第58話 戦いの応酬
その頃ジンは…
目の前の闇からカツン、カツンと静かな足音が響いてきた。
「流石はシルバー星1の一員と言ったところかしら…
私とやり合えるなんて、あなたも強いのね
だけど、ガルドラ様のお手を煩わせるまでもなく、ここで私が排除いたします」
暗闇から現れたのは、先ほどまで結婚式の裏方に控えていた、完璧なメイド服を纏った女性だった。しかし、その瞳には感情が一切通っておらず、まるで精巧に作られた殺人人形のような冷徹さが宿っている
「ガルドラ直属の幹部がに直々にお出迎えされるとは、光栄と言うべきかな」
ジンは低く身を構えながら、刀を構える
「おしゃべりはそこまでです」
メイドが短く冷酷な声を放った、まさにその刹那だった。 彼女の姿が、その場から完全に消え失せた。
「――速い……ッ!」
ジンは咄嗟に横へとステップを踏み、同時に刀でメイドの剣の攻撃を受け流す
直後、キィィィンという鼓膜を引き裂くような金属音が響き渡る。
メイドの身体能力と剣技が組み合わさることで、フロア全体が瞬時に死の迷宮へと変貌していく。
「ハァァァッ!!」
メイドの剣を押し切り、その勢いを利用してメイドとの間合いを強引に引き離した。バックステップを踏みながら、刀を突く構えで突進するジン
しかし、メイドは空中を優雅に舞うようにしてそれらの棘を軽々と回避し、さらに加速しながらジンへと肉薄してくる。
キンッ!
メイドの剣が、ジンの退路を完全に塞ぐようにして襲いかかる
「クソッ!」
ジンは瞬時に力を限界まで練り上げ、自分の周囲に
電気を流し、メイドの剣を受け流す
ジンの知略と剣技、能力は完璧であり、メイドの放つすべての必殺の斬撃をミリ単位で見切り、的確に防ぎ、あるいは相殺していた。
術式の応酬という意味では、まさに互角の戦い。 ジンの放つ雷撃がメイドのメイド服の裾などに傷を刻んでいく。
どちらが一歩間違えても即座に首が飛ぶ、息詰まるようなデッドヒートが繰り広げられていた。
――しかし。 戦況は、確実に、そしてじわじわとジンが押される形へと傾き始めていた。
目の前のメイドは純粋な近接暗殺のスペシャリスト。一対一の狭い閉鎖空間でのインファイトが長引けば長引くほど、肉体的なスタミナと、一瞬の反射速度の差が顕著に現れ始めてしまう。
「はぁ、はぁ……っ」
ジンの呼吸が次第に荒くなっていく。額からは、じっとりとした冷や汗が流れ落ちていた。
メイドの操るワイヤーの数は、時間が経つにつれてフロア中に張り巡らされ、ジンの自由な足場を確実に奪っていった。
今や、ジンが剣を振るためのわずかな予備動作すら、先読みされ、潰されそうになっている。
(まずいな……。すべての攻撃に的確に対処してはいるが、こちらの体力の消費速度の方が早い。このまま防戦一方になれば、あと数分で維持できなくなる……!)
ジンは冷静に脳内で自身の体力残量を計算し、冷徹な事実を突きつけられていた。
技の精度では互角に渡り合えている。しかし、この一対一の殺し合いの盤面においては、肉体的なアドバンテージを持つメイドの猛攻に、確実に押し込まれていた。
メイドの瞳に、冷酷な勝利の確信が灯る。 彼女はさらに速度を上げ、ジンの目の前まで迫っていた
「やばっ…」
ジンの首を狙って、冷たい鋼の刃が迫りくる。
絶体絶命の危機。互角の戦いを繰り広げながらも、限界まで押し込まれたジン。
しかし、彼の瞳からは、まだ勝利を諦める絶望の色は一切消え失せてはいなかった――。
次は明後日の18時ごろに投稿します!
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