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第15話 カイトの眠っていた過去

その頃 カイトは一


シヴァと戦闘を続けていたカイト


「やっと能力を見せてくれるのか」

待ちくたびれたように言うカイト


「ああ俺の能力はトップクラスだ」

自信満々に言うシヴァ


「じゃあ見せてもらうか、その最強ってやつの能力を!」


シヴァは狂気を孕んだ笑みを浮かべ、両手を突き出す

「ああ、じゃあ見せてやるよ! 喰らえ――

毒水ポイズンウォーター』!」


シヴァの手の平から、不気味にうねる紫色の液体が凄まじい勢いで噴き出した。


それを察知したカイトが瞬時に地を蹴り、横へと跳ぶ。

 直後、先ほどまでカイトがいた地面がシュルシュルと音を立てて溶けていく。激しい身の危険を感じながらも、カイトは体勢を立て直した。


カイトの心の声

(今のって……まさか!)


それを見たシヴァが不敵に笑う

「気づいたようだな…そうさ!俺の能力は毒を操る毒人間だ!」


カイトの服の裾がわずかに触れただけで、ボロボロに溶け落ちていく。


「確かに厄介だな…だが当たらなきゃ問題ない」


しかしカイトが冷や汗を流すのを見て、シヴァはさらに歪んだ笑みを深くした。


「避ければいいだけじゃないか、だって? そうじゃあ、どこまで避けきれるかな! 『毒弓ポイズンアロウ』!」


シヴァの周囲に浮かぶ紫の毒水が、瞬時に無数の鋭い矢の形へと変貌する。

 「ピュピュピュン――っ!」


空気を切り裂く禍々しい音が響き渡り、全方位からカイトを目がけて殺到した。


「さあ、どうするカイト!」

ニヤけながら楽しむシヴァ


カイトは容赦なく降り注ぐ毒の雨を、極限まで引き上げた速度で紙一重に避けていく

そして避けてすぐに手を平手にし風を集める

カイト そして溜まった風を一気に放出する!


「『疾風斬』!」


 不意を突かれたシヴァが身を翻すが、カイトの放った不可視の烈風は、シヴァの肩口を浅く切り裂いた。


「がっ……!」


シヴァの口から短い悲鳴が漏れる。しかし、彼はすぐに不敵な笑みを取り戻した


「防がれたか……。それなら、もっと風の出力を上げる!」


カイトはさらに風の圧力を強め、周囲の空気を巻き込んでシヴァを圧倒しようとする。しかし、シヴァの狙いはまさにそこにあった。


「そこだ! 『疾風毒突き』!」


シヴァは、カイトが操る風の急流に向けて、高濃度の毒液を乗せたのだ。

 カイトの攻撃となる風が、最悪の毒風へと変貌し、一気にカイトの懐へと突き進む。



「が、はっ……!?」

 鋭い衝撃がカイトの脇腹を襲った。

 衣服を突き破り、紫色の毒が皮膚から体内へと侵入していく。カイトの視界がぐにゃりと激しく歪んだ。

「終わりだ! 俺の毒を直接喰らったお前は、あと十分で死ぬ!」

「お前はもう終わりだ……! そうか、確かに、

ゴホッ! ……これは、かなり応えるな……」


膝をつきそうになりながらも、カイトは必死に呼吸を整えようとする。しかし、肺を焼くような激痛が彼を襲い、激しく咳き込んだ。


「ゴホッ、ガハッ……!」

 視界がぐにゃりと歪み、世界の上下が分からなくなる。

 膝の力が抜け、今にも地面に崩れ落ちそうな身体を、カイトは執念だけで支えていた。

 フラフラと、まるで今にも倒れる幽霊のように足元を千鳥足にさせながら、それでもカイトは一歩、シヴァの方へと足を踏み出す。

「……おお、おぉぉっ!」

 悲鳴を上げる身体を叱咤し、渾身の力を振り絞って拳を突き出した。

 だが、毒に侵され感覚の消えかけた腕のひと振りは、あまりにも遅く、あまりにも軽かった。

 ポスッ、と力ない音が響く。

 カイトの拳はシヴァの胸元に当たった。しかし、それは攻撃と呼ぶことすらおこがましい、幼児のじゃれつきのような弱々しい一撃だった。

「……そんな弱い攻撃で何が出るって言うんだ?」

シヴァの身体は微動だにしない。

痛がる素振りすら見せず、ただ底冷えするような冷酷な目で、目の前の哀れな敗北者を見下ろしている。


そして力が尽き倒れてしまうカイト


「哀れな奴だ…俺の毒を喰らって死ぬことになるとは…」


後ろを振り向き去ろうとするシヴァ


「アグニバル様の援助をしにいくか…」


アグニバルのところへ行こうとしたその瞬間!

