごめんなさいね。担当医師をその都度変えてあげられるほど、治療系の隊員は余っていないのよ」
「そういう意味ではないが。キミと顔を合わせたくないわけではなく、人族と……まぁ、いい」
リルはベッドに横たわっている、微かに瞼を上げたメナリスの顔色を窺う。次に額へ手を当てて、次の次にメナリスの上体を起こさせる。
メナリスは上体を起こされるのと同時に、瞼を完全に上げて、リルの顔を認識した。
「うん、体調の方はだいぶ改善されたようね。これなら本拠地行きの馬車にも乗せられるわ」
「問題ないと、私は既に言っておいたはずだ」
「無茶な嘘はよしなさい。アナタが意識を取り戻した直後の顔色、真っ青だったでしょう」
持参したお粥と水が乗ったおぼんから、リルは水を手に取ってメナリスに飲ませる。
メナリスは一番最初こそ大いに抵抗していたものの、リルの根気強さと己の体調不良を鑑みて、無駄であると諦めた。今は渋々ではあるが、無抵抗で受け入れている。
メナリスは軽く咳き込みながら、言葉を形にする。
「……人族というのは、殊の外隙だらけだな」
「現在進行形で病み上がりの人には、間違っても言われたくない言葉なのだけれど。一応、意図を聞いておくわ。どうしてそう思ったの?」
メナリスは両手、身体、周囲、ありとあらゆる方向に視線を巡らせる。
視線を四方八方に巡らせているメナリスの表情は、柳眉は寄せられているし、目つきは鋭いしで。控えめに言っても、迫力がありすぎる美人特有の威圧感を感じ取れた。
「中立に位置する、『独行の羽根』相手とはいえ。一度は襲撃をとり行った私に、何故拘束の一つも施さずにいる? 警戒を怠っているようにしか感じられない」
「そういうことね。『白夜』は過去に『独行の羽根』にお世話になったことがあるし、そこまで無礼な態度はとりたくないのよ。余程のことがなければね」
「それは先代『独行の羽根』の話だ。私の話ではない」
「先代だろうが当代だろうが、『独行の羽根』に対する恩は忘れてないわ。それに、もし恩を勝手に感じてくれるのなら感じてくれるで、都合も良いしね」
リルが片目を閉じて、ちゃっかり打算的な考えを持っていることも表明する。メナリスはため息を吐いて、「そうか」の一言でその場を一時的に決着させた。
雑談に決着をつけたメナリスは、リルを前触れなく指差し、メナリスにとっては最も必要な答えを聞き出すための嚆矢とした。
「──それで? 私を本拠地に連れ込んでまで、どのような依頼をするつもりなんだ?」
「あら、ただ休ませるだけよ? 本拠地の方が設備が整っているもの。私も戻らないといけないし、一緒についてきてもらうだけ」
「馬鹿も休み休み言え。私を仮拠点で休ませるまでは、恩を売るという名目でわからなくはない。だが、その後大結界外に逃すのではなく、『白夜』の核である本拠地まで護送する、などというのは。恩を売る以上の目的を感じる」
眼前に差し出されたメナリスの指先を、リルは何も言わずに見つめる。勘繰りの視線を浴びてもなお、リルは一瞬たりとて動揺を態度に露わそうとはしなかった。
やがて、リルは呆れと、それを上回る好奇心を悪びれもせずに瞳へ乗せた。
「否定はしないでおくわね。その様子を見るに、私達の目的なんて。とっくに察しているようだし」
*****
「マジすか。俺と、『独行の羽根』の二人で? これまた踏み切った少人数派遣っすね」
「今回の目的を鑑みると、鳥人族を無闇矢鱈に刺激してしまうような真似事は最たる悪手。大人数で行けば、敵対の意思がなくとも警戒は避けられないため、人数は抑える。──だからこそ、リスクが大きい依頼であるのも自明の理だ。断りたければ、断ってもらって構わない」
ロンシェとレイトが、本拠地の門内で外の空気を吸いながら、再度出向くことになる鳥人族の領土内調査について話し合っていた。
