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ハズレ聖女してたけど、そんなに言うなら魔王になってやるよ  作者: ちゃっぷ
第2章 魔王サイコー!

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第6話 この世界のことをお勉強!

「魔王陛下、どうかなさいましたか?」


 エルフさんが、心配そうにわたしの顔を覗き込んでくる。


 うっ……イケメンのドアップは破壊力があるな……!


 というか、今まで聖女様・聖女様って呼ばれてて、今度は魔王陛下・魔王陛下って呼ばれ続けるのは嫌だな……。


「あ、あの……改めて、助けていただきありがとうございました。わたしの名前は小林理沙って言います。どうか気軽に名前で呼んでもらえないでしょうか?」

「人間どもからお救いできたことは、私としても嬉しく思っておりますので、どうかお気になさらず。しかし……魔王陛下をお名前でお呼びするのは……」


 エルフさんは少しだけ困ったような、どう返事をするべきか悩んでいるような表情をする。


 うーん……エルフさんとしては、魔王ってすごく尊敬している存在みたいだし、名前で呼んでほしいっていうのは少しわがままだっただろうか。


 でもこのまま魔王陛下って呼ばれ続けたら、自分の名前を忘れてしまうかもしれないよ。


 それだけは回避したい。


「いいんじゃにゃーい? 魔王……っと、リサちゃん本人からの頼みなんだし」


 そう言って、獣人さんが救いの手を差し伸べてくれる。


 り、リサちゃん……なんだか子供の頃に戻ったみたいだな。


 あ、今、わたし幼女だったわ。


「……そうだな。かしこまりました。では、リサ様とお呼びさせていただきます」

「ありがとうございます! あと、よければお二人のお名前も教えていただけないでしょうか?」


 ずっとエルフさん、獣人さんと(心の中でだけだけど)呼ぶわけにはいかないもんね。


 そう思い、気軽に尋ねただけなのだけれど、エルフさんはガーンという効果音が聞こえてきそうなくらい、驚愕の表情をしていた。


 ど、どうしたんだ?


 不思議に思いながら見ていると、エルフさんは最初に出会った時と同じ様にすっと膝まずいた。


「私としたことが……名乗るのが遅れてしまい、申し訳ございません。私はアラハティラ・ウールハブと申します」

「あ、あらはでぃ……」

「どうぞ、アランとお呼びください」

「アランさん。ありがとうございます」


 幼女の口では思うように発音できずに困っていたら、愛称を教えてもらえた。


 アランさんなら、呼びやすそうだ。


 次に、かったるそうにしていた獣人さんも、アランさんにちらりと視線を向けられて、『へいへい』と言わんばかりに跪く。


「俺の名前はハーリヤと申します。これからよろしくね、リサちゃん」

「ハーリヤさん。よろしくお願いします」


 跪いた状態のまま、ニッと笑顔を向けてくれた。


 ハーリヤさんの笑顔は、なんだか可愛らしいというか、ゆるふわっとした安心感のあるイケメンだな。


 っと、そんなほわほわしたことを考えてばかりもいられない。


 まずは自分の状況を把握しなくちゃね。


「アランさん、ハーリヤさん。わたしは教会に監禁されていて、この世界のことを全く知りません。どうかわたしにこの世界のことを、どうしてわたしが魔王なのか教えていただけないでしょうか?」

