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第59話 仲間への想い

その頃リンクは…


煙がもうもうと立ち込める荒れ果てたフロアの中心で、激しい金属の擦れ合う音と、肉体が叩きつけられる鈍い音が響き渡っていた。 


そこに広がっていたのは、先ほどまでのフロアとは

一変した、凄惨な光景だった。 


ついさっきまで、地上のきらびやかな結婚式会場でマイクを握り、天真爛漫な笑顔を振りまいていたはずの司会者、ミア・バラン。


しかし、今ここにいる彼女の姿からは、あの明るくハキハキとした少女の面影など、微塵も感じられなかった。 


彼女の瞳に宿っているのは、底知れない冷徹さと、標的の命を刈り取るためだけに研ぎ澄まされた、本物の暗殺者のそれだった。 


そんな暗殺者としての本性を剥き出しにしたミアと、真っ向から相対することになってしまったリンク。しかし、その戦況は、これまでの仲間たちの戦いとは大きく異なり、過酷を極めていた。


「ぐっ……、あ、ガハッ……!」 


リンクの口から、短い苦悶のうめき声が漏れる。 

彼の身体は床の上に無様にも倒れ込み、激しく転がっていた。


衣服は至る所が引き裂かれ、その隙間から覗く肌には、無数の鋭い切り傷や打撲の痕が刻まれていた。


傷だらけになり、全身からダラダラと鮮血を流しながら、リンクは床に這いつくばったまま、激しく荒い呼吸を繰り返すことしかできない。


守備の要であるはずの彼が、ここまで一方的に蹂躙され、無惨な姿へと追い込まれてしまうほど、ミアの戦闘力と冷酷さは規格外だったのだ。 


そんな地を這うリンクの姿を、ミアは冷たい一瞥と共に、心底つまらなそうに見下ろした。 


その口元には、弱者を嘲笑うための下劣な歪みが浮かんでいる。


「ふん……口ほどにもない。本当に、本当に口ほどにもないわね……」 


ミアはわざとらしく大きなため息を吐くと、トントンと自らの顎を指先で叩きながら、嘲笑するように地面に倒れたリンクを見下ろすように言う。


「そんな実力で、そんな無様な姿で、あなた、

名高き『シルバー星1』の一員なの? ちょっとは楽しませてくれるかと思ったけれど、本当に拍子抜けだわ。もし私がリーダーなら、すぐにあんたみたいな足手まといの弱虫は切り捨てるわね。戦場に連れてくる価値すら見出せないわ」 


ミアの放つ言葉は、鋭い刃物のようにリンクの心へと突き刺さっていく。しかし、彼女の口から吐き出される下劣な毒舌は、それだけに留まらなかった。 


ミアはふふっと鼻で笑うと、さらに声を大きくして笑いながら、スバル達の悪口を言い始める。


「それにしても、あんたみたいな無能で足を引っ張るだけのゴミをわざわざ仲間にして、一員として迎え入れるなんて……。あなたのリーダーもメンバーもみーんな馬鹿ね! よっぽど見る目がないか、あるいは全員がそれ以下の間抜けの集まりなのかしら?」 


床に這いつくばるリンクの耳に、大好きな仲間たちを侮辱する言葉が容赦なく降り注ぐ。ミアはくすくすと肩を揺らしながら、さらに言葉を続けた。


「あの見るからに頭の悪そうな、バカそうな少年があなたたちのリーダーなんでしょう? 


スバルとか言ったかしら。あいつも大したことないわ。前に一度、ガルドラ様が殺し損なったのは、ただ単に運が良かったみたいだけれど……。でも、それもここまでよ。


今頃、上の階で今度こそガルドラ様に完膚なきまでに殺されてるでしょうね。運の尽きってやつよ。ああ、もちろん、あんたの他のメンバーもね……。今頃は我がパレット・カンパニーの精鋭たちに、泣き叫びながら肉を削がれて死んでるんじゃないかしら?」 


ミアのその言葉が、静寂なフロアに響き渡った、まさにその瞬間だった。 床に血を流し、虫の息だったはずのリンクの身体が、ピクリと不気味に震えた。 彼の長い前髪に隠された眉が、怒りによってピクッと大きく動く。 


「おい……」 


地を這うような、しかし低く、底知れない質量を持った声が、リンクの口から漏れ出した


「おい……今、なんつった……」 


その声の変貌ぶりに、ミアは一瞬だけ言葉を詰まらせたが、すぐに持ち前の傲慢さを取り戻し、フンと鼻で笑い飛ばした


「あら、耳まで悪いの? 聞こえなかったのかしら。あんたの仲間も、全員一人残らず負けて無惨に死ぬって言ってんのよ! あんなバカなリーダーを信じた報い――」


「黙れ……」 


リンクの身体から、ドクン、と不気味な脈動が湧き上がった。 全身の激痛に耐え、フラッとなり、視界が歪み、立ち上がるのもやっとなリンク。


膝がガタガタと震え、いつ再び倒れ込んでもおかしくないほどの満身創痍。それでも、彼は己の肉体を強引に支配し、一歩、また一歩と、執念だけで地面を踏みしめて立ち上がっていく。


「俺のことを……俺のことを馬鹿にしてもいい……。弱虫だと笑おうが、無能だと罵ろうが、何言ってもいいさ。お前が今言ったことは、全部正しいよ……。俺は、お前の言う通り、足手まといの弱虫だ……」 


リンクは溢れ出る血を拭いもせず、真っ直ぐに、燃え盛るような眼光でミアを睨みつけた


「だけど……! 俺の仲間の悪口だけは、絶対に許さない……!!」 


フロア全体の空気が、リンクの怒りのオーラによってピリピリと震え出す


「あいつらは……スバルやカイトやジンは……! 俺みたいな、いざとなったらすぐに逃げ出すような、どうしようもない弱虫を……、自分の意思で、笑いながら『仲間になろうぜ』って誘ってくれたんだ! 


誰もが見捨てるような、俺みたいなやつを、あいつらは信じてくれたんだよ!だから絶対! 命に代えても、俺の仲間の悪口を言うことだけは、許さん!!」 


リンクの咆哮が、地下のフロアを大きく震わせた。その圧倒的な気迫と漢の覚悟に、傲慢を演じていた暗殺者ミアの顔から、余裕の笑みが消え失せた。 


ミアは忌々しげに顔をしかめると、自らの腰元から武器を構え、リンクへと冷酷な視線を向け直した。


「あっそ……。お涙頂戴の友情ごっこね。だったら、その言葉通り、私を力ずくで倒してその悪口を訂正させなさいよ。――勝てるもんならね!」 


仲間を侮辱された怒りに満ちたリンクと、冷徹なる暗殺者ミア。 


互いの信念と殺意が激突する、本当の限界突破バトルが、今ここに幕を開けようとしていた――

次は明後日の18時ごろに投稿します!

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