第51話 ここからは俺の土俵
「――これが、お前の弱点なんだよ、ガルドラ!」
大ホールに響き渡るスバルの咆哮。その右拳に宿る圧倒的な熱気と風圧を前に、ガルドラの心臓はドクンと嫌な高鳴りをあげていた
今まで自分の絶対的なアドバンテージだと思い込んでいた『白粘質の肉体』の全てを完璧に暴かれたのだ
これまでのことを誇らしげに喋り終えたスバルを前に、ガルドラは少し冷や汗をかくのを感じていた。背中を不快な汗が伝い落ちていく
「ふん!確かにそうかもしれないが、今お前には熱を持っていない!貴様のしょうもない誇りでそこの小僧の風の能力を使わんとは…これほど殺りやすいほかないな」
ガルドラがそう言うと、ニッと笑うスバル。
「……確かに、俺のせいでお前を倒せる戦いを、危ない戦いにしているかも知んねえな……だけどお前に勝てる!」
スバルは自信に満ちた表情で言い放った。その瞳には、一抹の不安も、油断もない。ただただ、己の肉体と、これまでの特訓で培った力への絶対的な信頼だけが宿っていた
そんなスバルの態度を見たガルドラは、急激に沸き起こるイラつきを隠せなかった
「……そうか、じゃあ、やってみろ!」
ガルドラが怒号を上げると同時に、再びその巨体が動いた。またもや両腕を不気味な白粘質状にして、それをスバルへと襲いかからせる
ドロドロとした凶悪な質量が、スバルの視界を埋め尽くしていく
だが、スバルは避けるどころか、真っ直ぐにその攻撃へと突き進んだ
そしてスバルは異形となった右腕を弾き、ガルドラの右腕を液体状にする
しかし、右腕を無力化されても臆せず、もう一方の白粘着状にした左腕を、ゴムのように引き伸ばしてスバルにぶつけようとするガルドラ
しかし、スバルは驚異的な速度で走りながら、華麗にその攻撃を避けた
「なっ……!?」
ガルドラの体のすぐそこまで、スバルが近づいていただが、ガルドラはそれでもなお、スバルが近づいてきていることを心配するそぶりすら見せなかった
自分の身体能力、そして近接格闘戦でのアドバンテージ、そしていかなる攻撃を無力化させる自身の能力
ネズミ一匹に劣るはずがないという絶対的な慢心があった
そしてスバルは、ガルドラの目の前まで来ると、左手を強く、固く、グーの形に握り締め、ガルドラを殴ろうとしていた
ーガルドラの心の中ー
バカが……! さっきの弱点を聞いた時は少し焦ったが……貴様には俺に攻撃を与える手段を何も持ち合わせていない! 貴様が俺の体に触れた瞬間、捕まえてまた何もできないままに殺してやる!
ガルドラの心の中で、傲慢な嘲笑が響く
スバルが素手で自分を殴りに来ることこそ、ガルドラにとっては好都合だった
触れた瞬間、その拳を白粘質で包み込み、今度こそ骨の髄までしゃぶってやればいい
ガルドラは不敵な笑みを浮かべ、スバルの左腕を迎え撃とうと、自らの肉体をさらに硬化させて待ち構えた
だが。 その瞬間、スバルのニヤリと笑う顔が、ガルドラの視界に飛び込んできた
「たりゃあぁぁぁーーー!!!」
スバルの魂の叫びと共に、その左拳がガルドラの顔面に向かって真っ直ぐに突き進んでいた
その瞬間、ガルドラの顔面に、これまでに経験したことのないような、すさまじい衝撃が突き抜けた。
ボゴッ!!!
鈍く、そして重い破壊音が、きらびやかな結婚式会場に鳴り響いた。 そして、そこにあったのは、ガルドラにとっては決してありえない、天地がひっくり返るほどの驚愕の光景だった。
「――よし!」
スバルの短い声
「がハッ……! なっ、何、だ……!?」
鼻から鮮血を吹き出しながら、ガルドラが信じられないといった声を漏らす
そこにあったのは、攻撃が通るはずのないガルドラの顔面に、スバルの左手の拳が、これ以上ないほど深くめり込んでいる光景だった
ガルドラの絶対防御であるはずの白粘質が、スバルの左拳が触れた箇所から、まるでただの固体となり、カチカチに固まっていて、ボロボロと崩れ落ちている
「ガルドラ…こっからは俺の土俵だ!」
次は明日の18時ごろに投稿します!
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