第1300話 13番目を探せ⑫原住民
もふさまがピクッとする。
『テントで何かあったようだ』
もふさまがすくっとたった。
本当だ。ホコリ虫5号が踊りを踊っている。
知らせてくれてるんだとは思うけど、わたしにはホコリが舞っているように見える。
わたしも起き上がり5号にお礼を言って、もふさまと目を合わせてテントへと飛ぶ。
「ノエル?」
「姉さま。ごめんなさい、囲まれた」
囲まれた?
わたしは覗き窓から外の様子を見た。
え?
ええ?
人だ。浅黒い肌の色。
上半身は裸で、腰蓑みたいのをつけている。
少し涼しいぐらいなのに、その格好でいいの??
格好もだけど、武器が原始的!
木の枝の先を二股にしてそこに磨いた石を入れ込んで紐で巻いている。
ギリの魔力量で言語と、防御までできるかな。
〝夜道の鷹〟をもってしてもバレているみたいだ。
感覚が鋭いのか? それとも見破るスキルがあるとか。
うわー、槍でツンツンやり出した。
「僕が出る」
「言葉がわからないかもしれないから、わたしが出る」
わたしだったら、一応翻訳できるはず。
「なら一緒に行く。それで危なくなったら転移する」
そうだね。でもできるなら友好的にしておきたい。
だって兄さまたちが戻ってきてかちあったら困るから。
ノエルは深呼吸してわたしより先にテントから出た。
わたしが続くと、もふさまもライオンサイズで後ろから来てくれる。
「何か用にゃん?」
ノ、ノエル……、我が弟ながら可愛い! やばい、録画しておきたい。
状況も忘れて、わたしはそう思った。
「なんだ匂いの薄い獣人か? 後ろは白い人族。大きな獣。お前たち何者!?」
グレナンの派生。瘴気の森に住む民。それにグレナン語を話している。
「何者だ? ここで何をしている?」
一番前に出てきた男が声を張り上げる。
顔は成人男性のように〝大人の顔〟をしているけれど、背が低い、みんな。
といっても5年生くらいの身長はあるけどね。
「怪しい者じゃないにゃん。お前たち、何者にゃん?」
ノエルはグレナンの人たちが何を言ったかはわからないだろうけど、大声で言った。
「わたしたちは冒険者。この森に素材を取りにきた」
わたしが一歩前に出てグレナン語て伝えると顔を見合わせている。
「お前たちだけか?」
「仲間が森の中に行っている」
「そうか。昼間はそうでもないが、森の中は夜は危険だ。早々に立ち去るが良い!」
なんだ、注意喚起? ただのいい人?
槍の先を下に向け、森の方へ行こうとする。
ハッとする。
「危険な森にあなたたちは住んでいるの?」
「そうだ」
「この間、この森の夜の顔に驚いた。魔物も強かったし攻撃的だった。
そんなところに住み着いているの?」
彼らはお互いの顔を見合わせている。
「ジョギさまの御心近くにいれば危険はないから、我らはそこに住んでいる」
「じょ、ジョギさまって?」
彼らはわたしをジロジロと見た。
「それを知ってどうする?」
一瞬迷ったけど。
「さっき素材を取りにきたと言ったけど、実はある方たちに頼まれて、ある方を探しにきたの」
「ある方?」
わたしはうなずく。
「お前の探す者ではないだろう。ジョギさまは人ではない」
ここはいうべきか?
「わたしが探しているのも人ではない」
精霊だと続けようとして、視界が霞んだ。
聖水石を慌てて握りしめたけど、くらっとして、倒れそうになったのをノエルともふさまに支えられる。
「姉さま大丈夫?」
『リディア』
「お、おい、どうした?」
「なんだ、お前具合が悪いのか?」
「いいえ、そうじゃないわ」
なぜ昼間はこんなに瘴気が濃いのかな。
「ジョギさまに治してもらうといい。夜になれば起きられるから」
え。
もふさまがわたしを背に乗せる。ノエルも手を貸してくれて、わたしはもふさまの上で伸びているような状態だ。
5号にみんなが帰ってきたら、原住民とジョギさまのところに行った、心配しないでとアオに言ってもらうようにして、ついていく。
昼の森の中は不思議な感じ。
そこここに魔物がいる。でもどの子も穏やかな目をしていて、襲ってくる子は皆無。
ノエルはわたしを乗せたもふさまにぴたりとついて歩いてる。
もふさまは何となく、ノエルは全く言葉がわからないだろうから、わたしが5号に言ったことのみで従ってくれている。
テントの外に出たら、聖水石を手に持ってなきゃダメだったね。
少しマシになったので、乗せてもらうことには変わりないけど、上半身は起き上がり、聖水を飲んだ。だいぶマシになった。
あるところから木の様子が変わってきた。
そこまでは曲がりくねったというか、くねっとした感じの木が多かったんだけど、ある場所から天にまっすぐ伸びていて、枝は出さずに、幹を上へ上へと伸ばしたような木ばかりになっていった。
細めの木が多かったけど、2本、対に太いその木があり、なんとなくこれは〝門〟なのかなと思った。
「帰ったぞ」
男たちが声をかける。
と、わたしたちは槍を持った人たちに囲まれて、先端を向けられていた。
「何を連れてきた!」
怒った声音。
「これは弱い〝人〟と弱いに従う獣人と獣。具合が悪そうだから連れてきた」
よ、弱いって言われた。
槍が下を向く。
「魔力はそこまでないようだが、獣人と獣は違うだろう?」
「弱き人族は我らの言語を話す。大丈夫だ」
ノエルがわたしの服を引っ張った。
ノエルがこそっと耳打ちする。
「エリンが近くにいる」
エリンが近くに?
ということはここは大陸のおへそ部分。そこまで来たってこと?
「ちょっと、これ、ほどきなさいよー。優しく言っているうちにいうこときかないと後悔するわよ?」
ギャンギャン吠えてるのは紛れもない妹、エリンの声だった。