レイトはロンシェの言葉に全力で首を振り、昂然と両手を掲げる。
「いいえ! ぜひ、ぜひ行かせてくださいっす!!」
「随分とやる気に満ち溢れているな」
「前回先遣隊には呼ばれないし本隊も動かなくて済んじゃったしで、めちゃくちゃ暇だったんで!! そりゃあ張り切っちゃうっすよー!」
「言葉の端々に、私怨が籠っていないか」
「そんなことは〜……あるかもっすけどぉ〜」
レイトは前回の鳥人族領土内調査で先遣隊に抜擢されず、無念の涙を流しながらけん玉遊びで待機する羽目になった挙句。先遣隊に全ての仕事を取られ、結局本隊として動くことも満足にできなかったのである。
そんな辛酸を舐めさせられてからこうして頼られれてしまえば、どんな案件にでももろ手を挙げて歓迎してしまう。それは、レイトの性を鑑みれば、仕方のないことだった。
誠実さに満ち溢れた言葉遣いと態度で頼まれれば、尚更のこと。
「──兎にも、角にも! 今回のこと、頼ってくれて嬉しいっす!」
「大袈裟な」
それに、レイトにとって、ロンシェは特別な人間。恩人なのだ。
ロンシェに頼られるこの感覚は、何ごとにも代え難い喜びがある。
「頼られちゃって有頂天! 是非とも自慢しまくりたいんすけど。これって、言いふらしていい奴っすか? それとも、秘密にしておいた方がいい奴っすか? そこら辺はちゃんと弁えるっす」
「特別隠すようなことでもない。話題に出したところで、問題はないだろう」
「じゃあ遠慮なく! めっちゃくちゃ自慢しまくるっす!」
「それはどうかと思うが。羨ましがる人間もそういないだろうに」
レイトはくるくると袖を翻しながら、ロンシェの呟きにも耳を貸さずに、喜びを帯びさせている軽やかな足取りで動き回っていた。ロンシェはその呟き以上のことは喋らずに、口を噤む。
ロンシェがレイトの意味なき喜びの舞いを、なんの感慨もないままに傍観していると。レイトが不意に立ち止まる。
レイトは、思惑の奥底を覗こうとする、純粋無垢な視線をロンシェへ送った。
「あ、そうだ。一応聞いておきます。任務に対する認識に、齟齬があっても困るんで。──俺だけじゃなくて『独行の羽根』にも助力を仰ぐのは、どうしてです? やっぱり、舐められるからっすか?」
「キミが考えている通りだ。差異はない」
「うーん、やっぱりかぁ」
此度の鳥人族領土内調査は、前回の調査とは目的が大きく異なる。赴く場所が同じでも、目的が大きく異なれば、手段を前回と統一することが最善であるとは限らない。
前回は『独行の羽根』の拠点を探して、『独行の羽根』との対話の場を設けることが目的だった。
そして、今回は『独行の羽根』から得た情報の裏付け、未知の病に関する情報収集を行うことが目的だ。
前回の目的に基づいて言わせてもらえば、鳥人族とのコンタクトに価値はそこまで存在していなかった。領土の境目を探索すればいいという目安があらかじめ存在していたことと、友好的な態度をとらず、多少交戦した所で支障が出なかったからだ。
しかし、今回の目的を鑑みるとそうはいかない。多くの鳥人族達の様子を、その眼で実際に確かめなくてはならないこと。症状が出始めた頃合いや、症状そのものの知っていること全てを明細に聞き出したいこと。
観察対象、目的の本質がどうしても『種族』そのものになる以上は。今回は寧ろ、鳥人族とのコンタクトこそが価値そのものであり、依存対象なのだ。
と、なると。
もはや説明は不要ですらあるが、コンタクトを取る。その行為を踏まえれば、相手に舐められるというのは致命的。
──なのだが、鳥人族は中位種族に、人族は下位種族に位置する。舐められるな、頑張ってこい、と言う方が無茶振りであるという、悲しき現実がこの世にはある。
ロンシェがレイトに『独行の羽根』を同行させるよう手を回しているのは、そういった理由あってのことだ。