「リサ様の御心のままに」


 わたしの無知な質問に、アランさんが答えてくれる。


「……その前に、まずは人間界でお疲れの身体を労りましょう」


 アランさんはそう言うと、どこからともなくティーセットを出し、コポコポとティーポットからティーカップへと良い香りのする液体を注いでいく。


 おぉ、なんだか執事みたいでかっこいい……。


 そして「どうぞ」と魔法でふよふよと浮かぶティーカップが、良い香りとともにこちらへと近づいてきたかと思うと、さらにホカホカのクッキーがのったお皿まで近づいてきた。


「……!?」

「お茶請けにお召し上がりください」


 お、お菓子なんて……この世界に来てから初めて見た。


 いや、それを言ったら紅茶も初めてか。


 恐る恐る手を伸ばし、ティーカップを手にとって紅茶をこくりと一口いただく。


「……!」


 ふんわりと香る優しい紅茶の香りに、はちみつのような甘みが口いっぱいに広がって、そしてそれを飲み込めば、身体の内側から全身が温まっていくような感覚がする。


 驚きのまま、クッキーにも手を伸ばし、一口かじる。


「……!!?」


 サクサクの食感なのにぱさつくことはなく、バター・卵・ミルクなどの凝縮されている旨味が、口の中で爆発している。


「……お口にあいませんでしたか?」


 おそらく百面相しているわたしの様子を見て、アランさんが不安そうな表情をして尋ねてくる。


「い、いえ! そんな! まさか! その……久しぶりの美味しい飲食物に、思わず言葉を失っていました。すごく美味しいです」


 わたしがそう言うと、アランさんは口元にかすかに笑みは浮かべているものの、目元はなんとも悲しげで、切なげな表情をなさっている。


 不思議に思っていると、ハーリヤさんがわたしの頭をぽんぽんっと撫でてくれた。


「これからは、うまいもんいっぱい飲み食いしようにゃー」

「い、いっぱい!? 適量で大丈夫です!」

「ぷっ……反応するところ、そこー?」


 ハーリヤさんがたまらずといった様子で吹き出していたけれど、何かおかしなことを言っただろうか?


 日本育ちの独身OLとして、あまり過剰な食事は良くないと《《嫌》》っというほど学んだから、口にしただけなのだけれど。


「……それでは、今後は美味しいものを適量食べていきましょうね」

「それがいいにゃー」

「はい! そうしましょう!」


 はてなマークを浮かべるわたしに対して、ハーリヤさんとアランさんがそう言って、元気に返事をすると、二人とも笑っていた。


 むむ……なぜ笑われているのだろうか……。


 ――と、そんなやり取りをしながら、紅茶とクッキーを美味しくいただきながら、改めてこの世界のことについて説明してもらったことを要約すると。


 この世界には人間以外にも、魔力を持った魔物と呼ばれる動物型の生物と、亜人と呼ばれるエルフ・吸血鬼・人魚・獣人・オーガ・ドワーフなどの種族がいると教えてもらった。


 そしてアランさんはエルフ、ハーリヤさんは獣人だと。


 ただ人間は亜人と魔物を区別することはせず、一緒くたに魔物と呼んでいるらしい。


 人間至上主義なのだろう。


 人間の住む国はアナニア、魔物の森と呼ばれている魔王と魔物が住むここはグラーバ、アナニアの北の方にある亜人の国はタシティーラと呼ぶことも教えてもらった。


 タシティーラの中では亜人たちが各種族で街を作っており、それぞれにまた名称があるそうだが、それはまた追々ということに。


 た、助かった……。


 人間と魔物・亜人の戦いは人間側の攻撃から急に始まったらしい。


 どうやら増え続ける国民の住まう土地と食料を求めて、一方的に侵略しようとしているとのこと。


 まさにあの自分勝手な奴らが考えそうなことだと思った。


 グラーバとアナニアの境界線上には先代魔王が作ったゴーレムがいて、その子たちが主に人間の侵略を防いでいるらしく、他の魔物たちは森で平和に暮らしているらしい。


 亜人たちはタシティーラとアナニアの国境に、種族ごとに戦闘兵を募って戦っているとのこと。


 そして、どちらも人間側の大敗らしい。


 まぁ、あれだけ痛みや傷に弱い奴らが、自分たちより強い存在と戦争なんてして、勝てるわけがないよな。


 これがこの世界のことについて。


 わたしが魔王になった経緯に関しては、先代魔王が数十年前に人間に恋をして人間となったため、魔王の席は長らく空いていたとのこと。


 ジェイド様を蘇生させるために放ったわたしのフルパワーの魔力を感じ、この方こそ次なる魔王陛下だと確信した……と、アランさんにそれはそれは瞳を輝かせて語られた。


「回復魔法しか使えないハズレ聖女ですよ?」

「ハズレ? とんでもございません。おそらく魔法適性が回復魔法というだけで、魔力量は誰よりも膨大でいらっしゃいますよ」

「魔王になるためには、色々な魔法が使えなきゃダメとか条件はないんですか?」

「ございません」


 きっぱりと言い切られた……。


「と、とりあえず状況は分かりました……。説明していただいて、ありがとうございます」


 一気に色々なことを教えてもらってぐるぐるとする頭を一旦落ち着かせて、感謝を伝える。


 アランさんは「お気になさらず」と美しい所作で胸に手を当てて腰を折り、ハーリヤさんはと言えば、話の途中で飽きたらしく、床に転がってお昼寝をしていた。

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