何と立ち上がるカイト

それに気づき振り返るシヴァ


「なっなぜだ!なぜまだ動ける!」

それを見て驚きを隠せないシヴァ


「諦めるわけには、行かないんだよ……!」

フラフラして立つのもやっとのカイト


「なぜだ!お前はもう負けが確定してる、

諦めろ!」


「お前の言ってることは…ゴホッ!ゴホ!

確かに正しいかもしれねえ…なぜ諦めねえかって?…俺はあいつと約束したんだ……。一緒に、てっぺんに行くってな!」


じわりと毒の混じった衝撃が伝わるが、カイトの目はまだ死んでいなかった。


「ゴホゴホッゴホ!やべぇ昔のことを思い出してきた…走馬灯ってやつか…」


脳裏に溢れ出してきたのは、まだ何もできなかったあの頃の……あまりにも痛々しい、過去の記憶だった…


一12年前一


「やーい! カイトは無法者の息子だー! ドラ息子だ!」

「ギャハハハ! 犯罪者の子を産んだお前の母親も犯罪者だー!」


近所の子供たちからの理不尽な罵声と、容赦なく浴びせられる石の雨

父親が『無法者』だというただそれだけの理由で、俺はいつも仲間はずれにされていた  


「何を!俺のことは何とでもいえ!だけど母さんをバカにすんな!」


キレて風の能力で子供達を追い返すカイト


「ひえー!」

「やっぱり勝てねー!」


怯えて逃げていく子供達


「ふん!弱虫がよ…」


子供達に対して呆れ、泥まみれになりながら帰路に着くカイト


「ただいま…」

家に帰ってくるカイト


「カイト、おかえり!」


玄関を開けると、母さんがいつもの優しい声で迎えてくれた。 だけど、ボロボロになった俺の姿を見た瞬間、母さんの瞳に痛切な悲しみが走る。


「また、喧嘩したの? もう!危なっかしい子ね…」

呆れるカイトの母


「だって…また母さんの悪口言ってきたから…」


「いいのよ、そんなこと。私はカイト、あなた自身のことが一番大事。あなたが元気でいればそれでいいんだから。危ないことはしないでちょうだいね?」


母さんは俺を強く抱きしめ、泥だらけの頬を涙ながらに拭いてくれた。 世間がどれだけ俺たちを後ろ指さそうとも、母さんだけは俺を無条件に愛し、守ろうと必死だった。


――けれど、そんなささやかな幸せすら、世界は許してくれなかった…


一数ヶ月後一

 村で伝染病が流行ってしまった

「母さん! 大丈夫か、母さん!」 


母さんもその流行病にかかってしまったのだ…


突然激しく咳き込んで倒れた母さんを前に、俺はただ取り乱して叫ぶことしかできなかった。 そんな俺を安心させるように、母さんは弱々しく微笑む


「そんな大袈裟よ、ゴホゴホッ……!」


「ほら! すぐ病院に連れて行ってやらぁ!」


母親を抱えて病院に急ぐカイト


だが、病院へ着いた俺たちを待っていたのは、あまりにも冷酷な現実だった


「えっ……どういうことだよ」 


医師や周囲の大人たちは、困惑と、そして冷ややかな目を俺に向けて告げた。


「だから流石に『犯罪者の家族』を受け入れることは、こっちの立場も危ないんだよ。わかってくれよ、坊や」


無法者の家族には、医者にかかる権利すら与えられない それが、この理不尽な世界のルールだった


「なんで……なんでだよー!」 必死の叫びも虚しく、まともな治療を受けられなかった母さんは、そのまま静かに息を引き取った


無法者である父親のせいで、最愛の母さんが死んだ。 幼かった俺の心は、激しい怒りと、世界への憎しみで狂いそうだった


母さんは最後まで父さんの味方だった


「カイト…お父さんを許してあげてね…私、あの人が

無法者であったことを今でもずっと…誇り思ってるから…」


これが母さんの遺言だった…

あんな酷い目に遭わされて、命まで奪われたのに、なぜ母さんは最期まで父さんを恨まなかったのか

俺にはわからなかった


俺は悟った 無法者の家族は生きてもいい権利すらないのだ


冷たくなった母さんの手を握り締めながら、六歳の俺の心に、ある決意が刻まれた


「決めた…絶対に世界に知らしめてやる、俺の力を 無法者の父を持っても、生きてていい 無法者の息子だと虐げられた俺だって、ここに存在していいんだと。生きてていいって、思えるために!」 


世界のすべてを敵に回してでも、己の力で這い上がって証明してみせる。 

それが、絶望の底で少年だった俺が誓った、すべての始まりの衝動だった。



次はおそらく20時ほどに投稿されると思われます!

できなかったら本当に申し訳ございません

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