第1298話 13番目を探せ⑪神留
本当に知りたいのは、悠が瘴気に変わったのは事実かどうかということだ。
人という器で生まれた人族。その器は安定しているものである。
人族は魔力と瘴気を持って生まれていると言われてる。さらに、神属性と聖属性があるのではとも推測されている。
わたしは瘴気を放出させるために〝玉〟を研究した。
そこで魔石という器に、聖力と神力と魔力と瘴気を同等に入れると、安定してスキルを入れることもできる器=玉になると結論が出た。それで人の器も、実は同じなのではないかと思ってきた。
でも、瘴気が精霊・悠の変わった姿でその時から瘴気が生まれたとするなら、人族が瘴気を生まれ持つのはあり得ないことになる。
けれどそれは悠を探し出し聞くしかないのだろう。
精霊たち兄妹のわかっていることは、地上に降りた後、悠に何かがあり、瘴気を纏った状態となり別れたことだけ。
それ以上のことがわからないのは仕方ない。
ただ第一大陸自体が悠かどうか判断するのに、どんなものでも、どんなに小さいことでもいいから情報は持っておきたい。
『そうだな、我ら経験したことを話そう。知っていることもあるだろうが』
そんな前置きから光の精霊・レイヨンの話は始まった。
『我らの父は聖王、母は愛の女神・アフロディーネ。
聖力と神力を持ち合わせた我らは新しく〝精霊〟と名付けられ、聖と神と大地の架け橋として大地に降りることを許された』
問題を起こし、ただひとりの女神となったのは愛の女神さまだったんだ……。
『神が大地に降りられないよう、天界と大地の間には〝神留〟の結界が張ってある。創造神さまは我らが大地に降りるとき結界を抜けられるよう、神力を抜き取った』
え? それまた大雑把な方法。
一瞬、結界を解けばいいのでは?と思ったけれど、そのとき他の箱庭の神で大地に降りるものが出てくるかもしれないからか、と思い直した。
あれ、でも箱庭の神さまも創造神に楯突く神とかいるのかしら?
レイヨンさまが続ける。
『一時的に神力はなくなるが女神からの祝福を受けることで、大地に降りれば神力がみなぎると』
なんてことだ……。続く内容が想像でき、わたしの頬は引き攣っていると思う。
『12人の選ばれた女神は我らを祝福したが、13番目の悠にだけは祝福がなかった。母・アフロディーネが祝福の時間にこなかったのだ。結界が解かれるのは数秒のみ。時間となり我らは地上へと降り立った。
我らは気づいてなかった。神力をなくした状態がどういうものなのかを。
悠も同様にわかってなかったのだろう。
皆、力を使いたくてうずうずした。
聖王と女神の子として誇れる存在でありたかった。
聖王と女神の子だから大地に降りることを許された。聖なる者たち、神たちから我らは期待を背負っていた。それに応えたかった。
だから力を使った。
我らは知らなかった。我らの力は聖力と神力を融合したものだとは……』
精霊の力は聖力と神力を融合させたもの……。
そのうちの神力がなかったから……悠は〝精霊〟の本来の力を使えなかった。
『悠は力が発露しないようだった。皆悠に声をかけたが、悠は暗い目をして、そのうち真っ黒な何かを纏い〝ここ〟から出て行った。我らは追いかけたが見失った。
それから何度も探しに出かけ。我らの一部を外に出して探すようにしているが、時だけが過ぎた。それが我の経験したことだ。糸口になるか?』
「手がかりとなるかはまだわかりませんが、いくつか収穫はありました。ありがとうございます」
空間の光の割合が多くなる。
「またお尋ねしたいことがあるときは伺っても?」
『かまわぬ』
空間がパァッと光り、気づくとサブハウスの居間だった。
「姉さますごい! 精霊さまと対等に話していたわ!」
「創造神の言葉なんて、すごいものを聞いたね!」
双子は手を取り合い喜んでいる。
「リディー、収穫はあったって言ってたけど?」
「……収穫になるかはわからないけど。
箱庭の神さまのおわすところと地上には〝神留〟という結界があること。
その結界を張ったのも、解除できるのもおそらく創造神さまだけであること。
精霊の力は聖力と神力の融合されたものであること。
悠に祝福するのは愛の女神さまだったってこと。
何がどう作用するかはわからないけど、これらは知ってよかったことだと思う」
「姉さま、あったまいいーー!」
「やっぱり、姉さまってすごーい!」
左右からエリンとノエルが抱きついてくる。
二人を抱きしめながら心の中で呟く。
頭も良くないし、ちっともすごくない。
たとえ精霊のことで何かをつかめたとしても。
身近な大切な人のサインを見落としていたら、それは大馬鹿者なだけだ。
あの日だけじゃない。少し前からアダムの様子が何か変だとは何回も思っていたのに。
「リディー、第一大陸へはどうする?」
「夜から行こうか。夜の様子がこの前と同じか確かめたい。
そして次の日の朝から、兄さまたちでもう一つの地点に行ってみてもらえる?」
「よし、そうしよう」
夕方までそれぞれ思い思いに過ごし、第一大陸へと飛んだ。
夜になるにつれて瘴気は少なくなっていく。それは間違いないようだ。
探索組は明日早くから動くことになるので、早くから眠ってもらう。
わたしはといえば、まだ眠る気にならず、テントから出て少しだけと自分に言い訳して月を見上げた。