『独行の羽根』が隣についていれば、最低限交渉の場まではこぎつけられるだろう。
「『独行の羽根』に助力を求めるのはなんとなく予想できてたし、意外ではなかったっすけど。対価どうするんです? これ、結構ネックになると思うんすけど」
鳥人族相手ともなると、『独行の羽根』は慎重にならざるを得ないだろう。対価は高くつくはずだ。
病が原因で動いていると『独行の羽根』本人が明言した以上、鳥人族から依頼を既に引き受けていると考えるのが自然な流れである。
無論、『独行の羽根』本人が病を恐れて、勝手に動き出したとも考えられはするが。もしそうであるのなら、現状維持よりも渋々移住を考えていそうな性格の持ち主だ。都合が良いから棲みついているだけで、鳥人族に対して、特別な思い入れがあるというわけでは無さそうである。
現状所持する情報だけで推し量れば、後者の線より前者の線の方が強いだろう。
前者の線を追えば、鳥人族は現在進行形で『独行の羽根』にとっての依頼人だ。そして、対価を支払った正当な依頼人ともなれば、粗末に扱うことは禁忌に当たるだろうし、何より鳥人族とは長らく共存関係にある。わざわざ共存関係に影が差す面倒事を、喜んで引き受けるとは考えられない。
間違いなく、鳥人族と人族の間に入って仲介人を務めるなどとは、軽々しく口にして承諾できる立場ではないはずだが。
「それに関しては、既に判断を下し終えている」
「え、マジっすか? 迷いに迷って、最悪皆で意見出し合いっこの会議案件になるかな、とすら考えてたんすけど」
「問題ない。至宝の魔道具『源泉』の魔力の授与──つまり、彼女にはいつでも領土を出入りできる権限を与えるつもりだ」
「……え?」
ロンシェの奇想天外な発言と、無機質極まりない口調と表情筋の組み合わせによる、あまりのちぐはぐさに。レイトは思わず、冗談かと疑った。
しかし、そんな疑念も即座に晴れていく。ロンシェは人族間での重要な話し合いで、この手の悪趣味な冗談は吐いたことがない。
それはこれから先も、変わることはないと知っている。
レイトは言葉の咀嚼を終えて、意味を嚥下すると。阻止という意味合いを孕んだ態度で、持ちうる限りの力を使って両手を振り回した。
「……いやいやいやいやいや! 『独行の羽根』に権限渡しちゃったら、人族へ危害を加える系統の依頼の難易度はだだ下がり! 暗殺目論み放題! しかも、当代『独行の羽根』が自由に行き来できることを知った輩が増えれば、依頼件数自体も増えますよ! それは流石に考え直してくださいって!」
「苦渋の決断だ。確かに、『独行の羽根』へ権利を引き渡すのは大いに危険が伴う。しかし、二つの理由を踏まえて、オレはこの対価を選ぶ」
ロンシェはレイトの必死な阻止を耳にしてもなお、冷静さを乱そうとはしなかった。
レイトはロンシェの姿勢に免じて、説得の羅列を一旦打ち止める。
「一つ目、妖精族との友好関係維持による、人族への警戒心。二つ目、『独行の羽根』の依頼の選り好み。まずは一つ目から詳しく説明しよう」
ロンシェはレイトが口を挟もうとしないことを、一拍会話に間を空けたことで確認する。確認を終えると、説明を始めた。
「先代大妖精様が殺害され、ティーナ様の仲介の下で、殺害者調査へ人族が協力したこと。体質の関係上、未だに一部の種族に狙われ続け、強固な友好関係締結を目指していた妖精族と──技術提供における最恵種族待遇を目指す、人族との利害関係の一致。それらをきっかけに得た、妖精族と人族との友好関係。この友好関係は、妖精族が結んでいる友好関係の中で、最も強固と言っても差し支えない」
