「読者がいる世界」
「お前の物語、
まだ終わってないぞ」
その言葉に。
ノア
の瞳が、
大きく揺れた。
今まで。
ずっと。
終わったと思っていた。
誰もいなくなって。
世界は灰色になって。
空には終末しか残っていなかった。
でも。
今。
瓦礫の街には、
人々が立っている。
「ノア様!!」
「よかった……!」
「まだ、
消えてなかったんだ……!」
その声を聞いた瞬間。
ノアの頬を、
涙が伝った。
空へ、
新しいログが浮かぶ。
【UNKNOWN STORY】
状態更新:
“再連載状態”へ移行
クロウが吹き出す。
クロウ
「再連載ってなんだよ!!」
アキが肩をすくめる。
白紙アキ
「物語的にはかなり重要」
ユイが少し笑う。
白銀ユイ
「なんか、
打ち切り漫画みたい」
ノアだけは、
まだ信じられない顔をしていた。
「……戻れるの?」
レンが頷く。
「戻す」
「お前の世界を」
その瞬間。
空の巨大な“作者の手”が、
再び動いた。
今度は明確な敵意。
世界を、
強引に閉じようとしている。
最終観測者が、
低く響く声で言う。
『未完結の延命を確認』
『修正難度:
危険域』
空の裂け目が広がる。
その向こうに。
巨大な白い空間。
無数のページ。
無数の物語。
そして。
ぼやけた“人影”。
レンが目を細める。
「あれが……
本当の作者か」
アキは首を振った。
「違う」
静寂。
アキは、
珍しく真面目な顔で続ける。
「“作者たち”だ」
その瞬間。
空間全体が震えた。
裂け目の向こうには。
無数の影。
机へ向かう者。
途中で消える者。
ページを閉じる者。
何かを書き続ける者。
物語を書いた存在たち。
クロウが息を呑む。
「マジかよ……」
ユイも、
圧倒されていた。
「あんなにいるの……?」
アキは静かに言う。
「世界は、
誰かが書いた数だけある」
「でも全部が、
最後まで続くわけじゃない」
ノアが、
震える声で呟く。
「……私の作者は」
アキは答えなかった。
その沈黙だけで、
十分だった。
その時。
裂け目の奥から、
低い声が響いた。
『なぜ、
終わった物語を引き戻す』
世界が震える。
文字そのものが、
圧力になる。
レンは、
白いペンを握る。
怖い。
相手は、
世界を作る側だ。
自分たちは、
作られた側。
本来なら、
逆らえるはずがない。
でも。
レンは、
ノアを見る。
住民たちを見る。
ユイたちを見る。
そして。
静かに言った。
「終わってないからだ」
空気が止まる。
レンは続ける。
「読者がいる」
「続きを望んでる奴がいる」
「だったら、
それはまだ生きてる」
その瞬間。
UNKNOWN STORY全体へ、
光が走った。
住民たちの周囲へ、
白い文字が浮かぶ。
【続きを希望しますか?】
住民たちは、
迷わなかった。
「生きたい!!」
「終わりたくない!」
「この世界を残したい!!」
叫び。
願い。
感情。
それら全てが、
空へ撃ち上がる。
【観測者数:
387 → 12094】
クロウが叫ぶ。
「増えすぎだろ!!」
アキが笑う。
「世界全体が読者化してる」
崩壊率が、
急速に下がっていく。
【51% → 28%】
そして。
初めて。
空の“作者たち”が、
沈黙した。




