Extra Page ———I looked happy.———
集合場所のコンビニ前に着いた時、すでに白いレンタカーが停まっていた。
「早」
高瀬が運転席の窓を開ける。
「何分前に来てんだよ」
「十分くらい」
「律儀すぎるだろ」
呆れたように笑う。
その横で、助手席の早川が小さく会釈した。
「おはよう」
「おはよう」
「人数確認だけしとこ。あと西野待ち」
「絶対遅れると思ってた」
「今向かってるって」
その時点で嫌な予感しかしない。
案の定、五分後。
「ごめーーーーーん!!!」
遠くから西野が走ってきた。
「暑い!!死ぬ!!!」
「うるさ」
「高瀬くん冷たくない?!」
「朝から元気すぎるんだよ」
三浦が後ろから静かに笑う。
「まあまあ。まだ一日始まってすらないし」
少し遅れて、白石もやってきた。
「……お待たせしました」
「いや全然。時間通りだし」
高瀬がそう言ってエンジンをかける。
「じゃ、行きますか」
レンタカーがゆっくり動き出す。
座席は自然と決まった。
運転席に高瀬。
助手席に早川。
二列目に西野と三浦。
一番後ろに、自分と白石。
「海だーーーー!!!」
発進して数秒で西野が騒ぎ始める。
「まだ市内だけど」
「気分が大事なの!」
「近所の小学生か?」
「ひどっ!」
車内に笑い声が広がる。
窓の外を流れる景色を眺めながら、その空気をぼんやり聞いていた。
騒がしい。
でも、不快ではない。
「なんか曲流そ!」
「西野セレクト怖いんだけど」
「失礼だなあ?!」
結局、適当に夏っぽいプレイリストが流れ始める。
西野が勝手に歌い、
高瀬がうるさいと言い、
三浦が時々ハモり、
早川が呆れ、
白石は静かに窓の外を見ている。
いつもの空気だった。
それを見ながら、ふと思う。
こういう時間を、
普通は楽しいと言うのだろうか。
「……どうしたの」
隣から小さな声がした。
白石だった。
「いや、別に」
「考え事してる顔です」
よく言われる。
「そんな分かりやすい?」
「はい」
即答だった。
白石はそれ以上追及しない。
ただ、それだけ言ってまた窓の外へ視線を戻した。
海に着く頃には、西野のテンションが完全に壊れていた。
「海ーーーーーー!!!」
「元気だなあ」
三浦が少し笑う。
「西野、ガソリンいらなそう」
「人を燃費悪い生き物みたいに言わないで?!」
着替えて、海へ出る。
日差しが強い。
砂浜は熱く、
波の音がずっと響いている。
「はい集合ーーー!!」
西野が突然仕切り始める。
「せっかくなので青春っぽいことします!」
「また始まった」
「写真撮る!」
半ば強引に並ばされる。
「もっと寄って!」
「近い」
「青春に距離感とかないの!」
意味が分からない。
西野がスマホを構える。
「はい、笑ってーー!」
反射的に口元が少し緩む。
シャッター音。
「よし完璧!!」
満足そうな声だった。
その後も、
海に入って、
コンビニでアイスを買って、
適当に話して、
くだらないことで笑って。
特別なことは何もない。
でも時間は思っていたより早く過ぎていった。
「なんかさ」
パラソルの下で、西野がぽつりと言う。
「普通に青春してるよね、今」
「青春の定義が雑すぎる」
高瀬が笑う。
「海来て写真撮って騒いでたら青春なの!」
「まあ間違ってはないかも」
三浦が頷く。
その会話を聞きながら、ぼんやり海を見る。
嫌ではない。
むしろ、落ち着く。
騒がしいのに、不思議と静かだった。
「……楽しそうには見えますよ」
隣に白石が座る。
「そう見える?」
「はい」
白石は海を見たまま続ける。
「少なくとも、“ちゃんとしてる”感じではないです」
一瞬だけ、言葉が止まる。
ちゃんとしている。
その言葉は何度も聞いてきた。
でも今の自分は、少し違って見えるらしい。
「……そっか」
それだけ返す。
帰り道。
夕方の車内は少し静かだった。
西野は疲れたのか寝ている。
高瀬は前を向いたまま運転し、
三浦はぼんやり外を眺め、
早川も静かだった。
スマホが震える。
西野から写真が送られてきた。
『今日めっちゃ青春してる笑』
何気なく開く。
そこには、みんなと並んで笑っている自分が映っていた。
思っていたより、普通に笑っている。
しばらくその写真を見る。
これを楽しいと言うのかは、まだ分からない。
でも。
少なくとも写真の中の僕は、
少しだけ楽しそうに見えた。
Extra Page読んでいただきありがとうございます!
10話区切りで番外編みたいなのしようかなと思ってます!笑
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