「そうっすね。……種族の繁栄を最優先、弱者を徹底的に排除して繁殖する、究極的な合理主義の人形族とは。技術面で真っ先に、大いに高評価を与えられたが故に、古くから友好関係にあるとは聞いていますが。大妖精様に関連する事件に関われた時点で、流石に優先順位はこっちの方が上、だとは思うっす」
大妖精一族は、妖精族にとっての宝そのものだ。宝に関連する事柄の核心に触れようとした人族のことは、妖精族にとっては信用できる──と言うより、信用すべき──相手だと考えていることだろう。
「人族全体を害するということは、妖精族全体を害すると同意義になる。害すれば、温厚な妖精族でも、当然技術提供は止める。技術提供に前向きな姿勢をとっている、温厚な妖精族相手だからこそ、」
「高知能を持った敵であればあるほど、敵には回したくないと考えるっすね。妖精族からの協力を得られないともなると、最先端の知識を得るには苦労する。もし常に最先端で在れなければ、常に不屈では在れない」
「高知能者が企まないのであれば、問題は然程存在しない。狙う者は出てきても、そう簡単に『独行の羽根』が応じるとは考えられないからな」
ロンシェは一つ目の理由の説明を終えると、疑問があるかどうかを沈黙と視線で問う。レイトが首を振ると、ロンシェは説明を続行した。
「次に、二つ目。『独行の羽根』は元来、どのような種族を相手にしても、中立を維持することこそが美徳である、という思想の持ち主だ。一種族を敵に回さない、直截に関係せずとも済む情報収集の依頼を好んで引き受ける。──人族の領土襲撃などというのは、型破りな対価を支払われたが故の、例外だと考えていい」
「それはそうなんですけど。一個人の暗殺を企てられた場合は、阻止のしようがありませんよ? 『白夜』が見回りするにも、限度がありますし」
「『独行の羽根』に依頼してまで暗殺を目論むことになる、人族に所属した一個人ともなると。どういった人物像が思い浮かぶ?」
レイトは首を捻って、思い浮かぶ限りの特徴を想像し、空想上の人物を数人創り出した。数人創り出した上で、『独行の羽根』と対峙することになる過程を経た人間だけを選出して、その他は思考の箱庭から締め出した。
「──他種族との関わりがある、元マールムの成り上がり者とか。『白夜』の隊員とかですかね。契約云々、恨みつらみ云々の問題で」
「だろうな。……しかし、元マールムの成り上がり者などそうはいない。というより、居たら護衛や警備レベルは間違いなく、個人というカテゴリーだけで絞ればトップレベルだろう。余計な世話だ」
ここで元マールムの食わせ者、成り上がり者の事例を実際に教えることができれば、説明にも説得力が生まれて楽になるのだが。
生憎、ロンシェの頭の中に思い浮かぶ、食わせ者の成り上がり者達の中に、元マールムが居るかがわからない。曖昧な言葉使いしか許されていないこの場に、口惜しさが残る。
それも、ロンシェ個人の知識、人脈といった領域に問題があるわけではないのが、余計に口惜しさを加速させた。
ロンシェに問題があるわけではないにも関わらず、何故事例を何一つ説明できないのか。簡単な話、元マールムであったとしても、わざわざ差別対象であることを明かす食わせ者などいないからだ。
「もう一方の『白夜』の隊員についても。他種族と関われるレベルに達した強さの『白夜』の隊員であれば、『独行の羽根』も殺害に苦労はする。殺気に敏感な者が多いのはさることながら、大抵が拠点内にいるからな」
「それでも、身を守れるかは絶対ではないっすよね。領土外へ調査に出ている時とは違って、完全なる不意打ちの形になるわけですから」
「ああ。前者とは異なり、単独行動時間も非常に多くなる分。隊員達の安全は、確実には保障してやれない。あくまで苦労するというだけで、殺害される可能性は大いにある。故に、『苦渋の決断』だ」
「…………」
「幻滅したか?」
可能性は低い。しかし、確実ではない。絶対など存在しない。
