FランクとSランクとギルド長
リキシアは、街で買って来た午後のおやつを丁度食べ終わり、ギルドの部屋でノクスと一緒にのんびりしていた。
その時、部屋の扉がノックされる。
「は~い!」
返事をしながら扉の方を向くと、エレナが立って居た。
「あれ、エレナさん! あの本、凄く面白かったです!」
「そうですか。それなら、良かったです」
エレナはぱっと顔を明るくするとそう答えた。
「それで、もしかして何か用事ですか?」
「実は、、、」
エレナはどこか困ったような戸惑ったような顔をする。
「リキシアさんにお会いしたいと言う人が居まして、、、」
「私に会いたい人、、、?」
「はい。 ギルド長のエリアスがリキシアさんにお会いしたいと。 、、、どうされますか?」
エレナも詳しい話は聞いていないのだろう。
ただ、無理強いするような気は全く無いようだ。会いたくないと言えば本当にその選択を尊重してくれるのだろう。
それにしても、ギルド長が自分に会いたいなど驚きだ。特に何もやらかした覚えは無いのだけれど、、、。
それともやはり、魔蜘蛛を何体も取り逃がしたのがまずかったのだろうか。
「、、、えっと。 はい、分かりました。 大人しく会いに行きます、、、」
リキシアのその言葉と怒られるのを待つ子供のようなその様子に、エレナは少し首をかしげる。
「え? あぁ、多分そう言うのじゃないですよ。 なんだかニコニコしてましたし」
「、、、ニコニコ?」
ギルド長がニコニコしながら自分に会いたがっているなどなんとも面白い話だ。
のんびり療養生活にも少し飽きてきたところだし面白そうなイベントなら大歓迎というものだけれど。
「なんだか面白そうですね。 分かりました、会いに行きます! ほら、ノクスも行こ?」
立ち上がったリキシアに寄り添うようにノクスが近づく。
エレナは、そんな様子を見て優しげに微笑んでいた。
「では、ご案内しますね」
エレナに案内されたギルドの奥の方にある部屋。
エレナが扉をノックして「リキシアさんをお連れしました」と言うと、中から楽し気で優し気な声が返って来た。
「それではリキシアさん、私はここで失礼いたしますね。 楽しい時間になると良いですね」
そう言って微笑むとエレナはその場を去ってカウンターの方へと戻って行った。
「、、、失礼します」
部屋の扉を開けると、まず目に飛び込んできたのは、白髪と長い白髭を携えたいかにも穏やかな雰囲気の老人だった。
そして少し視線を動かすと、老人の向かいのソファーに座った綺麗な赤髪を後ろで束ねた一人の女性。
「、、、あ。 今朝私の事見てた綺麗な人」
「おう、嬢ちゃん。 ははっ、綺麗な人とは嬉しいじゃねぇか。 ほら、突っ立ってないで座れ座れ。 私の隣来いよ」
赤髪の女性は豪快に笑いながら手招きをしている。
リキシアが言われた通りその女性の隣に腰を下ろすと、ノクスもその脇の床に座って辺りを見回す。
「よく来てくれた、リキシア嬢。 儂が、このギルドの支部長のエリアスじゃ。なに、堅くなる必要はないぞ? ほんの少し、この老人とのおしゃべりに付き合って欲しいだけじゃ」
「そうだそうだ、気楽にしていいんだぜ? それはそうと、私も名乗っておかないとな。私はSランク冒険者のアウレアだ。これからは、綺麗な人じゃなくてアウレアって呼んでくれ」
「えっと、、、私はFランク冒険者のリキシアです。よろしくお願いします」
「はっ! Fランクだって? バカ言え、あの鉱石竜をぶっ倒したくせに」
その言葉にハッとアウレアの方を向くと、彼女はこっちを向いて面白そうに笑っている。
「、、、鉱石竜。 え、でも私は」
あの日自分は確かに、途中からただ倒れていただけだった。
そして最後は、ノクスが背中に乗せてくれて、、、
そう言えばじゃあ、あの時鉱石竜は、、、
「、、、もしかして、ノクス?」
ハッとノクスの方を振り返ると、ノクスは顔を上げて傾げている。
「まぁ、確かにトドメを刺したのはそこの狼だな。ただ、直接現場を見に行ったから知ってるぜ? 嬢ちゃんの魔法があの竜の鱗を確かに貫いたってな」
「え?あ、確かに魔法を使ったのは私ですよ?」
「リキシア嬢。もし良ければ、君の魔法を見せてくれないか? 実に、興味がある」
それまでただ微笑みを浮かべて見ていたエリアスが口を開いた。
「私の魔法、、、ですか? それくらい、もちろん良いですよ。見て面白いものかは分からないですけど、、、」
「ほっほっほ、それは良かった。このギルドの地下に昇格試験に使う模擬戦用施設がある。そこなら遠慮する必要もない。早速皆で向かうとしよう」
そう言うとエリアスはゆっくりと腰を上げて壁際に立てかけてあった杖を手に取るとのんびりと歩き出す。
「ほら、行こうぜ嬢ちゃん」
アウレアもリキシアに笑いかけると席を立って軽い足取りでもう扉の方に歩き出している。
リキシアは座ってその様子を見ていたが、二人が部屋を出たのを見ると、自分も立ち上がると二人の背中を追って歩き出した。




