第25話 凄腕ヒーラー登場!
「な、なんかくるぞ……!」
カイトが低く緊迫した声を上げた。
全員が身構え、息を呑んだその瞬間、激しく揺れる草むらを割って飛び出してきたのは――恐ろしい敵ではなく、一人の可憐な美少女だった
「……だっ誰!?」
拍子抜けしたリンクが、目を丸くして不思議そうな声を上げる
突如として現れた少女の姿に、スバル、カイトも警戒を緩めないでいた
「……あなたたち、何者?」
少女は長い髪を揺らし、じっとこちらを見つめている
「お前が逆に誰だよ」
スバルが少女に向かって聞いた
それに答え、少女は自ら名乗った
「私はエリス。エリス・グレイよ」
「なあ、エリス、お前ハベストって街知ってるか?」
スバルがエリスに聞くと
「ええ知ってるわよ。そもそも、すぐそこよ。道案内しようか?」
「本当か! 助かるよ、エリス」
まさかの幸運にスバルが笑顔を見せる
しかし、カイトはまだ警戒を解いていなかった
そしてエリスは怪訝そうに眉をひそめた
「でも、なんでハベストに? あなたたちが来た方向だと砂漠地帯よね? 珍しい、あっちからくるなんて」
エリスが不思議そうに聞く
「……怪我人がいるんだ…」
リンクが小さく悲しそうな声でいう
「怪我人?」
それを聞いたエリスの顔が少し緩む
「お腹が抉られてるみたいで、状況がまずいんだ。
だからハベストに向かってるんだ、ヒーラーを探して」
カイトが切羽詰まった様子で、状況を説明する。背中におんぶされているジンの容態は、一刻の猶予もないほど悪化していた
「なるほど、ちょっと見せてみて」
ジンの状態を見たエリスが食い入って見る
「ええ、っ、ああ……いいけど」
カイトが戸惑うのを余所に、エリスはジンの傍らに歩み寄った
そしてジンの傷口に手を当てる
すると、緑に光っていき、エリスが詠唱しだす
「ヒーリング……!」
エリスの手のひらから、眩いばかりの緑色の光が溢れ出した
その神聖な光は、ジンの痛々しい傷口を包み込んでいく
「う、うわっ! 眩しい!」
あまりの光量にスバル達たちが思わず目を覆う。
やがて光が収まると、信じられない光景が広がっていた。ジンの腹部の傷が、まるで最初から何もなかったかのように綺麗に塞がっていたのだ。
「う、うう……うん。……」
するとジンが起きる
「……ジン! 治ったのか!?」
スバルが歓喜するように叫ぶ
ジンが元々あった傷口を触るがなくなっていた
「なっなんできっ傷が…」
ジンがエリスの方を見ると察するように口を開く
「お前が治してくれたのか…名前は?」
「エリスよ」
エリスがジンに対して名乗る
「そう、ありがとな。このままじゃ死んでた」
ジンは自分の腹部を何度も確かめ、エリスに深く感謝した
「いいのよ、私は治すことが仕事だから」
エリスは少し照れくさそうに笑う。
「もしかして、能力か?」
カイトがエリスに聞く
「ええ、私の能力は『治療者』よ」
「すげえな、なんでも治せるのか!?」
興奮した様子でスバルがエリスに聞く
「そんな便利なもんじゃないわ。私の能力ヒーリングは、三日以上経った怪我や、体の三分の一以上欠損してたり死んでしまったりしたら、もう治らないわ」
「めっちゃ便利な能力じゃん…」
リンクが自分のことを謙虚するエリスに対してツッコむ
「……まあ、いいわ。早く行きましょ、ハベストに行くん でしょう?」
エリスがスバル達に聞く
「そうだ、早く行こうぜ! 食いもんもなくなったし!」
「もう、ちょっとジンを心配しろよ……」 リンクの鋭いツッコミに、スバルが苦笑いを浮かべる
ジンの命が救われた喜びで、一行は喜びに満ちていた
一それから十分後一
エリスの案内に従って進むと、ついに目の前に巨大な街の姿が現れた
「ついたー!」
ハベストを見回すスバル
「ここが東大陸の一番の中心地、ハベストよ」
淡々と言うエリス
「ス、スッゲー! ここ、やばすぎるだろ!」
リンクが感嘆の声を上げる。そびえ立つビル
ひしめき合う美しい建物、そして行き交う多くの人々
砂漠の過酷な旅を続けてきた一行にとって素晴らしい光景であった
「わあ、こんな高い家あんのか!」
スバルが目を輝かせて大騒ぎする。
「お前らさっきまで俺のことでしょんぼりしてたくせに、はしゃぐな! 俺まで白い目で見られるだろ!」
ジンが呆れたように注意するが、その表情はどこか嬉しそうだった
「これはビルよ。あなたたち、本当に田舎者ね。……」
「でも、初めて来たなら、ここにはいっぱい店があるから早く店行こうぜ、カイト!」
スバルがワクワクしながら言う。
「おう、まずは飯だな!」
カイトも興奮した様子で喋る
「じゃあみんな、ここにあと二時間で集合するぞ!」 そういうと、スバルとカイトは弾かれたように爆速で走っていき、あっという間に人混みの向こうへと消えてしまった
「……行っちゃった……」
呆然と見送るエリスに、ジンが申し訳なさそうに声をかける
「悪いな、エリス。いつもあんな感じなんだ」
「……いいわよ、そんなこと。……あ…」
時計を見て何かを思い出すように
「あっ、ごめんなさい、ちょっと用事があって…」
「いいよ、ありがとな。ここまで案内してもらって」
ジンがお礼を言ってすぐに行ってしまったエリス
「エリス、急にどうしたんだ?まあいいや俺らもいくか」
リンクが言ったその瞬間
「……い、痛ててて……」
歩き出そうとしたジンが、突然、腹部を押さえて顔をしかめた
「おい、大丈夫か!?」
リンクが心配したようにジンに対して声を掛ける
「傷は治ったけど、さっきまで治ったばっかだったから、身体がまだ適応してないんだ……」
それを見たリンクはすぐに決断する
「医者のところに行こう、早く」
「ああ…」
リンクは慌ててジンを支え、街の診療所を探して歩き出した。
――そんな二人を、少し離れた路地の影から、じっと見つめているエリスの姿があった。その瞳には、先ほどまでの明るい少女のものとは違う、どこか深い思惑が宿っているようだった。
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