『白夜』の隊員達にとって、領土内というのは完全無欠な安全地帯であり、唯一無二の愛すべき帰る場所だ。それを穢されると知れば、激昂されたって文句は言えない。
かつて武士や軍人、騎士と呼ばれた人間達だって、肉を断ち血を浴びることよりも、安全地帯の拡張や維持──畢竟、心の安寧を得ることこそが、何よりの望みだっただろうから。
ロンシェはそう考えて、身構えていたが。レイトの反応は予想とは裏腹に、遥かに穏やかなものだった。
「いいえ。命を奪われるかもしれない、なんてことは。『白夜』に一度所属した以上、皆が持つべき覚悟と言えるっすから。幻滅なんてしませんよ。ただ、」
「ただ?」
「『白夜』の隊員が狙われるのはこの際覚悟するにしても、隊員の家族が人質にされたりしたら……とは、どうしても考えちゃうっすね」
「いや、そちらに関しては、可能性は皆無と言っても過言ではないだろう」
「むむむ」
ロンシェの断言に、レイトは困惑を滲ませつつも、あけすけに胸を撫で下ろす。
ロンシェは根拠なき励ましの言葉などかけない。誰よりも誠実に、誰よりも生真面目に物事へ取り組む男だ。説明をされる前から、身構えずにレイトは信頼の姿勢をとれる。
誠実という言葉の解釈は多岐に渡るが、レイトは少なくとも、虚偽が一切存在しないロンシェの言葉こそが誠実であると信じている。
たった一声で安心させられるこの人が、誠実でないというのであれば、誠実という概念がレイトにはわからなくなる。そんなことを考えてしまうくらいには、信じている。
「んーと、どういうことっすか?」
「『独行の羽根』は多方面に警戒と不安を煽るような真似は必ずしない。隊員達の命は軽い、などということを言いたいわけではないが。一般人を巻き込むというのは、一種族を敵に回しかねない。垣根を越える行為だと言える。心配は無用だ」
「ふむむむ〜っす」
依頼をこなす手段は多種多様で、人質という選択肢も当然頭の中には浮かぶことだろう。だが、それは必ず選ばないと、ロンシェは断言してみせる。
立ち向かう気のある者を殺すことはあっても、無辜の民を殺すことはない。無辜の民をたかが一名、されど一名殺して、一族そのものが報復に動くような事例──要するに、数字や効率だけじゃ計り知れない、『地雷』というものが理性には存在する。
それを理解できていなければ、中立者などこなせるはずもない。
『地雷』に踏み込んできたら踏み込んできたで、『白夜』側もそれ相応の敵対意識を持って殺しに行く。
──だからこそ、殊更に。
「だからこそ、殊更に。人族領土内襲撃の異質さが際立つわけだが。考えた所で、明瞭な答えなど出ない。精々、偏見を語るまでに落ち着いてしまう」
ロンシェの呟きはあくまで呟き程度のものとして霧散し、熟考していたレイトの耳には届かなかった。
「よし、おっけーです。ロンシェさんなりの所信表明は理解できたし、結果的に文句なしと翻意できたので。報酬の件はもう何も口を挟まないっす。『独行の羽根』の同行も、喜んで呑み込んでおくっすよ」
「ああ。……『独行の羽根』に取引を持ち込むのはオレだが、実際に連れて行くのはキミだ。苦労をかけさせるが、頼んだ」
「頼まれたっす、ふふん」
ロンシェが説明を締めくくると、レイトは胸を張って納得の意をわかりやすく見せつける。ロンシェはレイトの露骨な仕草に呆れつつも、安堵が胸中に広がっていくのを感じた。
ロンシェが広がっていく安堵を噛み締め終わると、「それと」と一言溢してから、表情を堅いものに一変させて、
「調査任務の前に、至宝の魔道具『談の宝石』を渡しておく。ゆめゆめ、忘れないように」
道具や細かい任務内容を忘れがちなレイトへ、入念に釘を刺した。
「……あ、あー。はい! 勿論!」
「忘れるな。いいな?」
「も……勿論! っす!」




