第60話 人間の弱点
その頃カイトは――
床をぶち破られた奈落の底。もうもうと立ち込める激しい土煙のフロアで、カイトは身の丈3メートルを超える巨人グリモと、凄まじい風を纏った純粋なフィジカル格闘戦を繰り広げていた。
「おいおい、デカすぎるだろお前!」
カイトは低く身を構えながら、目の前に立ちはだかる圧倒的な質量の壁に対して、思わず鋭いツッコミを入れずにはいられなかった。3メートルの巨躯。
グリモの放つ一撃一撃は、ビルの柱をも容易くへし折るほどの破壊力を持っている。
「はははは! 貴様は我が巨漢によって潰れるがいい!」
グリモが大気を激しく震わせる地鳴りのような爆音で高笑いし、太い丸太のような腕を、容赦なくカイトに向けて振り下ろしてきた。
まともに喰らえば、一撃で肉体が木っ端微塵に粉砕される死の質量攻撃だ。
だが、カイトはそれを、ただ恐れて逃げ回るような軟弱な戦士ではなかった。
「これならどうだ! 疾風斬!」
カイトは自慢の風の能力を肉体に完全同調させ、超高速のステップを踏んだ。カイトは手力をグリモに向けて空に振る。
ビュオォォォッ!!!
カイトの放った鋭い風の刃――疾風の新手が、グリモに向かって一直線に飛んでいく。
しかし、グリモはパレット・カンパニーの軍事部取締役。ただのデカいだけのでくのぼうではない。
グリモは向かってくる斬撃を、自身の分厚い胸を張って強烈に弾き返してみせた。
ガキィィィン!!!
「お前硬すぎんだろ!」
グリモはそれらの斬撃を受け流しながら、不敵な笑みを浮かべた。
「無駄だ、無駄だ! すべてが規格外の我がグリモの肉体に、そんな微風が通用すると思うな! お前、一回す(少し)遊んでやる!」
グリモが吠え、その巨大な質量でカイトを圧倒しようと、さらに激しい地響きを立てて突進してくる。
しかし、この規格外のグリモに真っ向から翻弄されるカイトではなかった。
カイトはそれを、自身の格闘センスで完璧に避ける。 ドンッ!!! グリモの放った巨大な裏拳が空振りをし、フロアの壁を粉々に粉砕した。
すべてが規格外のグリモの肉体に翻弄されるカイト。なら……!風が揺らぐ。
だが――しかし! カイトはただ避けているだけではなかった。彼は激しい攻防の中で、グリモの巨躯が持つ決定的な弱点を、その鋭い瞳で既に見抜いていたのだ。
「じゃあこれならどうだ! 風牙!」
風が獣の牙になり、グリモの腕に噛み付く
「はっー! こんなもの、かゆいかゆい!」
カイトはニヤリと笑う
このままでは簡単に弾き返されてしまう。しかし、カイトはそれを逆手に取った
「お前!俺の風牙に気を取られすぎじゃないのか!」
カイトはグリモが風牙に釘付けになっている間に
グリモの後ろに回り込む
カイトが狙いを定めたのは、グリモの巨大な『太もも』だった。
いくら体の大きさを3メートルに自在に変えられる能力を持っていようとも、その巨躯を支えているのは、たった二本の足なのだ
的が大きくなったということは、すなわち、カイトからすればこれ以上ないほどに相手にできる部位が、目の前に無防備に晒されていることと同義だった
カイトは巨木の幹のようなグリモの足をガッチリと両腕で掴んで、そのまま持ち上げてしまった!
「う、うおおおおおおおっ!?」
グリモの顔に、初めて凄まじい驚愕と狼狽が走る。
3メートルの巨人を、生身の人間が持ち上げるなど、本来であれば物理法則を無視した暴挙。
だが、カイトはそれを、自身の超フィジカルを腕の中に一点集中させることで、強引に実現させてみせたのだ。
「ふんぬぬぬぬぬ……!!
目一杯頑張って持ち上げ、グリモのバランスを崩したカイト
カイトは体中の筋肉を極限まで使い倒し凄まじい咆哮と共にグリモの巨躯を完全に浮かせ、その巨大なバランスを崩させた。
そう、体のサイズを自由自在に操るグリモの最大の落とし穴。それは、大きくなればなるほど、自身の体重を支えるための重心のコントロールが、著しく難しくなることだった。
一度その巨大な足を持ち上げられ、バランスを崩してしまえば、あとは自重の重さによって、自滅するしかなくなるのだ。
バランスを失ったグリモは前に倒れてしまう。その瞬間を見逃さなかったカイトは、グリモの上に乗りかかる……!
ドゴォォォォォン!!! 山が崩れるかのような凄まじい地響きと共に、3メートルのグリモの巨体が、フロアの床に真っ向から無様に這いつくばった。
カイトはそのグリモの巨大な背中の上に、風の推進力でひらりと飛び乗り、馬乗りになる形へと持ち込んだのだ。
「疾風拳――!!!」
カイトは自身の右拳に、フロア中のすべての風を、極限までギュウギュウに圧縮していった。その拳の周りでは、空気が激しく摩擦し、
キィィィンと耳を突き刺すような高音の爆鳴が響き渡っている。「人間の弱点はな…心臓だけじゃない…
首の真ん中に衝撃を放つことなんだよォ!!!」
カイトの咆哮と共に、限界まで練り上げられた風の鉄拳が、グリモの無防備なうなじ――首の真ん中へと、音速を遥かに超えた速度で容赦なく振り下ろされた。
グリモを倒すために、これまでのすべての力を込めて放つ、カイトの渾身のカウンター。
「ぐは――ッ!?」
グリモはカエルの潰れたような情けない悲鳴を上げ、その凄まじい風の衝撃によって、今度こそ完全に床にめり込むグリモ
次は明後日の18時ごろに投稿します!
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