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世界ログ:観測者ゼロ  作者: Y.M
第4章

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「再接続」

【観測再接続を確認】


白い文字が、

空へ一瞬だけ浮かび。


消えた。


夕焼けの街。


行き交う人々。


誰も、

異常に気づいていない。


だが。


神代レン



白銀ユイ


だけは違った。


二人とも、

確かに見た。


“ログ”。


ユイが、

震える声で言う。


「……レン」


「今のって」


レンは即答できなかった。


頭が痛い。


胸の奥がざわつく。


思い出しそうで、

思い出せない。


何か、

絶対に大切なものを。


その時。


空のヒビが、

さらに広がった。


パキッ。


小さな破裂音。


夕焼け空の一部が、

一瞬だけ“白い空間”へ変わる。


ユイが息を呑む。


「あれ……」


レンも見る。


そこには。


何もなかった。


空も。


雲も。


ただ、

真っ白。


その瞬間。


レンの脳裏へ、

知らない記憶が流れ込む。


巨大な図書館。


白いページ。


“終わり”。


「っ……!」


レンが頭を押さえる。


ユイが慌てて支える。


「大丈夫!?」


レンは息を切らしながら、

かすれ声で言った。


「……図書館」


ユイの表情が止まる。


彼女も、

その言葉に覚えがあった。


理由は分からない。


でも。


聞いた瞬間、

涙が出そうになる。


すると。


背後から、

呆れた声がした。


「記憶戻るの早すぎない?」


二人が振り返る。


そこには。


街灯にもたれかかる、

黒コートの男。


赤い瞳。


気だるそうな笑み。


クロウ


レンが目を見開く。


クロウは軽く手を上げた。


「よ」


その瞬間。


レンの頭の奥で、

何かが弾けた。


異世界。


戦闘。


笑い声。


世界崩壊。


全部。


断片的に蘇る。


レンがふらつく。


「……クロウ」


クロウは笑う。


「思い出したか?」


ユイも、

震えていた。


「なんで……」


「なんで私たち、

 忘れてたの……」


クロウは空を見る。


ヒビ割れた夕焼け空。


その向こうで、

白いノイズが滲んでいる。


彼は珍しく、

真面目な声で言った。


「終わったはずだったからだよ」


静寂。


クロウは続ける。


「お前ら、

 “物語じゃない世界”を選んだだろ」


レンの胸が痛む。


確かに。


そんな選択をした気がする。


誰にも読まれない現実。


普通の日常。


それを望んだ。


「でも」


クロウは眉をひそめる。


「世界が、

 完全には切り離せなかった」


ユイが不安そうに言う。


「どういうこと……?」


クロウは舌打ちした。


「お前ら、

 互いを覚えすぎてたんだよ」


レンとユイが止まる。


クロウは続ける。


「普通なら、

 物語じゃなくなった時点で、

 全部白紙になる」


「でもお前ら、

 “忘れたくない”って感情だけ残しやがった」


その瞬間。


レンは思い出す。


最後。


確かに、

ユイの手を握っていた。


“消えないように、

 これからいっぱい思い出作ればいい”


その願い。


それが。


世界を繋ぎ止めてしまった。


空のヒビが、

さらに広がる。


今度は、

誰にでも見えた。


街の人々がざわつき始める。


「空……割れてない?」


「え、なにあれ」


「CG?」


クロウが顔をしかめた。


「チッ」


「もう一般人にも見え始めたか」


その時。


空のヒビの奥で、

“目”が開いた。


巨大な白い瞳。


レンの呼吸が止まる。


知っている。


あれは。


【最終観測者】


しかし。


前と違った。


その瞳には。


明確な“怒り”が宿っていた。


そして。


世界全体へ、

声が響く。


『なぜ戻った』


街が震える。


ガラスが割れる。


空間が軋む。


最終観測者は、

ゆっくりと言った。


『お前たちは、

 終わったはずだ』


その瞬間。


レンの視界に、

新しいログが浮かぶ。


【RE:WORLD LOG 起動】

状況:


“終わった物語”の再起動を確認


判定:


存在矛盾


修正を開始します


レンの背筋に、

冷たいものが走った。


“修正”。


その言葉だけで、

嫌な予感がした。

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