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070.機巧技師と超電磁砲

 第13迷宮30層。

 激闘の末に手に入れた炎熱竜の角は、魔素だけではなく、周囲の熱を吸収して、力を増す性質がある。

 エルが生じさせたカリブンクルスを包む全ての炎のエネルギーは、炎熱竜の角へと集約され、洗練された究極の一撃を作り出す。

 それこそが、炎熱竜ノ角ドラゴニックバーンホーン

 搭乗者、魔導士、そして、機巧人形そのもの。

 全ての性質の利点を最大限に活かすために僕が考え出した最強の必殺技。

 そして、その一撃は、最高級の魔導金属ミスリルで作られたバレスティアの装甲さえも、易々と貫いた。


『そ、そんなバカな……』


 ラチェットの驚愕の表情が、会場に備え付けられた巨大モニターの表示される。

 驚いたのは、ラチェットだけじゃない。

 イシルディンの他の2人はもちろん、会場中の観客達が驚いた顔をしている。

 そして、次の瞬間、それは大歓声へと変わった。


「貫いた!! カリブンクルス、なんとミスリル製のバレスティアの装甲を貫いたぁ!!」

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』


 耳をつんざかんばかりの歓声の中、右肩から先を失ったバレスティアが地面へと叩きつけられた。

 少し離れた場所にカリブンクルスも着地する。


「やったぁ!!」

『ああ、やっと本領を発揮できたな』


 未だに赤く光を放つ角を構えながら、カリブンクルスはゆっくりと振り返る。

 右腕と共にリボルバーを失ったバレスティアは、全身をぎこちなく震わせながらも、なんとか立ち上がった。


『嘘だ!! 僕のバレスティアが、貧乏人如きに……!!』

『坊ちゃん、落ち着け……!! まだ……負けたわけじゃねぇ!!』

『そうです。私達には、まだ』

『あ、ああっ、そうだった……』


 一瞬、発狂しかけていたラチェットが、怒りを含ませながらも、口の端をグニャっとゆがめた。


『また、僕に恥をかかせてくれたな……。だが、それも、もう終わりだ』


 その言葉と同時に、バレスティアの背面に取り付けられていた砲塔が、90度回転し、左肩にガッチリと接続される。


『それが、お前達の切り札、というわけか』

『そうだ。これこそ、我がイシルディンの最後にして最強の武装。その名も……』


 グッと、溜めると、ラチェットは拳を握りしめながら高々と言い放つ。


超電磁砲(レールガン)だ!!』

「超電磁砲だって……!?」


 その名を聞いて、僕は驚いた。


「な、なんだか、驚いているようですが、ゼフィリア先生。超電磁砲とはいったい……?」

「私も詳しくは知りませんが、昔少しだけ聞いたことがあります。雷属性の魔法を使って、磁場を形成し、その勢いを使って砲弾を発射する武装……だったかと」

「な、何を言っているのかさっぱりわかりませんが、と、とにかく凄い武器だそうです!!」


 いや、凄いなんてもんじゃない。

 超電磁砲(レールガン)、それは、ゼフィリア先生の言う通り、電磁気力を使って、超高速で砲弾を発射する武装だ。

 自分も姉から聞いて、その存在自体は知っていたが、それはあくまで、そういうものが作れる"かもしれない"という話。

 実用化には、様々な課題があり、実際に武器として使用しているところを見るのは、これが初めてだった。


「ほ、本当に超電磁砲なのか……?」

『疑っているようだが、事実だ。不可能だと思われた超電磁砲、わが社はミスリルを使うことで、その実用化まで漕ぎ着けたのだ』

『最も一発限りの博打武器ですが』

『バカ!! コメット!! なんで言うんだ!!』


 ミスリルを使ってさえも、一発限りしか撃てない武装。

 つまり、その一撃の攻撃力は、これまでのミスリルバレットとは比較にならないということ。


『俺が言うのもなんだが、こいつの威力は半端じゃねぇ。直撃すれば、コクピットさえ貫いちまう可能性もある』


 常にどこか緩い表情をしていたバルサミナが、真剣な面持ちで言う。 


『だから、棄権しろ、とでも言うのか?』 

『いや、そうは言わねぇ。だが、できるだけ大きく避けろ。ましてや、真っ向から迎撃しようなんて思うなよ』

『忠告感謝する……だが』


 サクラ君は一切合切動じずに言った。


『断る!!』

『そうかい……じゃあ、もう知らね。忠告はしたからな!!』


 バルサミナが、砲口をカリブンクルスへと向ける。

 コメットが魔素を送り、バレスティアの全身から、これまで以上の紫電が迸った。


『サクラ君、本当に……』

『俺は、お前が作ったこの機巧人形とエルの魔法の力を信じている』


 一切臆することなく、サクラ君は、カリブンクルスと共に、その砲口を睨みつけた。


『エル!!』

「うん!!」


 エルの魔導演算によって大量の魔素が、炎へと変わる。

 そして、その炎は再び、肘から生えた炎熱竜の角へと集約された。

 

『ふはははっ!! 後悔するなよ、貧乏人ども!!』

『うぉおおおおおおおおおおっ!!』


 カリブンクルスが、背面のラジエータープレートから炎を散らしながら、突撃する。

 そして、大気さえ焼くような轟音と共に、紫電を帯びた巨弾がカリブンクルスへと襲い掛かったのだった。

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