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異世界で秘密結社を始めることになりました ~俺が去った瞬間に国の結界が消滅し、聖都が即座に詰んだけど知らん~  作者: 田島久護


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第三話 オタクによる技伝授!

「……もう朝か」


 光の眩しさに意識が引かれ目を開けると、森の中は浄化されたように澄んだ明かりと気で満ちていた。


周りを見渡すと狼の獣人が少し離れたところでで寝ている。


昨日は悪いことしたな……狼の獣人ってだけで怪人に見えて、斜め四十五度方向へ両拳を上げ、少し頭を下げて返事をするのだ! とか言えといったのは。


オタクの悪い癖だ。


反省しつつ再度焚火を起こし朝食の準備を始めた。


昨夜倒した虎はもう腐りかけているので、後で土に埋めることにし食材を探しに移動する。


「グオオオオ!」


 馬車が通る様な道のど真ん中に熊がおり、こちらと目が合うと立ち上がって吠えた後で突っ込んできた。


小さくて弱いと思ったのか、あっという間にこちらの間合いに入ってきたので、眉間に右ストレートを叩きこんだ。


ゴキン! という音と共に動きが止まり、倒れこむ前に顎へ膝蹴りをかます。


熊は白目を剥いて力なく前のめりに倒れ動かなくなった。


変身しなくてもここまで戦えるなら、目立つことなく生きていけそうだとホッとする。


「お、おお……まさか熊まで倒してしまうとは」


 熊の遺体をどうするか思案していると、後ろから声がするので振り返ると狼の獣人がいた。


「おはよう。よく眠れたか? 怪我の具合はどうだ? ちょっと待っててくれよ今朝飯の用意するからな」


 スーパーでは色々な部門を経験させられ、精肉部門にもいたがさすがに解体はしたことがない。


この世界に来る前は鮮魚コーナーにいたので、その要領でやってみるか。


「あなたは本当に人間なのか?」


 手のみを変化させ魚を捌く要領で進め、食べられそうなモモや肩の部分をスライスし枝にさし、焚火の近くに刺していたところ、作業を見ていた狼の獣人は驚愕した顔でそういった。


「さぁ焼けてきたぞ、俺は果物を探してくるから先に食べてくれ」

「す、すみません……」


 運良く少し奥に行ったところに水分の多い天然の果物があり、それを取って戻ると自分も肉を食べ始める。


熊は大きくそれなりの量が取れたので、狼の獣人も腹が一杯になり満足して食事を終えた。


皮はどこかで売るとして、それ以外の物は穴を掘って埋める。


完全に消火して焚火を解体し、熊の毛皮と果物を数個手に持って移動を開始した。


人間形態では姫たちのほうが目立っていたので、俺が街に入ったところで騒がれたりはしないだろう。


このまままっすぐ進むと魔族討伐の旅で通らなかった町があるはずだ。


とりあえずそこで熊の毛皮を売って資金を作ろう。


「あ、あの……」


 これからどうするか考えながら歩いていたところ、狼の獣人がすまなそうに後ろから声をかけてくる。


そういえば一族を追放されたとか言っていたな。


ここはひとつ、体を動かして気分転換するために、キックボクシングを教えてみよう。


「良かったら腹ごなしに少し体を動かそう。少しは気がまぎれるぞ? 俺が教えるように動いてくれ」


 少し開けた場所に通りかかったので、そう提案すると直立不動になり大きく何度もうなずいた。


先ずこちらが動いたように動いてもらい、それをチェックしてアドバイスする。


さすが獣人だけあって身のこなしが素晴らしく、あっさりと覚え力の伝達もしっかりできていた。


ならばここはひとつ、怪人のような技を身に着けさせよう。


そういえば転生戦隊イセカイジャー第25話、ジャジャー将軍必殺の爪! でやっていた、右腕をひいて力をためて貯め終えたら腕を上げ、全力で振り下ろすって技があったな。


早速覚えていた技を披露してみたところ、やりすぎて森を破壊してしまった。


「どう? 出来そう?」

「い、いえ、一瞬のことで何も見えず、突風が起こったと思ったら木々が倒れ、岩が壊れていました……」


「お世辞を言い過ぎだよ君ぃ! ま、まぁまぁやってみたまえ!」

「お世辞ではないのですが……やってみます!」


 こちらがやったような動きをしたところ、木が真っ二つに割れたのを見て驚く。


特撮物の技は教えたが、あくまでそれは動きだけだ。


離れた距離にある木を割く、という元ネタと同じような威力が出るとは……。


そこはさすが異世界、さすが獣人ということなのだろうか。


「最初でこんなに出来るなんてさすがだ。使い続けていればもっとすごくなるだろう。将来有望だな君は」

「あ、あのすみません、自分はキミという名前ではないのですが」


「おおすまない。君……えーと」

「な、名前はフェンリです親分!」


「親分はちょっとアレな人たちみたいになるから、どうせ呼ぶなら首領にしてほしい。……そういえば自己紹介してなかったな。俺の名前はコージ・イチハラだ! よろしくなフェンリ」

「よろしくお願いします! コージ・イチハラ・シュリョウ!」


「あ、そういう時はコージ首領で良いよ? 首領っていうのはあれね? ドンてことね? ボスっていうか」


「わかりました! コージ首領!」


 自分で説明してて俺が上だって言ってるのが恥ずかしくなり、途中で声が小さくなるも、フェンリは目を輝かせて直立不動で返事をする。


性格の良さそうな獣人だなと思い、騙しているような気分になっていたたまれなくなって、今のところ予定が決まってないことや、とりあえず住処を探そうと思っていると話しておく。


「嫌なら行きたいところに行ってくれてもいいぞ?」

「とんでもないです! 私はコージ首領の一の部下として地獄の果てまでお供します! まずは首領のための住処を見つけ、我が組織の拡大に努めます!」


「あ、ああそう? 頑張っていこう……」

「はっ!」


 離れるどころかフェンリは、斜め四十五度方向へ両拳を上げ少し頭を下げ、組織拡大に努めると興奮気味に語る。


昨日の断られたポーズを目を輝かせながらやっているのを見ると、さすがに間違っているとも言いづらい。


本人が納得しているならいいかと思いつつ、一路街を目指して歩き始めた。


第三話をお読みいただきありがとうございます。

第四話は8時過ぎに投稿を予定しています。

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