第38話 まさかのバレ方
大食いという前代未聞の暴走をやらかしたスバルは、カイトとリンクによって、廊下の隅の誰も見当たらない暗がりにまで引きずられていた
「おい、スバル……!」
「は、はい……」
普段の冷静さはどこへやら、スバルは完全に小さくなってお座り状態である
そんな彼を見下ろし、カイトの容赦ない説教が始まった
「お前、潜入して早々にバレてえのか! すみません!じゃねえんだよ、真面目にやれ!」
ジンも言う
「俺もさっき戦犯かましそうになったけど、お前のほうがもっとやべーぞ! 」
ジンも口を開く
「大体聞いてたことねえぞ、パーティーで要人を守るのが仕事のボディガードが、要人よりも飯を優先するなんて! それに十人分も!」
三人がかりの猛烈な怒涛の説教、スバルは頭を垂れるしかない
「はいっ……反省してます……」
「ぐぅぅー……」
その瞬間、暗がりに響き渡ったのは、情けないほど大きな腹の音が鳴る
「お前……ちっとも反省してねーじゃねえか!」
カイトとリンクのツッコミが見事にハモる
「次は、次からは気をつけるよ…たっ多分…」
「――多分とは言わないで欲しいがな…」
カイトの目が全く笑っていない。スバルは深く、
深く、今度こそ本気で反省を促されるのだった。
お説教タイムを終え…額にまだ冷や汗をにじませたまま、彼らは再びきらびやかなパーティー会場へと戻った
会場では、資産家たちが優雅な歓談に花を咲かせている
カイトがスバルに口を動かさずに低く囁いた
「おいスバル。絶対にボロを出すなよ
「わっ…わかってるって、さっきはちょっと、美味しそうな匂いに負けただけだから……」
スバルが小さな声で言い訳をした、その時だった
「あれっ? ミルフィール社長! お久しぶりでございます!」
知らない招待客の男が、満面の笑みでこちらに近づいてきた。
「えっと……」
完全に言葉に詰め、しかし機転を効かせて話を合わせるジン
「お久しぶりです……」
瞬時に適切な言葉で返すジン、それを見て何かに気づく招待客
「嫌だなあ社長!貴方様と契約を結ばさせてもらっております会社の社長、バッスですよ!」
「あっ…ああそうだ、バッ、バッス社長、おっお久しぶりです…」
話を合わせて瞬時に適切な言葉で返すジン
「本当にお久しぶりです! あれ? ミルフィール社長、なんか痩せました?」
「ギクゥッ!」
招待客の鋭い一言に、ジンの心臓が跳ね上がる
「それに、ちょっと筋肉質のような……? 」
また鋭い質問がジンに向かってくる
「ちょっとこの頃、男を磨こうと思って、いきすじ筋トレをしているのですよ……」
焦りながら返すジンの顔は引きつっている
「そうですか、素晴らしいですね、社長。それにしてもボディガードも変えたみたいじゃないですか? 新しい人を雇ったのですか?」
「ああ、ああっ、ああっ、そういった強者を集めたんだ……」
「へー、そうなんですか!」
スバル達の存在に気づくも、男は疑いもなしに納得し、満足そうに頷いた
「では、後ほど」
バッスが去っていく
ジンの背中から、盛大な安堵の溜め息が漏れた
完全に見破られる寸前の冷や汗モノのキャッチボールだった。
しかし…一旦、一件落着かと思いきや…
バッスが去った直後、パーティー会場の入り口から、見たこともないほど豪華な特大サイズのローストビーフを載せたワゴンが通りかかった
シェフが目の前で肉を切り分けるたび、香ばしい肉汁の香りが広がる
「……!」
その瞬間、スバルの目が完全に変わった
ローストビーフにロックオンされた彼の瞳は、もはや野生の獣のそれである
「ゴクリ」
大きな唾を飲み込んだ瞬間、ワゴンの車輪が床の小さな段差に引っかかった
ガタリ、と大きく揺れるワゴン
「あ、危ねえ!」
本能的に飛び出すスバル。だが、その勢いがあまりにも急すぎた。 肉が床に落ちそうになったところを、間一髪で口でキャッチし、もぐもぐと食べるスバル。
「う、うんめー!」
驚異的な身体能力の無駄遣いである
だが、問題はそこではなかった。突風のようなスバルの動きに巻き込まれ、カイトのサングラスが吹き飛んだのだ
「おい! 何やってんだよスバル!」
カイトがまたスバルを叱ろうとした、その時――。
サングラスが取れ、カイトの素顔が完全に露出してしまった
それに気づく招待客、周囲の視線が集まる
その中の一人が、カイトの顔を見て目を見開いた
「おい! あれもしかして、無法者のスバル・ラグナじゃないか! ほんとだ!危険度シルバー星1で指名手配されてる無法者だ!」
会場に静寂が訪れ、次の瞬間、爆発的なパニックが巻き起こった
「や、やばい! 殺されるぞ! 逃げろーー!」
パーティー会場は一瞬で大混乱に陥る。悲鳴が響き渡り、人々が我先にと出口へ殺到する
「クソっ! バレちまったか!」
カイトが毒突く。しかし、その表情からは先ほどまでの焦りが消え、不敵な戦士の笑みが浮かんでいた
「お前、やらかすなって言ってたんだろ!」
リンクがキレる
「いいじゃねえか、バレたからにはもう派手に動ける!」
スバルもまた、口元の肉を拭いながら、鋭い眼光を敵へと向ける
「この暑苦しいスーツも脱げそうだ」
脱ぎ捨てて、捨てようとするスバル
しかし、ジンが怒鳴るように口を開く
「そのスーツは絶対持っとけよ! 」
怒鳴る理由は、もちろん、このスーツは、今日の昼ごろにあるお爺さんから託された、大切なものだったからだ
「このスーツは爺さんからもらった大切なものなんだからな!」
「ああ! わかってるよ!じゃあこれ、カイト持っといてくれ!」
「はっ?なんで俺が持つんだよ!」
キレるカイトだが、言う割にはスーツを服の背中の方にに入れておくカイト
そして、スーツを脱ぎ、いつもの格好になる四人
もうエリートボディガードのフリをする必要はない。ここからはスバル達の独壇場になった
「じゃあ、暴れるぞ!」
「おう!」
スバルの咆哮を合図に、三人の無法者たちが、牙を剥いた――。
次は明日の18時15分ごろに投稿します!
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