第1301話 13番目を探せ⑬森の中の安全地帯
エリンがどうして?
もふさまから降りてそちらに行こうとしたら、足でちゃんと立てなくて、もふさまから落ちた格好になった。
「なぜ急に転がった? この人族は?」
この集落にいた腰蓑が、わたしたちを連れてきた腰蓑に尋ねる。
「わからんが具合が悪いらしい」
いや、そうじゃなくて。
「すみません、妹……連れの声がしたんですけど」
「ほぉー。本当だ我らの言語だ」
「あいつらの連れか」
と上から下まで見られる。
「何があったのだ?」
今度はわたしたちと入ってきた腰蓑が集落の腰蓑に尋ねる。
「森の中に魔力の多い強いものたちがいたから捕らえた」
すると、わたしたちを連れてきてくれた腰蓑がわたしに憐れんだ目を向けた。
「……そうかお前は戦力にならないから、森の外に置いていかれたのか」
ち、違うから。
「まぁ、こんなに弱った弱い者なら縛らなくても平気だろう。
獣人と獣は檻に入れるか?」
言いたい放題だな!
わたしは気持ち悪いのを我慢して、声を張り上げる。
「そちらが何もしなければ、こちらも何もしません!」
背の低い人たちは座り込んだまま言ったわたしをじっと見る。
「……捕まえた奴らを連れてこい」
わたしたちを連れてきた人の方が立場が上なのかも。
「ちょっと縄、解きなさいよ。触らないで!」
騒がしく連れてこられたのはエリンと静かに縛られている兄さま。
「姉さま!」
座り込んだわたしを見て、二人の目が大きくなる。
「姉さまに何したの!?」
「エリン、これは瘴気のせ……」
わたしの言葉が届かなかったのか、エリンと兄さまが同時に縄を切った。
捕まってたんだ。
「もふさま、ノエル、ふたりを止めて」
もふさまが兄さまをぺしゃっと軽く踏みつけて押さえ、ノエルがエリンを水の檻に入れた。エリンは暴れたけど、その拘束は解けないようだ。
あらぬところで諍いが始まるところだった。
「ふたりとも早とちりしないで。これは瘴気のせい。
こちらの方たちがご存知のジョギさまが、わたしたちの探している方かもと連れてきてもらったの」
「私たちは、森の中でいきなり仕掛けられ捕まったんだ。そしてここに連れてこられた」
「兄さまとエリンの魔力量が多いから、捕らえたそうよ」
わたしは頭を押さえながら、腰蓑の人たちを見上げる。
「こちらはわたしの連れです。被害を加えられなければ、こちらからは何もしないことをお約束します」
チラッとエリンと兄さまに目をやれば、エリンは不承不承、兄様はこくんとうなずく。
腰蓑たちは少しだけ話し合い、「いいだろう」と言った。
「この森の夜の顔を知ってると言ったな?」
確かめられて、わたしはうなずく。
「魔力の高いものに襲いかかる傾向がある。このものたちは魔力が高いから、森の中にいたら魔物の総攻撃にあう。そう思って村に連れてきた」
そうだったんだ。
わたしが通訳すると、兄さまとエリンは顔を見合わせている。
もちろんそう言ったみたいだけど、言葉がわからなかったから問答無用で村に連れてきたみたいだ。
「ここも森の中ですが、夜でもここは安全なのですか?」
「ジョギさまがここを安全な地にしてくださったからな。ジョギさまはお前たちが探している方ではないと思うが、夜になれば目を覚まされる。具合の悪いのも治してくださるだろう」
「我らはやることがあるゆえ、お前たちは夜まで好きに過ごすが良い」
わたしたちが何もしないと言ったのは口約束なのに、腰蓑たちはわたしたちに興味がなくなったように散って行った。
エリンが駆け寄ってきて、兄さまにわたしは支えられる。
「大丈夫?」
「テントから出たのに、うっかり聖水石を手にしてなかったの。この村の中も瘴気は少ない。だからもう少ししたら復活できると思う」
エリンと兄さまはほっとした顔になる。
そして村の中に目を走らせる。
「瘴気の森で暮らしている人たちがいたなんて驚きだね」
「魔物が入ってこれないようにできるそのお方ってのが大したものだわ」
「その方が僕たちが探している方かもしれないよね?」
兄さまとエリンがその凄さを口にすると、ノエルが推測したことを伝える。
「そうよね。そんな力を持っているってすごいことだもの」
だから精霊の悠本人なのではと改めて思ったのだ。
「彼らは何者だい?」
聞かれてこっそり兄さまに伝える。
「グレナンの派生みたい。森の中で生き延びていた人たちね」
「この安全な場所があり、その方の守りがあったなら生き延びられたのも納得ね」
エリンは腕を組んでいる。
「兄さまたちはどうして捕まってたの?」
「うん、言葉もわからなかったしね。あそこにいたということは森に住んでいるんだろうと思ったから、どんなふうに過ごしているんだろうって興味があって」
「レオたちは?」
「近くにいるはずだ。私たちふたりで逃げ出せないようなことになったら助けてくれるように言ってある」
そっか。
促されて、テントに彼らがやってきた時のことを話した。
「なるほどね。その方が私たちの探す方と同じなら一番手っ取り早そうだけど」
ほんとそうならめっちゃラッキーだ。




