第48話 秘策
「なっ……なぜだ! ありえない……こんなことがあってたまるか!」
ガルドは、まるで世界の理がひっくり返ったかのような、凄まじい驚愕に顔を戦慄かせていた
今までガルドの人生で出会ってきた者の中で、自分の中に宿る異形の能力を破られた事などただの一度もなかった
それどころか、まともに正面から受け止められたことすら皆無だったのだ
「お前の攻撃なんて、痛くも痒くもねえんだよ!」
スバルが声を上げて不敵に笑う
ガルドはさらに狂乱し、右腕だけではなく、今度は両腕すべてを白い粘着質に変形させ、巨大な両手を力任せにスバルへと向かって叩きつけた
ドゴォォォン!!!
しかし、スバルは全て右腕一本で難なく弾き返す
そのたびにとてつもない硬さの音が響き渡り、衝撃波が会場を震わせる
しかし、スバルの右腕に当たった途端、ガルドの白粘質の両腕が液体に変わっていき、その硬さを失う
「そんなバカな! お、俺の能力が……貴様、どんな手を使って……!」
ガルドが激しく動揺し、叫ぶ。その姿を見下ろしながら、スバルはニヤリと鼻で笑った
「そんなに知りてえのか?じゃあ、教えてやんよ
俺たちの『秘策』をな!」
――そう、これは偶然の出来事ではない
彼らはすでに、この男を打ち破るための鍵を握っていたのだ
*
彼らが地下牢に落とされる前、昨日まで遡る
病院の一室。スバルはガルドに手痛い敗北を喫したことで、この病院で検査と治療を受けていた
その病室に、カイト、ジン、リンクが集まり、4人でガルドを打倒するための作戦会議をしていたのだ
「大体、作戦はこんな感じだ」
ジンが作戦を話し合え、その会議が終わる頃。
「……よし、次はスーツを買いに行かなきゃな!」
リンクが暢気に口を開く
「じゃあ、服屋に行くか」
カイトも賛成するように言う
皆が立ち上がり、スバルの病室から出ようとした、その時――
「待ってくれ!」
スバルがみんなを呼び止める。その顔は、いつになく真剣だった
「おい、早くしないと日が暮れちまうぞ」
呆れたように言うカイト
しかし、それに構わず口を開くスバル
「……俺さ、悔しいけど、あいつに全く歯が立たなかった。……またあいつに挑んでも、同じ結果になると思うんだ。だから、あいつに勝つ秘策を考えておきてえんだよ」
スバルは深く考え込むようにして、顎に手を当てた。
「でもな……俺らはあいつに会ったわけじゃあねえし、見当もつかねえよ」
カイトがそう言うと、少し悔しそうな顔をして俯くスバル
「じゃあ、俺は勝てねえのか……?」
下を向いてポツリと呟くスバルに、声をかけるジン。
「スバル、お前がガルドと戦った時に、何か掴まなかったのか?」
ジンの言葉を聞いたスバルが、必死に記憶の糸を手繰り寄せようと、ううっと唸る
「……あっ! 思い出した!」
何かを思い出したように声を上げるスバル
「なんだ、なんか弱点があったのか!?」
リンクが不思議そうに、そして期待に目を輝かせて聞く
「いや、大した事じゃないんだけどさ……。あいつ、白いネチョネチョしたものを出すんだけど、あいつのネチョネチョ、なんか酸っぱい匂いがしたんだよな。なんか、お酢みてえな……」
お酢?なんだそれ。そんな、酸っぱい匂いって言ったって、それが手がかりになるのか?」
カイトとリンクが、少し呆れたようにスバルを見る。
バトルの弱点を探しているというのに、匂いの話など拍子抜けもいいところだ
しかし、それを聞いたジンは、深く考え込むように顎に手を当てた
「酸っぱい……お酢みたいな匂い……。白い、粘着質……。もしかしたら……」
ジンが小さく、しかし確信に満ちた声を上げる
「どうした?なんか分かったのか、ジン!」
スバルが身を乗り出す
「……あいつ、もしかしたらガルドの能力は、ボンドなんじゃねえか?」
「は? ボンド?」
カイトが不思議そうにオウム返しをする
「ほら、ボンドって酸っぱい匂いがするだろ? それに白いネチョネチョって言うのも一致するし……」
「確かにボンドっぽかったな……」
それを聞いて納得するスバル
「真近で見たスバルが言うなら、合っているんだろうな」
リンクも納得するように言う
「でも、ボンドってわかったからって、ガルドラに弱点なんかあんのか?」
カイトが不思議そうに言う
それを聞いたジンが、不敵にニヤッと笑った
「それに関しては、俺に考えがある――」
次は明日の18時ごろに投稿します!
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