「灰色の海」
波の音がした。
冷たい。
暗い。
沈んでいくみたいな感覚。
神代レン
は、
ゆっくり目を開けた。
灰色の空。
灰色の海。
世界中から、
色だけが抜け落ちたみたいだった。
レンは身体を起こす。
濡れた砂浜。
壊れた標識。
遠くには、
半分沈んだ高層ビル群。
まるで。
“滅びた後の世界”。
「……ここ」
声が掠れる。
すると。
近くで咳き込む声がした。
白銀ユイ
が砂浜へ倒れている。
レンは慌てて駆け寄る。
「ユイ!」
ユイは目を開け、
安心したように息を吐いた。
「……よかった」
「レンいる」
レンは苦笑する。
「それ確認するの最初かよ」
その時。
砂浜へ、
黒い影が落ちた。
クロウが空から落下し、
派手に砂へ突き刺さる。
ドゴォン!!
砂煙。
数秒後。
砂の中から、
クロウ
が顔を出した。
「死ぬかと思った……」
ユイが吹き出す。
レンも少し笑う。
だが。
次の瞬間。
全員の笑みが消えた。
アキがいない。
レンが周囲を見る。
「……アキ?」
返事はない。
灰色の海だけが揺れている。
その時。
空に、
巨大なログが浮かんだ。
【UNKNOWN STORY】
タイトル:
存在しない物語
状態:
崩壊率 93%
クロウが顔をしかめる。
「九十三!?」
「ほぼ終わってんじゃねぇか!」
ユイが不安そうに周囲を見る。
「ここ……
本当に世界なの?」
レンも違和感を覚えていた。
静かすぎる。
人の気配が、
一切ない。
しかも。
ログが不安定だ。
文字が時々、
ノイズみたいに崩れている。
その時。
遠くの海で、
何かが動いた。
巨大な影。
ゆっくり。
こちらへ近づいてくる。
ズ……ン。
海面が揺れる。
灰色の波が、
大きく盛り上がる。
そして。
海から、
“巨人”が現れた。
身長は数十メートル。
身体は黒いノイズでできている。
顔がない。
ただ。
胸元だけに、
白いタイトル文字が浮かんでいた。
“END”
ユイが息を呑む。
クロウが低く呟く。
「なんだよ……
あれ」
すると。
レンの視界へ、
ログが浮かぶ。
【終末体】
説明:
“物語の終わり”そのもの
終わり。
つまり。
この世界は今、
終焉そのものに侵食されている。
終末体が、
ゆっくり腕を上げる。
その動きだけで、
周囲の建物が崩壊した。
ビルが、
文字のように砕けて消えていく。
クロウが剣を抜く。
「チッ……
いきなりラスボス級かよ」
ユイがレンを見る。
「どうする……?」
レンは、
終末体を見上げる。
そして。
胸の奥の違和感に気づく。
あれは敵じゃない。
もっと別の。
“助けを求めてる何か”。
その瞬間。
終末体の胸元から、
小さな声が聞こえた。
泣いている少女の声。
『……こわい』
レンの瞳が揺れる。
あの声だ。
裂け目の向こうで、
聞こえた声。
終末体が、
ゆっくりレンへ手を伸ばす。
世界が震える。
海が割れる。
灰色の空に、
巨大な亀裂が走った。
そして。
レンの視界に、
新しいログが浮かぶ。
【メインクエスト更新】
“存在しない物語”を救え




