第35話 反撃の狼煙
「ククク……ハハハハハ!」
豪奢なビルの一室。特等席の椅子に深く腰掛け、悠然とくつろぐガルドラがいた
ガルドラの眼下には、自らの圧倒的な力によって支配されつつある街の景色が広がっている
ガルドラは愉悦に満ちた表情で、自らの両手を見つめた
「俺にとって最大の脅威であったあの男――スバル・ラグナは完全に殺した。もはや、この俺の行く手を阻むものなど、今この大陸には居ない!」
傲慢極まりない独白。しかし、今の彼にはそれを現実にするだけの絶対的な力があった
ガルドラはふと、窓の外の遠い空へと視線を向ける
「……唯一の懸念があるとすれば、スバルの仲間たちだが、それも些細な問題だ あいつらごときが俺に勝つことなど、天地がひっくり返っても不可能……」
ガルドラの口元が、残忍な形に歪む。
「ついにだ……。ついにこの東大陸を、俺の掌の上で支配するときがやってくる。そして、やっとあいつも……完全に俺のモノとして、手に入れることができる。すべては俺の筋書き通りだ」
怪物の野望が、静かに、しかし確実に牙を剥こうとしていた
――その頃、一つの奇跡が起きようとしていた
「うう、ううん……っ、あ、あああ……!」
弾かれたように、ベッドの上にいるスバル
全身を包む凄まじい激痛にうなされる
「はっ……! 」
冷や汗を全身から噴き出しながら、荒い息を吐き、
飛び起きるスバル
「おっ俺は…そうだ!がルドラに負けて…」
ガルドラによって虫ケラのように蹂躙され、遥か彼方の山へと文字通り「ゴミ捨て」のように放り投げられたスバル
「お、おい! 起きたか、スバル! 」
聞き覚えのある、しかし酷く焦燥した声が鼓膜を震わせる。
スバルが痛む首を動かして横を見ると、そこには仲間であるカイトをはじめ、リンク、ジン、全員が居たのだ
「あれ、お前ら……なんでここに……? それにジンも……! よくなったのか!?」
ジンが呆れたように、しかし心底ホッとしたような顔で笑う
「あぁ、俺はもう元気ピンピンだぜ。それよりも、本当にヤバかったのはお前の方だぞ?」
「……俺、どうやって助かったんだ?確か、 ガルドラにやられて……そこからの記憶がねぇんだ……」
スバルが頭を抱えると、リンクが事の顛末を語り始めた
「それがな? お前と別れた後、偶然川の近くにあるキッチンカーで飯を食ってたんだよそしたらさ……
川で網を使って魚取ってた漁師の網にお前が引っかかったんだよ 偶然俺がその現場を見てて、怪我だらけだったから病院に連れてきたんだ」
「ほんとか!サンキュー!リンク」
嬉しそうに感謝するスバルの
「本当に運がいいというか、悪いと言うか……」
呆れたように言うカイト
「そうだな。多分あのまま見つからずに、川で流されてたら確実に死んでた、ラッキーだな!」
スバルは自嘲気味に笑う
スバルはあの圧倒的な破壊を喰らいながら、投げられ、川に落ちて網に引っかかって生き延びていたのだ
「ラッキー!? 軽っ! まぁそれがお前か……」
ジンも呆れたように言うおいスバル
「そうだ!エリスから聞いた情報があるんだ聞いてくれ!」
エリスと喋ったこと、話の顛末、ガルドラの残虐性
スバルはあったことを全て語った
「そうか、やっぱりガルドラは何か企んでるみてえだな」
カイトがそう呟くと、何かに気づき、口を開くスバル
「 そうだ!俺どれくらい寝てたんだ?3時間くらいか?」
「惜しい、桁飛んで3日 3日も寝てたんだよ、お前は!」
カイトの怒声に、スバルは目を見開いた
3日間。その空白の時間は、あまりにも長すぎる
「どうりで腹が減ってるわけだ……」
