第44話 戦闘準備
「そうか、ハリー! お前はこれからどうするんだ?」
鉄格子から解放され、まだ呆然と立ち尽くしているハリーに向かって、スバルは不敵な笑みを浮かべながら問いかけた
「……せっかくお前らが出してくれたんだからな。行かなきゃならない場所に行くよ」
「そうか、また会おうな」
ジンがそう言うとハリーは少し照れくさそうに鼻を擦る
彼はスバル、カイト、ジンの一人ひとりと力強く握手を交わしていく。
「じゃあな。気をつけて行けよ」
「ああ、そっちもな!」
互いの無事を祈るように背中を叩き合い、ハリーは地下牢の暗闇の向こうへと走っていった。それを見送ったスバルは、すぐに踵を返して出口へと視線を向ける「じゃあ、俺たちはガルドラのところへ行くか」
スバルが静かに、だが確かな闘志を宿した声で言った。その時、カイトが何かに気づいたように足を止め、小首をかしげた
「ん? どうしたカイト?」
「……いや、なんか忘れてる気が……」
カイトがそう呟いた瞬間だった。彼らの背後、さらに深い地下へと続く檻の奥から、情けない叫び声が響き渡った
「…お前ら、俺を忘れてるだろ……!!」
その声に驚き、スバルたちは一斉に振り返る。そこには、すっかり存在を忘れ去られていたリンクが、鉄格子にへばりついて涙目でこちらを見ていた。
「リンク! そこにいたのか!」
スバルが声を上げると同時に、ジンが素早くリンクの檻へと駆け寄り、看守から奪った鍵を使って手際よく錠前を開ける
ガチャン、と重い音がして扉が開くと、リンクはほうっと深い溜息を漏らしながら這い出てきた
「ああ……落ちた時、首から落ちたから……マジで死ぬかと思ったわ……」
げっそりとした顔で首をさすりながら愚痴をこぼすリンク
「まぁ、何はともあれ無事ならいい。これから戦闘だけど、いけるか?」
カイトがリンクの肩を叩きながら尋ねると、リンクは一瞬だけ表情を強張らせる
「無理に決まってんだろ!」
リンクの言葉に、ジンがハッとしたように表情を変える
「治療……? あいつなら治せるんだろ!」
ジンが何かを提案するように声を弾ませる
「確かに、ジンの内臓すら治せたあいつの能力なら治せそうだな……!」
カイトも深く頷く。
負った致命的な内臓の傷を完全に癒やしたエリスの
『ヒーリング』
それがあれば、ボロボロの彼らの身体を全快させ、万全の状態で決戦に挑むことができる
「よし! そうと決まれば早くエリスのところに行くぞ!」
スバルの号令が響く。四人の男たちの視線が、上層へと続く階段へと向けられた
エリスを救い出すため、そしてすべての因縁に決着をつけるため、彼らは一歩を踏み出した。 *
その頃――地上にある、きらびやかなパーティー会場。 地下の淀んだ空気とは対照的に、そこは光と贅沢に満ち溢れていた
突然、会場の照明がふっと落とされる。広大な大ホールが深い闇に包まれた、その刹那――。
パッ!
とまばゆい一筋のスポットライトが、ステージの中央を照らし出した。
激しい拍手と歓声が湧き起こる中、光の中心に一人の男が姿を現す
その男の名は、ガルドラ
ガルドラは集まった富豪たちを見渡し、これ以上ないほどに満足げな、そして酷く冷酷な笑みを浮かべて両手を広げた
「本日はお忙しい中、私たちの結婚式にお集まりいただき、誠にありがとうございます――」
マイクを通したガルドの声が、大ホールに響き渡る。 拍手はさらに大きくなり、富豪たちは冷酷な勝者を称えるようにグラスを掲げた
だが、その華やかな壇上の裏、会場の重厚な扉の向こう側には――。 怒りと闘志を燃え上がらせたスバルたちが、すでに牙を剥いて待ち構えているのだった。
次は明日の18時ごろに投稿します!
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