「消去対象」
『この物語を、
完全消去する』
空が、
白く染まった。
無数の槍。
巨大な光。
灰色だった世界が、
逆に真っ白へ塗り潰されていく。
ノア
が、
震えながら空を見る。
「いや……」
「いやぁ……!!」
彼女の恐怖に反応して、
終末体が暴走する。
海が割れる。
黒いノイズが、
世界中へ広がっていく。
【崩壊率 98%】
クロウが悪態を吐く。
クロウ
「もう一歩で終わりじゃねぇか!!」
ユイがレンを見る。
白銀ユイ
「レン、
どうする!?」
レンは空を睨む。
最終観測者。
巨大な白い瞳。
その視線には、
迷いがない。
“この世界を消す”。
ただそれだけ。
レンの視界へ、
新しいログが浮かぶ。
【最終処分】
対象:
UNKNOWN STORY
理由:
“存在維持不可能”
レンは歯を食いしばる。
存在維持不可能。
そんな理由で、
この世界は消されるのか。
ノアが、
小さく呟く。
「やっぱり……」
「私の世界、
間違ってたんだ」
レンが振り返る。
ノアは、
泣きながら笑っていた。
「だから誰も、
最後まで読まなかった」
その瞬間。
レンの胸に、
強い怒りが走った。
「ふざけんな」
世界が、
一瞬静止する。
ノアが目を見開く。
レンは、
彼女を真っ直ぐ見る。
「面白いとか、
つまらないとか」
「そんなので、
存在ごと消されていいわけないだろ」
空気が震える。
白いログが、
レンの周囲へ溢れ出す。
【観測者ゼロ:
感情出力上昇】
最終観測者が、
静かにレンを見る。
『全ての物語は、
選別される』
レンは即答した。
「じゃあ」
「選ばれなかった奴は、
全部間違いなのかよ」
静寂。
観測者は答えない。
レンは、
一歩前へ出る。
「読まれなかった物語にも、
生きてた奴がいる」
「笑ってた奴がいる」
「終わりたくなかった奴がいる」
ノアの瞳から、
涙が零れる。
レンは、
空を睨みながら叫んだ。
「だったら俺は、
そういう世界ごと救う!!」
その瞬間。
レンの右目が、
強く発光した。
白いログが、
空へ撃ち上がる。
【新規権限を確認】
“存在承認”
クロウが目を見開く。
「……は?」
ユイも息を呑む。
レンの周囲へ、
大量の文字列が回転する。
そして。
彼は、
ノアへ向かって手を伸ばした。
「お前の世界は、
ここにある」
白い光。
瞬間。
崩壊していたビル群が、
少しだけ戻る。
灰色だった海へ、
微かな青が混ざる。
空へ、
色が戻り始める。
【UNKNOWN STORY:
存在承認を確認】
崩壊率低下:
98% → 89%
ノアが震える。
「……え」
レンは笑った。
「誰にも読まれなくても」
「消えていい理由にはならない」
その瞬間。
最終観測者が、
初めて“怒り”以外の感情を見せた。
驚き。
理解不能。
『存在承認……?』
レンは、
白いログを纏いながら言った。
「俺が読む」
静寂。
世界が、
その言葉を聞いていた。




