第1306話 アダム不在❺検証(前編)
わたしたちは秘密基地に集まった。
集まったからってこれ以上に情報が増えるわけではないのだけれど。
この胸の焦燥感を。不安を。共有したかったんじゃないかと思う。
「リディア嬢なら何か聞いてないかと思ったけど、その顔を見るに、同じみたいだね」
「ねぇ、実際、陛下にわからないように、双子が生まれたのにそのことを隠すなんてことができるの?」
わたしは着いてそうそう、椅子にも座らないうちにロサに尋ねてしまった。
「子を産むときは、産婆とその手伝いをする者をひとり。陛下も中には入ったりしない。産婆と手伝いの者が結託すればできない事はない」
ロサの話に衝撃を受ける。
「産婆は廃妃が産んだのは王子殿下ふたりと証言している。手伝いのものは……ベテランのメイドが選ばれたから、彼女はすでに亡くなっているんだ」
ダニエルが言葉を足して、王室でも双子というのは本当か調べているのがうかがえる。
不安は色濃くなっていく。
「生まれたとき隠蔽できたとして。影を作ったとき、影たちは陛下と親子ではないと調べたんでしょう?」
それは絶対にするはずだ。
「それはもちろん」
イザークがうなずく。そして続けた。逆説の接続詞で。
「けれど、その検査をした魔法士とモンティス公が手を組んでいたら、事実を改竄することも可能かもしれない」
その言葉に再び打ちのめされる。
まさにそれを知らされた時のような、あの叫びが蘇ってくる。
知の精霊の歓待を受けていたときのこと。
脳を刺激するようなノイズがあった。
あれは過去にあったことだったの?
『ありえない!』
その声はよく知っていた。わたしをいつも助けてくれたアダムのものだ。
『証拠はあるのですか? あるのなら、とっくに……見逃されるはずはない!』
強く言い切っているけれど、動揺は隠しきれていなかった。
アダムがあんなにパニックになるなんて考えられなくて。
精霊の空間とか、聖樹さまの空間とか。異空間にいるとき、過去か未来の映像か、会話が聞こえることがある。わたしにだけ聞こえたり見えたりするもの。だいたいそれを見たり聞いたりしたときは意味がわからず。誰かに話すには不確定すぎて、夢かもしれないと言わないできたけれど。
あれが本当にあったことなら?
アダムとアンドレ殿下は入れ替わってもわからないくらい似ていた。
影の他の人もみんなかなり似ているんだろうと思った。
だから影の他の人に会ったとき、そこまで似てなくて逆に驚いた。
アダムは本当にアンドレ殿下に似ていたんだと。
アダムの賢さとかスケールの違う魔力、スキル。
考えれば考えるほど、双子説が正しいんじゃないかと思えてくる。
そういえばモンティス公がウチに来たという話をしたら、アダムは焦ってた。
何を言いにきたのか知りたがっていた。
兄さまはモンティス公がアダムに接触したのは、ウチにモンティス公が来てからだと言ったけど、アダムへの接触の方が先だったんじゃない?
アダムが悩んでいた時期がある。あれはモンティス公からの接触があったから。
アンドレ殿下の双子と言われる。
アダムなら事実にしろそうでないにしろ検証するだろう。
産婆と手伝いの者を訪ねるだろう。手伝いの者は亡くなったそうだから、産婆だけ。産婆は双子の王子殿下だったと言っている。
影となったとき、物心ついたときには影だったみたいだから、これもかなり前のこと。もちろんどの子も陛下と親子ではない血の鑑定がされたはずだ。当時のその係の人がモンティス公の息がかかった人なら、あり得なくもないし、ご高齢だろうな。
アダムは事実をつかんだのだろうか?
でも同時にそれはアダムにとって重要かどうか?とも思う。
今わかっている事実。
・ユオブリアの次期王位継承者を名乗る者と一派が、ガゴチを制圧した
・ユオブリアが騙りだと声明文を出したところ、亡くなったアンドレ殿下は双子の弟で、現在生きているのが本物のアンドレ殿下。ゆえに次期王位継承者であると発表
・アダムは現在、行方不明
・いなくなる前にモンティス公がアダムに接触をしている
・現在モンティス公及び廃妃も行方不明
そこから導いた推測が
・ガゴチを制圧したのは、次期王位を狙うモンティス公率いる一派で、掲げられた王位継承者のアンドレ殿下はアダムであろうということ
「持ちかけたのはモンティス公だろう」
こんなに時が経ってからなぜ「今」アダムに双子説を持ち出したのか。
それは謀反に巻き込むためだろう。
「今」とは王妃が「廃妃」とされた今。
決まったのはずっと前で、廃妃はすぐにモンティス公が連れ去ったはずだけど。
モンティス公の勢力は今日でお終いと簡単に切れるものではなかった。
もちろん今も慕っている人たちもいるだろうし。
でもそれにしては長い? なんで「今」だったんだろう?
あ。王太子の儀、あれだ。
今までも王太子の有力候補はずっとロサだった。
でもそれが王太子の儀をすることで、本気度がうかがえた。
ウチに来て話をしたときは、廃妃のしたことに打ちひしがれ、去ることを決めた、みたいな感じだったと聞いたけど。
モンティス公は王族の親戚という立場・地位を捨てきれなかった。
アダムを駒にしようと思った。双子が本当か本当ではないかはどちらでも同じ。
そうやってアダムを巻き込んだ。




