第十八話 勝ち?…
一その頃カイトは一
戦場に、血を吐くような凄まじい喘鳴が響き渡る。
「っ……、うぐっ、ゲホッ、ゴホゴホッ……!」
カイトは胸を押さえ、地面に膝を突いていた
肺を焼かれるような激痛。視界が激しく明滅する。 全身の血管を駆け巡るのは、敵――シヴァが放った致死の猛毒
指先一つ動かすのも億劫なはずだった
「……そろそろやばくなってきたな…」
声も出すのもキツくなっていたカイト
その満身創痍の様子を、シヴァは冷酷な笑みを浮かべて見下ろしていた。
「苦しそうだな?早く楽になった方がいいだろ?」
「黙れ、よ……!」
カイトは歯を食いしばる。 だが、その瞳の奥にある不屈の炎だけは、決して消えてはいない
「……このまま死ぬわけにはいかねえ…抵抗させてもらうぞ!」
カイトは残された全ての力を右腕に集束させる
圧縮された風の刃が、キィィィンと耳鳴りのような高音を立てる
「『疾風斬』ッッ!!」
カイトの放った一撃は、空間そのものを切り裂くような暴風の斬撃となってシヴァへと襲いかかる
しかし、シヴァはそれを嘲笑うかのように、
避けるシヴァ、その手には禍々しい毒の障壁が揺らめいている
「そんな死にかけのお前の技じゃ避けるなんて簡単だ!お前にもっと毒を浴びせてやるよ!」
シヴァがまたカイトに致死量の毒を喰らわそうとした
しかし… カイトの猛攻はそれで終わりではなかった
「甘ぇんだよ……クソ野郎!これが本命だッ!
『風牙』!!」
シヴァが疾風斬を避けたその瞬間、
カイトは間髪入れずに第二の風の奥義『風牙』を解き放つ!
牙のように鋭利に研ぎ澄まされた烈風が、シヴァを襲う
「ぎゃあああーー!」
凄まじい衝撃波が周囲の瓦礫をふき飛ばす
そしてシヴァは大ダメージを受けてしまう
しかし決定的なダメージにはならなかった
「まっ、まだだ…まだ俺は戦える!アグニバル様が思い描く世界を作るために! お前は何のために戦う!?」
立ち上がるシヴァ
カイトの脳内にかつて交わした数々の『記憶』が鮮烈なフラッシュバックとなって駆け巡る
「一緒に世界を見に行こう!」と言ったリーダーとの約束…
何もできず、ただ奪われるのを見て涙を流すことしかできなかった、あの幼き日の絶望。
そして――自分の無力さゆえに、冷たい骸となってしまった最愛の母親の笑顔
「そうか…俺の戦う理由か…
俺はリーダーとの約束…そして無力だった頃の俺への罪の決意!
そしてその無力のために死んだ母親への償いだ!」
一歩。また一歩と、敗北者であったはずの男が、
シヴァに向けて歩を進める
その瞳に宿る不屈の光に、勝ち誇っていたシヴァの顔から血の気が引いていく
「あり得ないあれほどの致死量の毒を喰らって、なぜ動ける…」
カイトは口元に、狂気すら孕んだ極上の笑みを浮かべた
「俺を死に際に追い込んでくれた感謝するぜ?」
その言葉が、夜の戦場に冷酷に響き渡った瞬間
シヴァの背筋に、かつて感じたことのない強烈な悪寒が走った。
あり得ない、
目の前の男に注ぎ込んだのは、並の人間であれば即座に内臓が融解して絶命する、致死毒だ。
それなのに、なぜカイトは立っている
圧倒的な風の闘気を吹き荒れさせている
カイトが一歩を踏み出すたび、
シヴァの防衛本能が『後ろへ逃げろ』と脳内で狂ったように警報を鳴らし始める。
だが、格下であるはずの凡夫に怯えることを許さなかった。
「ちっ近づくな!!」
危険を察知してまた毒を打ち込もうとするシヴァ
「毒水!」
手から毒が出てきてそれをカイトに襲わせる
「死ね!くたばれっ!」
しかしシヴァの思いとは裏腹にそれを全て避けるカイト
「なっなぜだ!なぜそこまで動ける!」
驚きを通り越し恐怖を感じているシヴァ
「なぜかって?俺にもわかんねえ…だけど一つ…言えることは…お前が俺を強くさせちまったみてえだ…」
その言葉は、シヴァの心を容易く掻き消しながら告げられた。
「あ……、あ、ああ……っ!?」
シヴァの口から、情けない引きつった悲鳴が漏れる。脳が拒絶していた
目の前で起きている現実を、プライドが理解することを拒んでいた。
自分の毒は完璧だったはずだ。放った攻撃はすべて致命傷だったはずだ
それなのに、カイトは、ダメージを無ではないのに無にしていく
自分が追い詰めれば追い詰めるほど、目の前の男は 『化け物』へと変貌を遂げていく
シヴァ自身の傲慢さと毒こそが呼び覚ますトリガーになってしまったのだ
「化け物……! お前は、お前は何なんだァァァッッ!!」
シヴァは完全に正気を失い、絶叫した
恐怖、それは生まれて初めて味わう、底なしの絶望だった
「認めない……! この俺が、お前のような虫ケラを強くしただと!? そんな理不尽があってたまるかッ! 消えろ! 俺の視界から、今すぐ消え失せろォォォッッ!!」
全身の血管が引き千切れんばかりの毒をを暴走させ、周囲の地面をドロドロに融解させるほどの最悪の猛毒を全方位へ撒き散らした
「これで死ねーーーー!」
シヴァの狂乱の叫びとともに、部屋がドス黒い紫色の毒に染まる
地表を融解させながら押し寄せる津波のような猛毒。触れれば骨すら残らない、シヴァが命を削って放った最大最悪の絶技
だが、カイトの歩みは止まらない。 押し寄せる絶望の津波を前に、大地を深く踏みしめた。
「終わりだ、シヴァ」
カイトがそう呟いた瞬間。 戦場を支配していた重苦しい大気がカイトの肉体を中心に、凄まじい濁流となって渦巻き始めたのだ。
「ゴオオオオオオオオオオオッッッ――――!!!」
地鳴りのような重低音が響き渡る カイトの足元から、突風が爆発的に吹き荒れた、
それは瞬く間に巨大化し、竜巻へと変貌を遂げていく周囲の巨大なコンクリートの瓦礫が紙切れのように天へと巻き上げられ、近くにあるものがグニャリと歪んで見える。
「な……んだ、その……風は……!? 竜巻だと……っ!?」
シヴァの瞳が、恐怖で極限まで見開かれる。 自分が放ったはずの最強の猛毒の津波が、
カイトの暴風が放つ圧倒的な引力に強引に捕らえられ、毒が完全に消え去る
カイトは残りの力をすべてを込めて、掲げた両腕をシヴァへと突き出した
「奥義・『天旋風』!!」
シヴァの身体は、逃げる間もなくその巨大な渦の中心へと強制的に吸い上げられた。
シヴァが放った猛毒も、プライドも、
すべてが『天旋風』の圧倒的な暴風の檻の中で容赦なく揉みくちゃにされる
「ぎゃあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!???」
夜空を切り裂く、シヴァの断末魔の絶叫
やがて、完全に風が止む 天高く巻き上げられ、無様に地面へと叩きつけられたシヴァは、完全に力を失い、ピクリとも動かず白目を剥いて崩れ落ちていた
「よし…終わったか…まあ気に食わねぇことは相打ちってことだな」
「バタンッ」
カイトも毒で力尽き倒れる
次は今日の夜20時から21 時ほどに投稿予定です!
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