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071.機巧技師と必殺の一撃

 放たれた超電磁砲(レールガン)

 それを認識したのは、超加速した砲弾がカリブンクルスに直撃したその瞬間だった。

 もはや、目で追う事すらできない。

 音を置き去りにするほどの速度で放たれた砲弾は、その軌跡に紫電を迸らせながら、着弾点を中心に土煙を巻き上げた。


「こ、これは凄い!! 必殺の超電磁砲が、カリブンクルスに直撃したぁ!!」

「き、機体は……!! 搭乗者は無事なの……!!?」


 ゼフィリア先生の慌てる声が響き渡り、会場も、ざわざわとし始める。

 一瞬、僕もサクラ君の死が胸をよぎった。

 しかし、ふと、熱い何かが、僕の頬を撫でた。

 それはエルの魔力。彼女の身体から迸る魔力が、これまで以上に高まっているのだ。


「エル……?」

「大丈夫……!!」


 その言葉で、僕は再び土煙の中心へと目を向ける。

 そして、次の瞬間。


『うぉおおおおおおおおおおおおっ!!!』


 サクラ君が、カリブンクルスが、土煙の中から飛び出した。


『バカな!?』

『超電磁砲を受けて、無事!?』

『いったいどんな小細工を……』


 小細工など一切ない。

 単純な力と力。

 超電磁砲の殺人的な破壊力に、僕らのカリブンクルスは、打ち勝ったのだ。


「さあ……」

「サクラ君……」

『いっけぇえええええ!!!』


 僕とエルの声が重なると同時に、サクラ君もまた、吠える。


『うぉおおおおおっ!! 炎熱竜ノドラゴニックバーンホーン!!!』


 肘を突き出した姿勢で加速したカリブンクルスは、必殺の一撃を終え、死に体のバレスティアの頭部を見事に貫いていた。




「はは……負けた……。僕が? えっ、嘘……」


 何も考えられなかった。

 貧乏人たちが作った、チャチな機巧人形に負けた?

 僕達のバレスティアは、最高級品だ。

 惜しげもなくミスリルとわが社のスタッフを投入し、作り上げたこれ以上ないくらい贅沢な機巧人形。

 今日は、ミスリルバレットだって、普段以上に用意したし、隠し玉の超電磁砲(レールガン)まで使った。

 その上で、なお、あの貧乏人共は、バレスティアの上を行ったというのか……。


「はぁ、はぁ……負けましたね」

「コメット……」


 超電磁砲を使った事で、かなり魔力を消耗して様子のコメットが、青白い顔をしながらもそう言った。


「完全な敗北です。これだけ資金と会社の人材を投入して、なお負けるなんて」

「…………何がいけなかった?」

「ひたむきさ……じゃないですかね」


 コメットは、ふぅと息を吐きながら、膝を伸ばす。


「彼らは、勝つために自分たちでやれることを全部やって来たのでしょう。聞けば、あの十三迷宮にまで潜ったそうですし」

「バカバカしい!! 超電磁砲に飛び込んだのだってそうだ。アイツらはリスクを何もわかっていない」

「たぶんそれ違うと思いますよ。リスクをわかっていて、それでも飛び込めるくらい、彼らはこの機巧決闘に賭けてるんですよ」


 そう言いながら、モニターに映る彼らの姿を眺めるコメット。

 そこには、誇らしく腕を掲げる奴らの機巧人形の姿と共に、心から嬉しそうな笑顔を浮かべるあの機巧技師と魔導士の女の姿映っていた。

 僕はきっと、例え勝っていたとしても、あいつらのようには喜べなかった気がする。

 それが、僕とあの貧乏人共の差。

 呆然と立ち尽くす僕の背を、コメットはポンポンと叩いた。


「今の気持ちを忘れなければ、きっとまたチャンスは来ますよ」

「…………ああ、僕は、忘れない。絶対に」


 初めて感じるこの感情。

 この気持ちだけは、忘れるわけにはいかない。

 ボロボロになったバレスティアの銀色の装甲を眺めながら、僕は、いつしかグッと拳を握りしめていた。




「おめでとう!! ビス君!!」

「あっ、ニッパー先輩!!」


 司令塔から控室へと戻る通路の途中、僕がすれ違ったのは、センチュリーズの3人だった。


「凄い戦いだった!! 胸が熱くなったよ!!」

「あの鼻持ちならない金持ち野郎を完膚無きまでにやっつけてくれたからね。あたいもスッとしたよ」

「いや、正直結構ギリギリの戦いでした」


 結果として、こちらは大きな損害もなく勝利という形にはなったが、一歩間違えば敗北していた勝負であったのは間違いない。

 ミスリルバレットは、本当に脅威だったし、最後に見せた超電磁砲の威力も絶大だった。

 勝てたのは、カリブンクルスの性能以上に、サクラ君とエルのお互いを信頼し合う力だったと、僕は考えていた。

 あの時、発揮した炎の力は、これまでで最も激しかった。

 試合の最中でも、エルの魔導演算能力はさらなる成長を遂げているようだった。


「こりゃあ、俺達も頑張らないとなぁ」

「ニッパー先輩……。僕らも、先輩たちと戦えることを願っています!!」

「ありがとう!! 精一杯頑張って来るよ!!」


 ニッパー先輩たちは、これから2回戦の試合として、ゴードリラーズと戦うことになる。

 飄々としつつも、熱い想いを感じる後姿を見送りつつ、僕は、ニッパー先輩の勝利を願ったのだった。

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