「物語革命」
沈黙。
空の裂け目。
その向こうにいる、
無数の“作者たち”。
彼らが、
初めて言葉を失っていた。
なぜなら。
UNKNOWN STORYは、
本来もう終わっているはずだったから。
忘れられ。
切り捨てられ。
消えていくはずの物語。
それが今。
“続きを望む声”によって、
再び存在を取り戻している。
神代レン
は、
白いペンを握る。
右目のノイズは、
さらに激しくなっていた。
AUTHOR MODE。
それは、
“物語へ干渉する権限”。
だが。
人間が扱うには、
大きすぎる。
【警告】
AUTHOR MODE負荷上昇
精神同期率:
82%
レンの呼吸が乱れる。
頭の中へ、
大量の物語が流れ込む。
悲劇。
恋愛。
冒険。
絶望。
終わらなかった世界たち。
ユイが、
レンの腕を掴んだ。
白銀ユイ
「無理しすぎ!」
レンは笑おうとする。
「まだ……
いける」
クロウが顔をしかめた。
クロウ
「どう見ても限界だろ」
その時。
空の裂け目から、
新しいログが降ってきた。
【強制終了プロトコル】
UNKNOWN STORYを閉鎖します
空が軋む。
巨大なページが、
世界全体を閉じようとしていた。
まるで。
本を閉じるみたいに。
ノアが青ざめる。
ノア
「……また」
「消される……!」
住民たちが怯える。
せっかく戻り始めた世界が、
再び灰色へ染まりかける。
アキが、
低く呟いた。
白紙アキ
「マズいね」
「“作者側”が本気だ」
レンが空を見る。
巨大なページ。
閉じられれば、
UNKNOWN STORYは終わる。
完全に。
その瞬間。
レンの頭へ、
一つの考えが浮かんだ。
ありえない。
でも。
今ならできる。
レンは、
白いペンを強く握る。
ユイが気づく。
「……レン?」
レンは静かに言った。
「物語を救う方法、
一つ思いついた」
クロウが眉をひそめる。
「嫌な予感しかしねぇ」
レンは、
空の“作者たち”を見上げる。
そして。
白いページへ、
ゆっくり書き始めた。
【“存在しない物語”は、
他の物語と繋がった】
世界が、
止まる。
アキの瞳が、
初めて大きく揺れた。
「……おい」
クロウも理解した。
「待てレン」
「それ、
マズいやつだろ」
レンは止まらない。
さらに書く。
【“読まれなかった世界”は、
互いに観測し合う】
その瞬間。
空の向こうで。
無数の光が灯った。
知らない世界。
知らない主人公。
消えかけた物語たち。
その全てが。
UNKNOWN STORYへ、
反応していた。
【接続開始】
LOST STORY #021
LOST STORY #774
LOST STORY #13002
LOST STORY #44031
数が、
増え続ける。
クロウが叫ぶ。
「お前、
打ち切り世界全部繋ぐ気か!?」
レンは笑う。
「一個じゃ無理なら、
全部で抗えばいい」
空の“作者たち”が、
初めて動揺した。
『接続数、
異常増加』
『観測不能』
『処理限界超過』
そして。
世界中へ、
声が響き始める。
『助けて』
『終わりたくない』
『続きを』
『まだ生きたい』
何万。
何億。
消えかけた物語たちの声。
レンは、
白いペンを空へ向ける。
右目から、
激しくノイズが漏れる。
それでも。
彼は笑った。
「革命だ」
その瞬間。
空の裂け目が、
完全に崩壊した。




