私とあなたの『我儘』
今回は初登場の人物の視点です。
<人物紹介>
アウレア:数少ない王国のSランク冒険者の一人です。実はお酒が大好きらしい、、、
エリアス:冒険者ギルドミレア支部のギルドマスターです。引退済みの優秀な魔導士ですが、さすがに体は老いには勝てないよう。最近は少し腰の調子が悪いみたいです、、、
—リキシアと鉱石竜の事件の次の日の朝、、、
「よっ!エリアスの爺さん。久しぶりだな」
ギルド長の執務室の扉を開け、一人の女性が入ってくる
燃えるような赤髪が、朝の陽の光を受けて暖かく光っている
「おぉ、アウレア。よく来てくれた」
「ほれ、座れ座れ。菓子も用意してあるぞ?」
応接用のソファーに座る老人が、朝日のように柔らかな笑みを浮かべる。
「でも、久しぶりにミレアに寄った途端に爺さんに呼び出されるとは思わなかったよ」
「それで?どうしたんだ」
「まさか、私に会いたくて呼んだのか?それだったら嬉しいね」
アウレアは、そんな冗談を言いながら向かいのソファーに腰掛けた。
「ははは。お前さんに会いたかったのも事実だが、儂もそこまで暇じゃないぞ?」
「高ランクの奴に頼みたい急ぎの仕事があっての?そしたら、丁度よくお前さんがこの街に帰ってきてたというわけじゃよ」
「へぇ、急ぎの仕事ね?」
「一体なんだ?もしかして、竜狩りの依頼でも飛び込んできたのか?」
「わざわざ私に頼むんだから、面白い依頼じゃないと承知しないぞ?」
アウレアは、用意された茶菓子を食べながら、面白そうに笑ってみせた。
「ほっほっほ。面白いかどうかは、正直儂にも分からん」
「お主に頼みたいのは、東の森の廃坑に出た魔界の亀裂の対処じゃよ」
「魔界の亀裂?別にそんなの日常茶飯事じゃねーか」
「それくらい私に頼まなくたって、適当に依頼に出すか騎士団に任せればいいだろ」
アウレアは眉を顰めてそう言った。
実際、この世界で魔界の亀裂の災害など珍しくもなんともない。
瘴気に汚染された魔獣や、向こうから入って来た魔族の討伐など、ギルドでもよくある話だ。
「それがの、そう言うわけにもいかんのじゃ」
「できるだけ急ぎで、確実に対処せねばならん」
「騎士団にも任せず、我々ギルドの手でじゃ」
エリアスは少し困ったような顔をしてそう言った。
「へぇ、なんか面倒ごとでもあんのか?」
「魔界の亀裂の被害に巻き込まれたんじゃよ。Fランクの、新人の娘が」
「それも、ギルドが出した依頼の不備が原因でじゃ」
「新人が巻き込まれた?しかも依頼の不備で?」
アウレアは先ほどまでの笑みを収め、少し身を乗り出す。
「ああ、そうじゃ」
「廃坑の魔蜘蛛の討伐の依頼に行った少女が、瘴気に汚染された鉱石竜に襲われたんじゃよ」
「ギルドも亀裂のことを把握できておらんでな。何も知らない新人を送り出してしまったんじゃ」
アウレアは、どこか沈んだ表情のエリアスを見て、深く息を吐く。
「はぁ、、、」
「新人の少女が汚染された鉱石竜に、ね」
「せっかく冒険者になって、これからだったろうに、、、」
太陽の様に明るかった彼女の顔が深く曇る。
「ギルドが責任を持って仇討ちって訳か」
「それで、その嬢ちゃんの体は?まだ、廃坑の中なのか?」
「いや、今はギルドで預かっておる、、、」
「全身骨折だらけで、あちこち肉を爪で抉られていたそうじゃ、、、」
「そうか、、、」
そう言いながら彼女は、静かに天井を見上げた。
「今日も朝早くから、街に散歩に出ているそうじゃよ、、、」
「そうか、散歩に、、、」
「、、、ん?」
「まさか、、、」
アウレアは今度は勢いよく体を前に乗り出す。
「ああ、そうじゃよ。その嬢ちゃんは、生きて帰って来たんじゃ」
「、、、鉱石竜に襲われて?」
「普通の鉱石竜ならともかく。汚染されてるなら見逃してくれるはずもねぇだろ、、、」
