Page6 ———Not broken?———
パソコンの画面を開いたまま、手を止める。
入力途中の文章が残っている。
———成立はしている。
そこまで打って、カーソルが点滅している。
少し考えて、続きを打つ。
———問題はない。
指が止まる。
それでいいのかは、まだ分からない。
「ふふ」
小さく笑う。
椅子にもたれ、画面を眺める。
ここまでは、予想通り。
拒否はない。
戸惑いも少ない。
提示すれば、その通りに動く。
———“ちゃんとやる”。
ああいうタイプは、もう少し引っかかってくれると思っていた。
どこで止まるとか、違和感を見せるとか。
でも、それがない。
正確に言えば
———止まらないように動いている。
「やりやすいよねえ…」
小さく呟く。
画面には、短い文章が並んでいる。
・拒否なし
・応答良好
・ズレなし
少しだけ考えて、1行足す。
・感情 不明瞭
そこで手が止まる。
不明瞭。
曖昧。
空白。
「……まあ、そうなるか」
納得したように息を吐く。
机に肘をつき、顎を乗せる。
楽しいかどうか。
そう聞いた時の、あの間。
考えているというより、
———探していた。
答えを。
どこかにあるはずのものを。
でも、見つからない。
だから、とりあえず出す。
それっぽい答えを。
「ちゃんとできる、か」
小さく繰り返す。
あれは評価じゃない。
確認だ。
“できているかどうか”の。
カーソルがまた点滅する。
続きを打つ。
———成立はしているが、内的要因は未確認。
少し考えて、
———外的要求への適応が主。
そこまで打って、手を止める。
「……それでいいの?」
誰に向けたわけでもなく、呟く。
視線を画面から外す。
窓の外は、夕方に差し掛かっていた。
人の流れは変わらない。
当たり前のように動いている。
「崩れないのかな」
ぽつりと漏れる。
普通なら、どこかで止まる。
違和感に気づくか、嫌になるか。
それがない方が、不自然だ。
「……それとも」
少しだけ考える。
視線を落とす。
「最初から、壊れてる?」
小さく笑う。
冗談のようで、冗談ではない。
「それはそれで面白いけど」
ぽつりと付け足す。
声は軽い。
けれど、どこかだけ本音が混じっている。
画面に戻る。
最後に1行、付け足す。
———継続観察。
保存する。
それだけのこと。
「……まあ、いいか」
椅子から立ち上がる。
特に理由はない。
ただ、続けるだけだ。
どこで崩れるのか。
あるいは最後まで崩れないのか。
まだ分からない。
それでいいと思っている。
———今は、まだ。
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