第61話 第3の秘策
その頃スバルは……。
ガルドラと互角の戦いを繰り広げていた
天井の吹き飛んだ大ホール。贅を尽くした調度品が粉々に砕け散り、瓦礫と化した戦場の中心で、スバルとガルドラの拳と拳が凄まじい衝撃波を伴って激しく激突し続けていた。
ドゴォッ! バキィッ! ズドンッ!!! まさに一歩も譲らぬデッドヒート。
スバルのフィジカルの極致による一撃がガルドラの白い肉体を削れば、ガルドラの変幻自在な白粘質の猛攻がスバルの肉体にじわじわと傷を刻んでいく。
しかし、時間の経過と共に、その均衡は静かに、しかし決定的に崩れようとしていた。
「はははは! どうした小僧! 先ほどまでの勢いはどこへ行った!」
ガルドラの嘲笑が大ホールに響き渡る。
「確かに、お前の力は凄まじい……。だが、さっきから貴様の攻撃が当たらなくなってきたんじゃないのか?」
嘲笑するように言うガルドラ。
その言葉は、冷酷な現実を正確に射抜いていた。
そう、右腕に温泉の熱湯を塗りたくり、左腕にサウナであっつあつに熱くすることで、ガルドラに攻撃を当て、防御をできていたのだが……。
それはあくまで、一時的なブーストに過ぎなかったのだ。
時間が経てば、当然ながら右腕の熱湯は乾き、蒸発してしまう。それと同時に、左腕に蓄積させていたサウナの熱も、冷めていってしまう。
スバルは内心で気付きながらも、ガルドラの放つ白き拳を辛うじて腕で受け止めた。
しかし、お湯の成分を失ったことで、ガルドラの白粘質を溶解させることができなくなっている。
触れた瞬間にガルドラの肉体がドロっとに軟化し、
スバルの拳の衝撃を強引に跳ね返してしまうのだ。
この戦いは、どれだけ時間をかけずにガルドラを倒すかが勝利条件だったのだ。
しかし、スバルはガルドラを倒すのに時間をかけすぎていた。
形勢は一転した。 どんどんガルドラに攻撃が当たらなくなっていったのだ。
そればかりか、ガルドラの変幻自在な白き腕の猛攻を、スバルは避けることすらできなくなっていく。
ドガァッ!!!
「が、は……ッ!?」 ガルドラの巨大化した白い拳が、スバルの腹部を容赦なく打ち抜いた。
お湯による溶解も、熱による乾燥破砕も効かなくなった今、ガルドラの能力は再び「絶対無敵のチート能力」へと戻っていたのだ。
流動化と硬化を瞬時に切り替えるガルドラの前に、反撃ができなくなっていた
「さあさあ!さっきの威勢はどうした!手も足も出せていないぞ!」
「ゴホッ! グホッ……!」
スバルは激しく血を吐きながら、床の上に膝をついた。体中に浴びせられた打撃のせいで、視界が真っ赤に染まっていく。 そんな満身創痍のスバルの頭上から、
ガルドラの冷酷な白粘質のガルドラの腕によって殴られ続けるスバル。 ドスッ! ボゴッ! ガッ!!!
容赦のない無慈悲な追撃が、スバルの肉体を激しく痛めつける。
祭壇の上で、ドレスの裾をボロボロになるまで握り締め、エリスは涙を流して絶叫した。
「スバル! もうやめて……! スバル――っ!!」
エリスの悲痛な叫びをよそに、ガルドラは満足げに、
「さてそろそろ終わりにするか……」
と、冷たく言い放った。 ガルドラがトドメの一撃を喰らわせようとした次の瞬間――。
――ニヤッ…
ガルドラの目の前で、血まみれになって倒れ伏していたはずのスバルが、不敵に、そして楽しげに笑みを浮かべたのだ。
「……あ?」
それに気づいたガルドラが、不快そうに眉をひそめる。
「何がおかしい? 今まさに命を奪われようとしている敗北者の分際で、なぜ笑う?」
ガルドラにはそれが全く理解できず、急激な苛立ちを覚えた。
「終わりなのはオマエの方だよ……」
スバルは口元の血を親指で乱暴に拭うと、ゆっくりと、しかし確実な足取りで再び立ち上がった。その瞳からは、闘志の炎が消えるどころか、より一層激しく燃え上がっている。
「もう秘策がねえと思ったら、大間違いだぞ、ガルドラ……」
スバルは一歩、前に踏み出し、ガルドラの巨大な白き腕を真っ直ぐに指差した。
「――俺には、まだ秘策がある……!」
その言葉がホールに響いた瞬間、ガルドラの心臓がドクンと不気味な高鳴りをあげた。
お湯も乾き、熱も冷め、すべてのカードを使い果たしたはずのスバル。
しかし、圧倒的な覇気と確信に満ちた笑みを前にして、ガルドラは本能的な恐怖を覚えざるを得なかった。
引き裂かれた階下での仲間たちの死闘、そして地地上での限界を超えたタイマン勝負。
すべてが窮地に追い込まれたこの絶望的な戦場で、
リーダー・スバルによる、ガルドラの能力を完全に粉砕するための『最後の、本物の秘策』が、今まさに解き放たれようとしていた――。
次は五日後の25日18時ごろに投稿します!
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