第207話 大会13日目
甲子園が開幕してから13日目。いよいよ3回戦に突入し、各ブロックの決勝戦が行われる。
今日の第1試合、多久大光陵対統光学園の試合は延長戦に入り、延長12回裏に芳田さんが力尽きて統光学園が1対0で勝利した。統光学園は、友理さんがマウンドを降りてからも新開さんや薮内さんが必死になって繋いだね。
ギリギリ、タイブレークにはならなかった。夏の甲子園は延長13回からタイブレークなので、それまでには試合が決まったという感じだ。そして第1試合が長引いたので第2試合になる湘東学園対大阪桐正の試合は甲子園で1番暑い時間帯になる。試合開始時刻は、12時15分。
湘東学園 スターティングメンバー
1番 三塁手 木南聖
2番 捕手 梅村詩野
3番 左翼手 伊藤真凡
4番 中堅手 実松奏音
5番 右翼手 江渕智賀
6番 一塁手 本城友樹
7番 ニ塁手 鳥本奈織
8番 遊撃手 鳥本美織
9番 投手 西野優紀
メンバーは1回戦の時から変わらず、先発の優紀ちゃんは調子が良さそう。この試合でも未完成ナックルは使っていくみたいだけど、通用するかは運次第なのが怖い。
ジャンケンの結果、湘東学園は先攻に。1回表、大阪桐正のマウンドに登るのはエースの藤波さんだ。
「……聖ちゃんでも、厳しいか」
「バットに当てるのが、精一杯みたいね。
……もし前の2人が打てなくても私が絶対にカノンに回すから、準備しときなさいよ」
先頭バッターの聖ちゃんは、カットボールに詰まってサードゴロ。続く詩野ちゃんは三振したため、ツーアウトランナー無しで真凡ちゃんが打席に入る。
そしてバットに当てる天才は何球か藤波さんのストレートや変化球にバットを当ててファールにした後、甘く入った直球を捉えたはず、だった。
バキッという音が聞こえて来そうなほど、真凡ちゃんの持つバットは綺麗に折れて、軽く上がっただけになった打球は藤波さんが冷静に捕る。ピッチャーフライになって、スリーアウト。三者凡退で、こちらの攻撃は終わる。
「最後の直球、ど真ん中だったのに……」
「139キロの直球だったけど、最後の一球だけは威力が違ったように見えるよ。
……そう言えば、バットの代えは何本持って来てる?」
「3本持って来て、1本折れたわね。練習用を含めたら4本あるけど、もしかしたら全部折られるかもしれないわ」
最後、真凡ちゃんは捉えたと思ったはず。それがピッチャーフライということは、藤波さんのストレートは浮き上がっているようにも見えたんじゃないかな。
1回裏になって、守備に就くと今度は優紀ちゃんが投球練習を始める。最速122キロのストレートは、藤波さんと比べるとかなり遅い。
大阪桐正は藤波さん以外の投手陣も130キロオーバーが多いし、逆に打ち辛そうにも思えるけど、大阪桐正側も2回戦の日から中3日もあれば120キロ前半のボールに目を慣らすことぐらいしてくるかな。そう思っていると、1番に早速ヒットを打たれている。
ノーアウトランナー1塁となって、バッターは2番の東畑さん。この人以外、大阪桐正のベンチ入りメンバーは中学時代に4番だった人だね。だからと言って、東畑さんの打力が弱いわけではない。
初球にランナーが盗塁を仕掛けるものの、詩野ちゃんが好送球で刺殺。……今のは確実に優紀ちゃんのストレートより、詩野ちゃんの送球の方が確実に速かったね?
ワンナウトとなり、東畑さんを未完成ナックルでゴロで打ち取ってツーアウト。ここで迎えるバッターは、キャッチャーの森友さん。1つ上の世代の野手で唯一、ドラ1候補と言って良い選手だね。
森友さんの後ろに、根岸さんと大村さんが並ぶ大阪桐正の打線はクリーンアップが1番怖い。何とかここで切りたいところだけど、さっきからファールの打球が全部鋭いから森友さんもミート力やパワーはかなり高い。
「任せた!」
「オーライ!」
2-2から6球目、左中間に高く上がったフライは私が追い付いてスリーアウト。飛んで捕球した直後、フェンスに思いっきりぶつかって倒れるものの、上手く受け身は取れたので痛くはない。
「ナイスキャッチ。……身体、大丈夫?」
「大丈夫だよ。ノーアウトランナー無しなら、勝負してくれるかな?」
「もう攻撃のことを考えてるのね……。向こうはホームラン打たれても大火傷じゃ無いし、勝負するんじゃない?」
真凡ちゃんが手を貸してくれたけど、1人で立ち上がる。さて。藤波さんと勝負の時間だ。
ノーアウトランナー無しで、向こうは優紀ちゃんを打ち崩せそうなピッチャーだと思っている。それなら、最初から敬遠ということは無さそうだ。期待して打席に立つと、向こうのバッテリーは勝負をしてくれる模様。代表合宿の時とかも本気の勝負はしていなかったけど、今回はお互いに本気だ。
初球、ストライクが来るのか確認のために見送ると、低めのアウトコースいっぱいに140キロのストレートを決めて来る。……本当に、女子にしては速い。
2球目。インコースに来た130キロ近いフォークボールを捉えて、レフトスタンドまで運ぶ。私の先制アーチで、湘東学園は大阪桐正を相手に1点のリードを確保することに成功した。