「こういう時と思って、看護師さん達に飯を用意してもらったぞ。マジで特別だからな?」
ジンが手際よく、湯気の立つ温かい食事の盆をスバルへと渡す
「うっひょー!うっまそー!」
空腹の限界だったスバルは、一心不乱に飯を口へと運んだ。体にエネルギーが染み渡り、ガルドラに破壊された細胞が急速に再生していくのを感じる
「ぷはぁ、生き返った……! いや、うめぇ! 最高だぜ!」
すると何かを思い出したように叫ぶスバル
「あっ、そうだ、エリス! エリスはどうなったんだ!? 俺、あいつと逸れちまって……! それを話そうと思ってたんだ!」
しかし、その言葉を聞いた瞬間、仲間たちの顔が一斉に曇った
「カイト、ジン……? なんだよみんな、その顔は
どうしたんだよ? エリスに何かあったのか……?」
「あ、あの……これを見てくれ……」
カイトが苦渋に満ちた表情で、一端の新聞をスバルのベッドへと差し出した
「この3日間でとんでもないニュースが巻き込んできてな……。これを見ろ」
「新聞……? どれどれ……」
スバルはひったくるように新聞を受け取り、紙面に躍る大見出しに目を走らせた。
「む、ふむふむ……えーーーーーっ!!!???」
病室全体に、スバルの絶叫が響く
紙面に書かれていたのは、あまりにも理不尽で、衝撃的な文字だった
『ガルドラ氏、エリス嬢と電撃結婚へ 明日結婚式の予定! 本日夜、富豪たちの前夜祭を開催』
「え、エリスと……あのガルドラが、け、結婚…っ!? 嘘だろ……っ!?」
激しい動揺がスバルを襲う
カイトが重い口を開いた
「そうなんだよ……。いきなりのニュースが舞い込んできて、今はこの話題で街はもちきりだ。そして……結婚式は明日の朝の9時、今日の夜に前夜祭があって、明日が本格的な結婚式だそうだ」
「結婚式が、明日……」
スバルの拳が、シーツを破らんばかりに強く握りしめられる
隣でジンが、冷徹な分析を口にした
「だからあいつは、俺たちに助けを求めてたのか…」
スバルがそう呟くと返答するジン
「ああ…十中八九そうだろうな。ガルドラの奴、エリスが嫌がってるのを知っててやってるよな……。許せねぇ」
「俺、一人でまたガルドラのところに行ってくる!」
怒りに任せて飛び出そうとするスバルを、カイトは鋭い声で引き留めた
「待て、ジン。……おい、お前、前負けただろ?」
「うっ……! それは、そうだけどよ……!」
「でも、エリスが困ってんなら助けにいかなきゃならねぇだろ!」
「 何言ってんだよスバル!?」
カイトが詰め寄る。
「これは一騎打ちに負けた俺の勝負だ」
スバルの瞳には、絶望も、無謀な怒りもなかった。 あるのは、静かに燃え盛る、地獄のような復讐の炎だ
「……勘違いするな。俺がいるだろ?」
カイトのの言葉に、スバルの息が止まる。
「ああ……。たまには頼ってくれてもいいんだぜ? 」
リンクがスバルの肩に手を置いて言う
「みんな…ありがとな」
スバルが嬉しそうに言う
「じゃあ、エリス救出作戦開始だ!」
スバルはベッドから立ち上がり言う
完璧な敗北を喫した、ゴミのように捨てられた
だが、スバルの魂は、まだ一歩も引いてはいない
「おーーー!!」
仲間たちの雄叫びが響く。 スバルは不敵に笑み、最後に全員で声を合わせて言った
「リベンジだ!あの化け物の顔を、盛大にひっぱたきに行くぞ!」
一度は折られた牙。しかし、復活した者の反撃は、
ここから始まる。
次は明日の18時15分ごろに投稿します!
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