「その通りじゃ。じゃが、事実じゃ」
「その娘は契約術師でな。連れの影狼が、その娘を背負って帰って来たんじゃよ」
「じゃがその娘は、途中から倒れていたせいで、詳しい事までは分かっていないらしいのじゃよ」
「待て待て、、、。Fランクの新人が影狼を連れてるってか?」
「ほっほっほ。どうじゃ?面白い依頼じゃろ?」
エリアスが、にっこりと深い笑みを浮かべる。
「はっ!確かにな。それで、現場で何があったかも含めて調査して欲しいってわけかよ」
「物分かりが良くて助かるのぉ」
「分かったよ。亀裂の様子見に、現場の調査。引き受けてやるよ」
「東の森の廃坑だな?早速行ってくるよ。久しぶりに、面白い予感がする」
アウレアはソファーから立ち上がると、執務室の扉を開けると手を振って去って行った。
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散歩から帰って来たリキシアは、ノクスを連れてギルドの扉を開いて中に入る。
「ねぇ、ノクス。楽しかったね」
そう言いながらノクスの方を見ると、ノクスもリキシアに顔を擦り寄せて応えた。
昨日から、ノクスがいつもよりもよく近づいてくる気がする。
「ふふ。ノクスの毛、やっぱふわふわになったよね?」
リキシアは、少し立ち止まってしゃがむとノクスを優しく撫でる。
ノクスのふわふわの毛は、全部を優しく包み込んでくれるようだ。
その時、一瞬背後から視線を感じた。
ノクスも何かを感じたのか、頭を傾げている。
気になって咄嗟に振り返った視界の端に、彼女の隣を通り過ぎる綺麗な赤色が映り込んだ。
「あの人、私のこと見てた?、、、誰だろ?」
「ま、いっか。行こ、ノクス」
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部屋に戻ったリキシアは、買って来た朝食のパンを食べながらノクスとのんびりしている。
ノクスも、お皿に乗せた魔猪の肉を美味しそうに頬張っていた。
「、、、ねぇ、ノクス。なんであの時、逃げなかったの?」
ノクスがその言葉に、肉を食べるのをやめて顔を上げる。
「分かってるよ。ノクスは前よりも強くなって、私の事助けてくれたんだよね」
「でも、もしかしたら死んじゃうかもしれなかったんだよ?」
「まったく、ノクスは我儘なんだから」
ノクスはゆっくりとリキシアに近づくと、その鼻を椅子に座るリキシアに擦り付ける。
「、、、ノクス」
さっきはあんなことを聞いたが、分かっている。
ノクスが、どんな想いを抱いているのか。
細かいことまでは分からないけれど、魂で繋がる彼の魂の声が分からないはずなどないのだ。
「そうだよね、ごめんね」
あの時、確かに自分の『心』の声も聞こえていた。「一人になりたくない」、「怖い」と。
でもそれは、自分にとっては邪魔な雑音に過ぎない。
『魂』の声はただ、全てを犠牲にしてでも彼を確実に守ることを望んでいたから、、、。
自分にとっては、その声が全てだから。
それが、自分の在り方だから。
「、、、でも、ありがとね」
ノクスのもふもふの毛に頭を埋めると優しく抱きしめる。
「私、、、我儘だね」
「だから、、、」
「あなたも、我儘でいていいんだよ」
ノクスの事をより一層強く抱きしめる。
そこに彼が居ることを確かめるように、いや、自分がここに居ることを確かめるように。
朝の温かな日差しが、そんな彼女たちの姿を見守っていた。
さて、どうだったでしょうか!!
今回はなんと二人の新しい人物が出て来ましたね。
Sランクの冒険者にギルドマスター、、、
彼らとリキシアがどう関わっていくのかも、是非お楽しみに。
〈一言〉
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