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第47話 結婚式破り


「――待たせたな、エリス」 


土煙を割り、悠然と姿を現したスバルが、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて口を開いた


その瞬間、祭壇の上で絶望に濡れていたエリスの瞳に、瞬時に鮮烈な光が戻る。


みるみるうちに大粒の涙が溢れ出し、彼女の白い頬を伝い落ちた


「ス、スバル……!?」 


歓喜と信じられないという想いが混ざり合った、震える声を出す


一方で、会場を埋め尽くしていた富豪や貴族たちは、一転してパニックに陥っていた


凶悪な乱入者たちの姿を見て、顔を青ざめさせ、我先にと逃げ惑う


「な、なんで!? なんでまた奴らがいるんだ!」


「ガルドラ殿! 奴らは逃げたのではなかったのですか!?」


「いやぁぁぁ! 助けて! ガードマン、早くこいつらを殺しなさい!」 


阿鼻叫喚の地獄絵図と化した会場の中心で、新郎であるガルドは、額に青筋を浮かべて激しい怒りに顔を歪めていた


「チッ……! 地下牢のネズミどもが、どうやってここまで這い上がってきた……!」 


ガルドラが吠える。その鋭い眼光がスバルを射抜くが、スバルは意に介した様子もなく、肩をすくめてみせた


「逃げなかったのよ!また殺されるわよ!あんたバカなの!?」 


エリスが涙をこぼしながらも、必死に強がるようにスバルに向かって大声を上げる。彼女はスバルの身を案じるあまり、感情を爆発させていた


だが、その必死な訴えに、スバルはさらに笑みを深める


「うるせえ! 本心じゃねえくせによ、ほんとのこと言えよ!」 


スバルの怒号が結婚式会場に響き渡る


その真っ直ぐな言葉は、エリスの頑なな心を粉砕するのに十分だった


戸惑う神父に視線を向け、口を開くエリス。彼女はもう、自分の気持ちを偽ることをやめた


「……ごめんなさい、神父さん。……私は、


『……健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、これを愛し、これを敬い、その命ある限り、真心を尽くすことを……尽くすことを誓いません!』


 こんな人と添い遂げたくありません!」 


涙をこぼしながら、はっきりと拒絶を口にしたエリスは、そのままスバルに視線を向けた


その瞳には、全面的な信頼が宿っている


「だから……スバル! 助けて! 私をこいつから助けて!」  


エリスの涙の叫び。それを聞いたスバル達は、示し合わせたようにニカッと同時に笑った


彼らがここに来た理由は、ただそれだけのために他ならないからだ


「はは、それを聞きたかったぜ!」 


カイトが嬉しそうに言う


「じゃあ!そんなこと言われたら!助けるしかねえな!」


スバルが拳を打ち鳴らす。 だが、二人のやり取りを目の当たりにしたガルドの顔は、これ以上ないほど怒りによって醜く歪んでいた


「貴様ら……! 俺の晴れ舞台を邪魔するとは、いい度胸してやがる……。もう一回叩き潰さねえと解らないみたいだな……!いいだろう!望み通り、今度こそ粉々に殺してやる! 


「今回は前みたいにはいかねえぞ!覚悟しろ、スバル・ラグナ!」 


言い返すようにスバルが声を上げる


ガルドラの全身から、どす黒く、禍々しいオーラが立ち上る


その瞬間、会場の空気が物理的な重さを伴って一変した。富豪たちの悲鳴すら、その圧倒的なプレッシャーによって掻き消される


「ふっ……何をもって、貴様に何ができると言うんだ! 喰らえ!」 


ガルドが咆哮すると同時に、彼の肉体に異変が起きた


ガルドラの右腕が、ベキベキと不気味な音を立てながら、ドロドロとした不快な白い塊へと変貌していく。それはまるで、意思を持った生きた液体のようであり、同時に悍ましい質量を持った凶器だった


その右腕の拳を、スバルに叩きつけようとするガルドラ


異形と化したガルドの右腕が、空気を切り裂く轟音と共に、凄まじい速度でスバルへと振り下ろされた


「スバル! 避けて!」 


それを見たエリスが、悲痛な声を上げる。 しかし、スバルは避けるどころか、一歩も動こうとはしなかった。素振りをすら見せないその姿に、ガルドの顔に勝ち誇った笑みが浮かべ、勝ちを確信するガルドラ


 ズドンッ!!! 


ガルドラの異形の腕が、激しい衝撃と共に地面に叩きつけられた。凄まじい衝撃波が走る


土煙が晴れてくる。すると、叩きつけられていると思われていたスバルの姿が――


そこには、至近距離でガルドラの攻撃を、片手で涼しげに受け止めているスバルの姿があった


「な……ッ!?」 


ガルドラは驚愕した。 スバルの体は、傷一つ付いていない


そればかりか、ガルドラの異形の右腕からは、ポタポタと十分な硬さのあった塊が氷から水に変わるように液体状になっていた


会場の騒音をすべて置き去りにするような、圧倒的な戦いの幕が、今ここに切って落とされた

次は明日の18時ごろに投稿します!

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