5.違和感
大量に購入したグッズを抱え、ホテルのロビーに入る。買いすぎた。いや買いすぎたこと自体に問題があるわけではない。このグッズたちは宝物だ。でも…
「やばい…お金が…」
そう。お金がないのだ。調子に乗って計算せずに欲しいものを手に取ったせいで…
旅行のお土産はおろか、明日の食費もない。なんで全員で食べるんじゃなくて自由に飲食店でも入って食べてね!ってシステムなんだよ!!…一応学校からお金はもらっているけれど、それも使ってしまった…バカすぎる。…もう餓死するしかないのか…?……しょうがない。お金借りるか……
『マジでごめん。お金使いすぎて食費すらもなくて…お金貸してくれませんか…?』
父親にメッセージを送る。うちのお父さんは即レスだから多分すぐに返信は来るだろう…
エレベーターに乗り、自分の部屋を探す。なんと一人部屋らしい…しかも、部屋移動OKなんだとか。太っ腹すぎないか…?…まあ僕は誰かが来る予定も行く予定もないけど。悲しくなってきた。
「はぁ…もういいや、寝よ…」
長旅だったこともあり、少し移動しただけでも結構疲れた。本当はもっと青春らしいことをしたかったけれど、諦めて寝よう…
「おーい日彩?起きてるー?」
大きめの声で呼びかけても、返事はない。
あーもう、この人ほんと朝が弱いんだから…もう9時なのに!そろそろ出かけないと時間が…!
「ちょっと!約束したでしょーー!!」
ドアを叩いてみても、起きる気配がない。もうこうなったら…
私はスマホを取り出し、音楽をかける。この曲は前に日彩におすすめされたやつだ。お気に入りのゲームの曲らしい。寝てる時、いつもこれをかけたら即目を覚ます。
音楽を流してから数秒後、部屋の中からわずかに物音が聞こえた。それからすぐに、部屋の鍵が開いた。
「やっと起きた…もう、約束は守ってよね!」
「はぁ…お前か、いきなり知ってるメロディーが流れてきたから何かと思って出てきたのに…」
そう言って日彩はドアを再び閉めようとする。
「ちょっと!約束したでしょ?今日は一緒に回る、って!!」
ドアノブを掴もうと伸ばした日彩の腕を掴む。この人、やっぱり忘れてる…
「………あ」
日彩の表情が少しずつ申し訳なさそうになる。
「….ごめん」
「まぁこうなるだろうって思ってたよ。反省する気があるなら早く準備して!」
5分後。
「準備早っ!」
「お前のために急いでやったんだよ」
急いだ…というか、着替えと洗顔しかしてないから早いに決まっている。
「何それ!?待たせてたのはそっちのくせに!」
やばい。図星すぎて何も言えない。
「…黙らないでよ!せめて謝って欲しいんだけど?」
「はいはいごめん」
「ちょっとムカつくけどいいよ、許してあげる」
「どうも」
やっぱりこいつといるとシンプルに疲れる。いちいちテンションが高いんだよ…遅れたのは全部僕が悪いけど…
「で、結局どこ行くんだよ?僕何も聞いてないんだけど」
そう言えば珍しく父親からの返信が来ない。だから今日は食事もお金もゼロだ。終わった。
「ふっふーん、今日はね…神社に行きまーすっ!」
「神社か…うん、なんと言うか…定番だな」
「まあまあ、どこの神社も違う良さがあるでしょ?おみくじ引きたかったんだよね、せっかくこんな珍しいところに来たんだし、大吉引けちゃうかも?」
ここまで来て神社か…という気持ちもあるけれど、透羽の言っていることも間違ってはない。でも…どこに行くにしても、これだけは伝えておかないといけない。
「あ、言っとくけど今日僕お金ないから」
「…え?…なんでよ?」
「昨日で全部使った」
「…………えぇ……その大きい袋、何入ってるのか気になってたけど、細かいのが大量に入ってる、ってこと…?」
「そうだ」
「…食事代くらいなら出してあげる」
「まじか!?おま…透羽様最高ですありがとうございます…!」
本当にありがとう、透羽……首の皮一枚繋がった…
「これで貸し1だからね、何かあったらちゃんと返してよ?」
「もちろんですなんでもやります」
「ふっふーん、感謝してよね!…てゆーか私以外に頼れる人いないの?友達…いやなんでもない、家族とかさ」
絶対今友達いないって遠回しに言われた。事実だけど!!
「返信来ないんだよ…こんな時に限って…」
「え、日彩も?うちの家族も返信ないんだよねー、全く…娘が異世界にいるんだよ!?ちょっとは心配してくれたっていいと思うんだけど…」
「そうなのか、まあ忙しいんだろ…今普通に仕事してる時間だろうし」
こんな時ぐらい早く返してほしい、って言うのは分かるし僕も思ってはいるけど…家族も忙しいんだろう。
「んー、それもそっか!じゃ、切り替えて神社行こーっ!」
その日、神社ではおみくじ、参拝、お守りの購入の三つを終わらせると、飽き性の透羽は満足したようだった…その後、最寄りのビル全てに入ってショッピングとか……お金もないのに一日中買い物に付き合わされる僕の気持ちも考えて欲しい。
それにしても…
家族からの返信がない。僕と透羽だけならまだしも、透羽の友達も返信が来ないそうだ。
何があったんだ…?偶然にしては出来すぎている。
「なあ、ここまで返信がないのは流石におかしくないか…?」
「うーん、それもそうだよね、クラスの子達もみんな来てないって言ってるし…」
「…今日、事情を知ってそうな人に聞いてみないか?」
「…?あ、付き添いで来てくれた政府の人か…たしかにいいかもね、少なくとも私達よりは色々知ってると思うし」
ここまでの大人数が「家族から返信がない」と言っているんだ。…嫌な予感がする。
「行こう」
「うん!」
読んでいただきありがとうございました。
週末に不定期で投稿しております。
私の作品で少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。




