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世界ログ:観測者ゼロ  作者: Y.M
第4章

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38/55

「観測不能」

「俺は、

 “都合のいいエンディング”には戻らない」


その言葉が響いた瞬間。


修正者たちのログが、

激しく乱れた。


【ERROR】


【対象の再固定に失敗】


白いノイズが、

空へ弾け飛ぶ。


ヒビ割れた現実世界。


赤く染まる夕空。


その中心で。


神代レン


の周囲だけ、

空間法則が歪み始めていた。


クロウが、

少し笑う。


クロウ


「完全に戻ったな」


レンは息を吐く。


だが。


以前と少し違った。


力は戻っている。


それなのに。


“何かが欠けている”。


修正者の一体が、

レンへ手を向ける。


すると。


レンの視界へ、

新しいログが現れた。


【警告】

観測者ゼロ:


出力低下


原因:


“物語”ではないため


レンが眉をひそめる。


物語ではない。


つまり。


この世界は前と違う。


もう、

完全な“物語空間”じゃない。


だから。


観測者ゼロの力も、

不完全になっている。


ユイが不安そうに言う。


白銀ユイ


「レン、

 顔色悪い……」


レンは笑おうとする。


「平気」


だが。


次の瞬間。


右目から、

白いノイズが漏れた。


「っ……!」


膝が揺れる。


クロウが支えた。


「おい」


レンは歯を食いしばる。


力が安定しない。


まるで。


“存在そのもの”が、

世界と噛み合っていない。


その時。


空の最終観測者が、

静かに声を響かせた。


『観測者ゼロ』


『お前は既に、

 物語から外れている』


レンが空を見る。


巨大な白い瞳。


その視線は、

どこか悲しそうだった。


『なぜ戻った』


レンは答えない。


代わりに。


ユイが前へ出た。


「戻りたかったわけじゃない!」


最終観測者が、

静かにユイを見る。


ユイは叫ぶ。


「でも!」


「忘れたくなかった!」


世界が震える。


その感情に反応して、

空のヒビがさらに広がった。


【白銀ユイ:

読者干渉 残留確認】


クロウが顔をしかめる。


「チッ……

 まだ残ってんのかその権限」


ユイ自身も驚いていた。


周囲へ、

微かな白い光が漏れている。


読者干渉。


物語へ影響する力。


本来、

“終わった”時に消えるはずだったもの。


その瞬間。


修正者たちが、

一斉にユイへ向きを変えた。


【危険度更新】


最優先修正対象:


白銀ユイ


レンの表情が変わる。


「やめろ!!」


修正者の周囲へ、

巨大なログが展開される。


修正内容:


“白銀ユイの完全初期化”


ユイの顔が青ざめる。


完全初期化。


つまり。


レンとの記憶も。


感情も。


全部消される。


レンは、

反射的に前へ出た。


だが。


その瞬間。


身体が止まる。


空間そのものが、

レンを固定していた。


【観測者ゼロを拘束】


レンが目を見開く。


動けない。


ログが凍る。


力が発動しない。


修正者が、

ユイへ手を伸ばす。


ユイが震える。


クロウが飛び込む。


しかし。


別の修正者に弾き飛ばされた。


「がっ……!」


地面へ叩きつけられる。


レンの呼吸が乱れる。


また。


また奪われる。


終わったはずなのに。


守れなかったら、

何の意味もない。


その時。


レンの耳元で、

小さな声がした。


「じゃあ、

 物語に戻れば?」


レンの瞳が揺れる。


その声。


聞き覚えがある。


振り返る。


そこには。


ヒビ割れた空間の上に座る、

白い瞳の少年。


白紙アキ


アキは、

いつものように笑っていた。


「簡単だよ」


「“現実”だから弱くなるなら」


彼は、

空を指差す。


ヒビの向こう。


無限の白いページ。


「もう一回、

 世界を物語にしちゃえばいい」

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