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世界ログ:観測者ゼロ  作者: Y.M
真・最終章

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45/55

「たった一人の読者」

「俺が読む」


その言葉が響いた瞬間。


灰色の世界へ、

初めて“風”が吹いた。


冷たかった海が揺れる。


崩壊しかけていた空が、

少しだけ青を取り戻す。


ノア


は、

呆然とレンを見ていた。


「……読む?」


その声は、

信じられないものを見るようだった。


神代レン


は頷く。


「最後まで」


「お前の世界を」


静寂。


ノアの瞳から、

大粒の涙が零れ落ちた。


その涙が、

砂浜へ落ちた瞬間。


灰色だった砂に、

小さな色が戻る。


クロウが、

苦笑する。


クロウ


「マジで言ってんのかお前」


レンは肩をすくめた。


「言っただろ」


「面白そうだって」


クロウは呆れながら笑う。


「普通、

 世界崩壊寸前の物語に飛び込んで、

 読者宣言なんかしねぇよ」


ユイが小さく笑った。


白銀ユイ


「でも、

 レンっぽい」


しかし。


空では。


最終観測者が、

明らかに動揺していた。


巨大な白い瞳が、

微かに揺れる。


『理解不能』


白い槍が、

空中で停止している。


まるで。


処分を続けるべきか、

迷っているみたいに。


レンは空を見上げる。


「お前らってさ」


「“読まれなかった”だけで、

 全部切り捨てるんだな」


最終観測者は答える。


『観測されない物語は、

 存在を維持できない』


レンは即答した。


「だったら」


「観測すればいいだけだろ」


その瞬間。


世界が、

静かに震えた。


【UNKNOWN STORY】

新規観測者を確認

観測者数:


1


たった1。


それだけ。


それだけなのに。


崩壊が止まり始める。


灰色の空へ、

少しずつ色が戻る。


消えかけていた建物が、

輪郭を取り戻していく。


海面へ、

青が広がる。


ノアが、

震える声で言った。


「……一人でも」


「残れるの?」


アキの声が、

突然後ろから聞こえた。


「残れるよ」


全員が振り返る。


そこには。


いつの間にか、

壊れた標識の上へ座る


白紙アキ


がいた。


クロウが目を見開く。


「お前どこ行ってた!?」


アキは笑う。


「ちょっと裏側見てた」


意味不明だった。


いつも通りだ。


アキは、

ノアを見る。


その白い瞳には、

珍しく優しさがあった。


「物語ってね」


「人気だけで存在してるわけじゃない」


ノアが見る。


アキは続けた。


「たった一人でも、

 本気で“続きを見たい”って思ったら」


「それはもう、

 存在理由になる」


静寂。


ノアが、

涙を拭う。


終末体の巨大な身体も、

少しずつ縮み始めていた。


黒いノイズが剥がれ落ちる。


しかし。


その瞬間。


最終観測者の周囲へ、

赤いログが浮かんだ。


【異常事態】

“存在しない物語”の再固定を確認

修正不能


空間が震える。


クロウが顔をしかめる。


「修正不能?」


アキの笑みが消える。


「……マズい」


レンが振り返る。


アキは、

空を見ながら低く言った。


「観測者側が、

 強制排除に移る」


次の瞬間。


空が裂けた。


白いページの向こうから、

巨大な“手”が現れる。


人間の手。


だが。


星より大きい。


それが。


UNKNOWN STORYそのものを、

掴もうとしていた。


ノアが青ざめる。


「……あれ」


アキが低く呟く。


「“作者”だ」

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