第40話 檻の中
視界を遮るのは、太く鈍い光を放つ鉄格子
スバルは完全に、頑丈な檻の中に閉じ込められていた
「おい! 隣にいるのはスバルか!?」
「えっ? カイトか!?」
静寂を切り裂いたのは、聞き馴染みのある男の声だった。スバルは鉄格子に駆け寄り、隣の檻へと視線を向ける
「カイト! いたんだな!お前、無事か!?」
「ああ、なんもねえが…クソ!こんな檻で足止めなんてな!」
カイトが悔しそうに鉄格子を殴りつける音が響く。 その直後、さらに別の方向から低く落ち着いた、だが確実に焦りを含んだ声が重なった
「……俺もいるぜ」
「ジン! お前もいたのか!」
カイトが驚きの声を上げる。ジンはふっと短く息を吐き、周囲の状況を冷静に分析するように言葉を繋いだ
「ああ。どうやら、みんな同じところに集められたみたいだな。じゃあ、リンクもどこかにいるはずだ」
その言葉に、スバルが声を張り上げる
「おーい、リンクー! 返事しろ!」
しかし、返ってくるのは虚しい残響だけだった。スバルの大声に対抗するような、リンクの高い声は聞こえてこない
「……? リンクはここにいないのか?」
カイトが不思議そうに首を傾げる。
ジンは顎に手を当て、暗闇の奥を見つめながら呟いた
「まあしゃあねえか、リンクは後で探そう」
しかし、ジンの推測は外れていた
なぜならその時、リンクは彼らのすぐ隣にちゃんといるのだ
リンクは…
「はっはひ… 」
スバル達に気づくどころが、檻に気づけず、それどころではなく、生死を彷徨っていたのだった
一方その頃、スバルたちが落とし穴にハマり、檻に入れられてしまった時と同時刻…
華やかなパーティー会場では
「助けてくれーーっ!」
「無法者だ!」
「逃げろーーっ!!」
悲鳴が天井に反響する
スバルたちの正体が敵側に露見した。その事実が引き金となり、きらびやかな衣装に身を包んだ富豪たちは、我先にと出口へ殺到する
「おい、早くどけ! どけ!」
「早くしないと殺されるぞ!」
「お願い、私を先に行かせて!」
ビルの入り口には早くビルから出ようとした富豪達でいっぱいだった
踏みつけ合い、押し合いながら、醜い怒号が飛び交う
その混沌の極みの中、スピーカーがけたたましいハウリングを起こし、館内放送が鳴り響いた
『――パーティーに参加している招待客の皆様、どうぞご安心ください、無法者は逃げていき、脅威は去りました。安心してパーティー会場にお戻りください』
低く、どこか芝居がかったその声に、逃げ惑う富豪たちの足がピタリと止まる
「……この声は、ガルドラ殿……?」
「ガルドラ殿が言うなら間違いない!」
「よ、よかった……!」
富豪たちの顔に、安堵の表情が戻っていく
彼らは手のひらを返したように衣服を整え、何事もなかったかのように、再びパーティー会場へと足を進め始めた
その声の主が、自分たちをあざ笑う支配者であるとも知らずに
一その頃スバル達は一
「ガン!」
「クッソ! この檻、かたってえな!」
スバルが渾身の力で鉄格子を殴りつける
激しい金属音が響くが、檻は歪みすらしない
スバル達は檻から脱出しようと頑なに抗っていたが、すぐに悟った。やはり、これを力任せに壊すのは不可能に近い
「あぁ、全然ダメだ。出ようと思ったら、この落ちてきた時の穴を登るか……それとも、この檻自体をどうにかして壊すか。どっちにしても、まともな策とは言えねえな」 ジンの言葉に、カイトがふむ、と短く唸る
「……うーん、どうすればいいかな……」
理知的なジンでさえ、決定的な打開策を見出せずにいた
全員が思考を巡らせ、沈黙が支配しかけたその時。 ――ジジッ、と、スバルたちの檻の正面に設置されていたモニターが、突如として怪しい光を放ち始めた。
「……っ!? なんだ、これ!」
異変に気づき、全員が後ろを振り返ってモニターを凝視する
冷たい電子音が鳴り、ノイズの混ざった映像が映し出された。 そこに映っていたのは、狂気の笑みを浮かべた男の顔
「久しぶりだな、スバル・ラグナ、そして初めましてその取り巻きのネズミ達…」
不敵な笑みを浮かべて画面の向こうに佇んでいたのは、この惨劇の支配者――ガルドラだった。
次は明日の18時15分ごろに投稿します!
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