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【コミック連載中!】プラス的 異世界の過ごし方  作者: kyo
20章 悠かなる調べ

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第1299話 アダム不在❷踏み込まない

「リディー」


 振り返れば黒髪を風に靡かせた兄さまが、ちょっと眉を八の字にして微笑んでいた。


「兄さま……」


「眠れないの?」


 あやふやに笑うしかできなかった。


「ちょっと外の様子を見たかっただけ。すぐ寝るよ。

 兄さまも明日は早くから探索なんだから、眠らないと!」


 自分でも取ってつけたような明るさだとわかっているからか、言葉も滑っているのを感じる。

 兄さまは笑みを貼りつけたまま、月を見上げる。


「リディーとアダムは似ているところがあるね」


「え?」


 わたしのウィッグの毛も風は揺すっていく。


「閉じ込めておかないと、勝手にどこかに行っちゃう」


 兄さまはそう言ってからわたしを直視する。


「アダムはそうでも、わたしは違うと思うんだけど」


「いや、リディーは目を離すといつもとんでもないことに巻き込まれてる」


 うっ。違うとは言い切れない。

 兄さまはわたしが何を考えていたかまでお見通しだ。

 だから言った。


「少し前からアダムが変な気はしてた……」


「悩み事があったとは私も感じた」


「でもアダムってなんでもできて、なんでも解決しちゃうから。そうだとしても悩んだり辛いことあるはずなのに。わたしなんでもっとアダムに寄り添わなかったんだろう? 友達なのに」


「リディー、私も同じだ。悩みを気軽に話してくれるタイプではないけれど、もっと話したら今こうして心配するようなことにはならなかったのかなと思っている」


 本当になぜ……。

 狼のような鳴き声が聞こえた。


「リディー、テントの中に入ろう」


「うん」


 わたしは兄さまとテントへと入る。

 おやすみの挨拶をして、もふさまの隣に横になった。

 目をつむる。


 どうしてわたしはアダムの異変を見逃し続けたんだろう?

 変だと思っていたのに……。

 今までどれだけアダムに助けてもらったかわからない。

 それなのに……。

 誤魔化されるたびに、誤魔化されてた。


 本当に誤魔化されてた?

 本当はわかっていたんじゃない?

 わかっていたなら、なぜ突きとめなかったの?


 アダムの顔が浮かぶ。

 美しい一ミリの隙もない顔はまるで仮面だ。

 何を見ても聞いても揺るがない、完璧なポーカーフェイス。

 頬を引き攣らせた信じられないといった顔。

 笑うアダム。微笑むアダム。珍しい拗ねた顔。

 わたしに手を伸ばし、優しく名を呼ぶ。


ーーリディア嬢


 優しい声音。

 わたしはアダムに何かあったら嫌だ。

 わたしだってアダムを助けたい。

 でも……でも。

 わたしはこのままの関係でいたかった。

 アダムの行動に、アダムの声音に、微笑みに。熱を感じたことはない?

 ……熱を感じたから、気づいちゃいけないと思っていたのと違う?


 なぜ気づいてはいけなかったの?

 気づいたら、この居心地のいい関係ではいられなくなると思ったから……。

 だからわたし、アダムのことは深く考えないようにしていた。

 だから変だと思っても踏み込めなかった。踏み込まなかった。

 その結果……こんなことになってる。


 ペロンと涙が掬われる。

 目を開けると、溜まっていた雫で視界がぼやける。暗い中なのに。

 もふさまだ。もふさまがわたしの頬をぺろぺろと舐めてくれてる。

 もふさまにはわかっちゃうね、いつも。


 アダムが今いないのは、わたしが向き合わなかったから。

 わたしにとっての心地のいい関係でいたいと、はっきりさせてこなかったから。

 踏み込んでいたなら関係は変わっていたかもしれないけど、急にアダムがいなくなることはなかったと思える。

 ……って、アダムが今どこで何しているかわかっていないのに、そう決めつけるのも、それこそ変かもしれない、よね。まだ何もわかってないのだから。

 もふさまにぎゅっと抱きついて、深呼吸をした。



 気がつくと朝だった。

 やはり瘴気は濃くなっている。

 エリンがわたしの目が腫れていると大騒ぎ。

 寝不足と思ったようで、自分たちが出発したら眠ってるように言われ、そうノエルにも指示を出している。


 兄さまは自分でお化粧してしまった。それも上手いから、何も言えなくなる。

 人には会わないと思いながらも、みんな一応変装はしているんだ。

 双子の耳と尻尾も可愛い。

 兄さまとエリン、それからもふもふ軍団を送り出す。


「さ、姉さまはルームで寝ていて!」


 ここにひとりノエルを残すのは不安なのでルームに一緒に行こうと言ったのだけど、何かあったらテイムした虫で連絡を取るからと言って聞かない。

 わたしはもふさまとルームに避難した。


『小童のことが心配なのか?』


 ベッドに横になりもふさまに抱きつくと、もふさまが言った。


「……うん、心配」


『奴は癪に触るが強い。人族とは心配するのが好きな生き物ではあるが、己よりも強いものの心配をなぜするのか未だに不思議だ』


 あはは。心配するのが好きなわけではないと……。でも、心配する必要がなくても心配しちゃうんだから、やっぱり心配することが好きなのかしら?


「腕っぷしが強くても、心の中まではわからないからかな」


『心が強いかわからないということか?』


「うん、まぁそれもあるし。わたしが今反省しているのは……」


『反省しているのは?』


「自分の都合で踏み込まなかったことかな」


 言葉にすると、少しだけ心の中を整理できた気がした。

 

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― 新着の感想 ―
好きな子を殴ってでも置いていった男が言うか〜と思ったけどフランツは勝手に決めてたけど一応言ってから出発してたか、事後報告や突き放しだったりしたが(笑) おぉ?ケイトに突っ込まれる前からアダムの感情を…
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