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4.事件

電話を切ったあと、すぐに路地裏に入り、現実世界へ移動する。魔法を使ったことを表すように、一瞬、周囲に光が満ちる。光が消えたときには、私はもう既に"異世界"から消えていた。


都心部が見渡せる城のバルコニーに降り立つと、そこには背を向けた仲間…軍の最高役職に就く人物が立っていた。暁大河…私の同僚だ。拳を握りしめ、呼吸が乱れている。その姿からは、一目で異常事態が起きているということが伝わってくる。

「…大変そうなところ悪いんだけど、何があったのか説明してくれる?」

「…ん…あぁ、彌か…来てくれてありがとう」

声をかけると、少し間を空けてから大河が振り返る。

常に優しく微笑んでいる大河が珍しく硬い表情をしている。笑顔に見せようともしていないのか、少し威圧感がある。

「そりゃああんなに緊迫した声で電話されたら来るって。それより…只事じゃないんでしょ?その顔。ここに居るのが大河だけなのも気になるし」

異常事態なら、一人でこんなところに突っ立っている暇なんてないはず…呆然としてしまうほどの出来事があったんだろう、…まぁその割には電話の声はかなり焦ってるように聞こえたけど。

「…はは、それもそうだな…伝えないわけにはいかないもんな……端的に言うと……一瞬にして、殆どの国民が倒れたんだ」

「…!倒れた、か…流石に偶然じゃないね」

それを聞いた瞬間、一瞬だけ目を見開いてしまう。

生きているのか、それとも……考えたくないな。

表情にはできるだけ出さないようにしているけれど、内心かなり焦っているし、驚いている。

「詳しいことは他のメンバーに調べてもらってるよ、オレは魔法に関しては役に立てないからな」

大河は魔法が全く使えない。こんなことが起こったんだ、何もできないのも辛いだろう。その一方、私はここの組織で一番魔法が使える。それなら、答えは一つしかない。

「…なるほどね。じゃあ提案があるんだけどさ、仕事代わってくれない?私が今回の事件の調査するからさ」





最寄りのネカフェに入り、受付をして指定された椅子に座る。

「あぁ…PC最高すぎるぅぅ〜〜」

思わず気持ち悪い声が漏れてしまう。数時間ぶりのパソコンなのだ、仕方ない。まだ何も触っていないのに、液晶の画面を見つめただけで幸せだ…

この席を使えるのは3時間。その3時間を無駄にしないために、見つめているだけでは勿体ない。

PCがある幸せに浸るのも程々にして、僕は早速ゲームを起動し、家の安い低性能PCではまともにプレイできないFPSゲームをすることにした。

bot撃ちをして軽く調整をしていると、自分の下手さを実感する。家ではプレイできない分、この手のゲームの上級者には歯が立たない。ただ_僕の強みは"適応能力"なのだ。二次元しか効かないけど…。三次元にもその能力が欲しかった。

僕は生まれてから様々なゲームに触れてきた。FPS、音ゲー、弾幕ゲー…数えだしたらキリがないほど。そのどれもを僕は時間をかけずにそこそこ上手くなった。"そこそこ"止まりではあるけれど、始めて数時間で中級者になれる。それが僕の強みだと、たくさんのゲームをしてきてわかった。

ゲームにおいてモチベ管理は超重要だからな…仮に自意識過剰だったとしても、そう考えないと続けられない。気持ちを切り替えて、僕はオンラインの海に潜った。






「はぁ…疲れた…」

座っているだけではあるが、画面をずっと見つめていると案外疲れるものだ。無能な味方にも出くわしたし…今思い返してもあの動きは流石にない。基礎からやり直してほしい。

名残惜しさを感じながら料金を支払いネカフェを出ると、空が少し暗くなっていた。

「…この後どうしようかな」

チェックインの時間まではまだ絶妙に時間がある。観光地は明日回るだろうし…折角だし、一人じゃないと絶対に行けない場所にでも行ってくるか。

そう思い歩き続けること約20分。電車の中で軽く調べていた巨大な建物に辿り着いた。

「はぁ……凄すぎる……見れただけで幸せだ…」

この建物は、二次オタなら絶対に憧れるであろうグッズショップだ。最上階まで全てグッズで溢れている。最高すぎて逆に辛い。一生ここに住みたい。

引き寄せられるように入口を通り、空調の効いた涼しい部屋へ入る。

そこはもう天国だった。同じような店には何度も行っているが、ここは今まで行った店より何倍も大きい。それにここに来ている人もみんなオタクだ。見ただけでオタク感が伝わってくる。ここには僕の趣味を否定するやつなんていない…!あああ…幸せだあああああ!!!……まあ、厄介オタクはいるけど…

どこから見ようか…!ここに置いてあるグッズの原作は八割履修している。正直どこから見ても楽しいけれど…とりあえずソシャゲコーナーに向かうことにした。

ゲーム作品のグッズがまとめて置いてあるフロアに着くと、僕がやり込んでいる音ゲーのグッズを探す。この作品、音ゲー面だけじゃなくてストーリーもかなり作り込んであって大好きなんだよな…感動できるストーリーもかなり多いし、何よりキャラクターの一人一人が魅力的で、世界観に引き込まれる。このゲームのグッズが僕が持っているグッズでは1番多い。痛バも作った。でもこの作品…グッズの発売ペースが早すぎてお金が一瞬で溶けていく。常に金欠だ…

「ま、まあ今日はせっかくこんな都会に来たんだし…ちょっとぐらいなら…いいよな…」

よし。今日は欲しいもの我慢せずに買おう。旅行だし!!大丈夫だ。今日はチートデーなんだ。他者から見たら365日チートデーかもしれないけど…



その後、すべてのフロアを回り終えた時には財布も電子マネーも賽銭レベルしか残っていなかった……

読んでいただきありがとうございました。

不定期で週末に投稿しております。

私の作品で少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

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