第十七話 窮地2
一その頃、スバルは一
目の前に立つ不敵な男、アグニバルを睨みつけていた
「お前も……『能力者』だったのか……!」
スバルの問いかけに、アグニバルは愉悦に満ちた笑みを浮かべ、自らの右手をゆっくりと掲げた
親指と中指が交差され、不気味な緊張感が張り詰める
「ああ、その通りだ。よく見ろ、これこそが俺の真の力――【振動衝撃】!」
「パチン――」
静寂を切り裂き、小気味よい指鳴らしの音が響く
だが、それはただの音ではない
音波を媒介として放たれた、目に見えぬ「振動の波動」だった。
その音が真っ直ぐスバルに向かう
そしてスバルに直撃する
「ドンッ!ーー」
スバルに何かが当たる音がする
「がっ!? な、なんだ……これ……ッ!?」
衝撃波がスバルの胸元で炸裂した
まるで不可視のハンマーで殴られたかのように、スバルの身体が後方へとよろめく。
「驚いたか? これは俺の能力――
『音鳴制御』
俺から発せられる音を自在に操る能力者だ!
これは実体を持つ物じゃない。空気みたいな物だ……
だからこそ、ほぼ不可避ッ!」
「そういうことかよ……ッ!」
スバルの頬を、鋭い空気の刃がかすめる。ポタポタと、赤い鮮血が地面に滴り落ちた
「さあ…お前の能力も解放しろ!本気でやろうじゃないか! 」
アグニバルの咆哮が部屋全体に響く
「俺は能力持ってねぇーんだよ…」
それを聞いたアグニバルが少し驚くと同時に不敵に笑い出す
「これはとんだ笑いもんだ! 能力も持ってない雑魚が俺に挑んできたとは、確かにパワーとんでもねえがそれまでだな お前には失望したよ そんなお前じゃ大切なもんも、守りてえもんも、夢も叶えれねえよ!」
「うるせえ…俺は…俺は!能力なくても!いいって言ってくれた友達がいる! 村の中には俺のことをよく思ってなかった奴もいた! だけど俺のことを大切にしてくれる奴らもいた! だから俺は能力なんかいらねー!」
アグニバルの煽りにキレるスバル
そして今までのヴァルク、村のみんなとの日々を思い出す
「能力がなくたって俺には友達がっ…」
そしてカイト達を思い出す
「仲間がいる!
能力がなくても俺には大切なもんがいっぱいある、
守りてえもんがいっぺえある!それで!世界を全部見にいく!それをお前みてえなやつにできねえなんて言わせねえ!」
そう言うとスバルは地面を蹴って猛スピードで
アグニバルの死角である背後へと回り込んだスバル
そして容赦のない超高速の連続蹴りを叩き込む!
「瞬脚!!」
激しい肉撃の音が響き渡る
スバルの放つの乗った一撃一撃は重い。
「チッ……『音生防御』!」
「キンッ!!!」
アグニバルが背後に展開した、目に見えない「音波の障壁」がスバルの蹴りを弾き返す
だが、スバルは弾かれた反動を巧みに利用し、
空中で身を翻すと、今度は障壁の隙間を突いて横腹へと強烈なミドルキックを叩き込んだ。
「ガハッ……!?」
アグニバルの身体が大きくよろめく。スバルの猛攻は止まらない
左右からの変幻自在の連撃、死角からの鋭い突き。能力の隙を突いたスバルの体術が、アグニバルを確実に追い詰めていく
「まだ終わってねぇぞ!」
スバルの猛攻はこれだけでは終わらない。ここで手を緩めれば、再びあの不可避の音に主導権を握られる。
スバルの肉体がさらに加速する
右から放たれる目にも留まらぬ速さのストレート
それを察知したアグニバルは手を交差し防御しようとする
しかしそれは囮でありストレートに意識を向けさせ
左からののローキック
アグニバルの視界を攪乱するように、上下左右、全方位から怒涛の連撃が嵐のように降り注ぐ。
完全にスバルの速度がアグニバルの発動速度を上回り、戦況は互角――いや、完全にスバルが押し始めていた
勝てる! このまま押し切れば、アグニバルを倒せる!
スバルが確信し、トドメの一撃を放つために地を蹴った――その瞬間だった
アグニバルの瞳が、冷酷な光を放つ
「舐めるなよ。俺の能力は指鳴らしをする動作ひとつが発動条件ではない!」
「パンッ」
軽快なアグニバルが手を合わせて拍手する音が響く
すると音の斬撃がスバルに飛んでいく
「なっ!!」
スバルがそれに気づいたが避けるにはもう遅すぎた
「ザシュッ!」
スバルに一つの斬撃が当たる
「ガッ!」
そのたった一つの斬撃によって、さっきまでのスバルの猛攻が止まる
それをアグニバルが見逃すはずなく
「パンッ! パンッ! パンッ!」
拍手をし、その音が響いた瞬間、周囲の空気が全方位から鋭利な「音の刃」へと姿を変え、逃げ場のない檻となってスバルを襲った
先ほどまでの優勢が、一瞬の油断によって崩壊する。
「がっ……、あ、あああああぁぁぁッッ!!」
目に見えない無数の音の刃が、スバルの肉体を容赦なく引き裂いていく
服が裂け、鮮血が舞う
凄まじい衝撃に押し流され、スバルの身体は激しく損傷した
「――がはッ! ……っあ」
背後のコンクリート壁に激しく激突し、スバルはその場に力なく崩れ落ちる
壁にもたれかかったまま、指一本動かすことすらできない。視界が急速に狭まっていくスバル
「ただ指鳴らしだけが発動条件ではない、
拍手も発動条件の一つだ、それに気づかなかったのが
お前の敗因だ…
そして褒めてやるまさかここまでやるとはな だが、所詮は能力を持たない凡夫よ」
アグニバルは静かに踵を返した。
「さて……」
アグニバルは底冷えするような声を響かせ、冷たい笑みを浮かべた。
「残りの害虫を、駆除しに行くか」
明日は昼の12時ほどに投稿予定です!
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