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ハズレ聖女してたけど、そんなに言うなら魔王になってやるよ  作者: ちゃっぷ
第3章 はじめてのグラーバ観光

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第15話 改めてグラーバ観光

 グラーバ各地の長との対面を終え、一緒に来てくれることになった長の子供たち――しばちゃん、ぴよちゃん、にーちゃんと、魔王であるわたしのそばにいてくれるエルフのアランさん、獣人のハーリヤさんとの穏やかな日々をしばし楽しんでいたある日。


「え? グラーバを改めて観光……ですか?」

「はい。先日は各長との挨拶回りで終わってしまったので、今度はグラーバをゆっくりと見ていただければと思いまして」


 アランさんにそう提案されて、ふむと顎に手をやって少しばかり思案する。


 小さい幼女の姿でこれをやると、まるでどこぞの名探偵みたいだな……なんて、余計な思考は、すぐにぶんぶんと頭を振って振り払った。


「確かに、まだグラーバの一部しか見れてないですもんね。魔王として、もっとグラーバを知っていく必要がありますよね! ぜひ行きましょう!」

「リサ様の御心のままに」

「リサちゃんはお出かけが好きだにゃ―」


 ハーリヤさんにそう言われて、ふっと聖女時代に感じていた外の世界へのあこがれを思い出し、ふっと笑みがこぼれる。


「好きですよ。知らない世界を見られるのは、とても楽しいですから」

「ふーん。ま、楽しんでるならいいにゃー」


 ***


 そんなこんなで、わたしは再びグラーバ観光のためにアランさんのワープで移動してきた。


 ゆっくり見て回ると言っても、さすがにこの広大な土地でゆっくり歩いて観光……というわけにもいかないので、ワープは必須だ。アランさん、様々だな。


 まずやってきたのは、最初にアルミラージちゃんと出会った時と似た雰囲気のある、木々の隙間から差し込む陽光が心地よい、森の中でも明るいエリア。


 思わず深呼吸したくなるくらいマイナスイオンがたっぷりと出ていそうな場所だ。んー……気持ちいいー。


 前はハーリヤさんに抱っこされていたけれど、今日はにーちゃんの背中に乗せてもらっている。


 毎度毎度申し訳ないと思うけれど、にーちゃん自身がわたしを乗せることを喜んでいるようなので、まぁ、Win-Winな関係ならば良いかな?


「この辺りはグラーバの中でも比較的明るく、弱い魔物の住処になっています」

「ほえー……アルミラージちゃんは弱い魔物の部類なんですね」

「えぇ、そうですね。その他にも――」


 アランさんの説明を聞きながらキョロキョロと周囲を見回していると、「ぷるんっ」と聞き慣れた擬音が聞こえてきた。


「え? スラちゃん?」


 思わずそう声をかけるけれど、スラちゃんなはずがない。彼女は魔王城でお留守番しているはずなんだから。


 音のした方に視線を向けると、そこには透明感のあるブルーのゼリー状の生物――スライムがいた。


 スラちゃんそっくりだけど……別の個体のスライムってことだよね?


「は、はじめまして?」


 初対面だしと思って挨拶をすると、スライムがぺこりと頭を下げる。


 あらま、礼儀正しい。


 そんなことを思っていると、スライムの背後にある茂みから、さらにもう一体のスライムが出てきた。


「わ、もう一体。こ、こんにちは」


 また挨拶をすると、ぺこりと頭を下げられる。

 そして再び茂みからスライムが出てきて、挨拶して、スライムが出てきて、挨拶して……。


 よもや、そんなやり取りを十回以上繰り返すことになるとは思ってもいなかった。


 す、スライムってあんなにいっぱいいるんだな。


 少し驚きと疲れを感じながらも、ぽよんぽよんっと跳ねて別れの挨拶をしてくれるスライムたちに見送られながら、次の場所へと移動する。


 次にやってきたのは、森の中でも比較的暗いエリア。


 先程までの明るい空間と全く違って、昼間だと言うのにおばけでも出てきそうな薄暗い森は、正直なところ長居したくないと思ってしまうほど怖い。


「このあたりにはゴブリンやオークが群れを作って暮らしています」

「な、なるほど」

「ゴブリンやオークは雑食で、森の中の樹の実や果物も食べますし、先程の明るいエリアにいた魔物を狩って食べることもあります」

「……なるほど」

「人間が牛や豚を食べると変わらないにゃ。ゴブリンやオークの奴らを嫌いにならないでね、リサちゃん」


 わたしの声のトーンが落ちたのに気がついたハーリヤさんが、すかさずフォローを入れてくれる。


 こんな情けない調子じゃダメだ!

 魔王なんだから、しっかりしないと!


 それに……ゴブリンやオークも、わたしが教会に監禁されていた時に来てくれていた。


 悪い魔物じゃないはず。


「もちろんです。自然界で生きるために必要なことですもんね」


 そう笑顔で答えはしたけれど、最初に出会ったアルミラージちゃんや、さっき出会ったスライムたちを思うと、少しだけ胸が痛む。


 そんな気持ちを振り払うように、ぱっと明るい表情をつくって話を変える。


「ゴブリンやオークには会えないんですか?」

「もちろん、会えますよ。では彼らの住処まで行きましょうか」


 アランさんがそう言って、わたしたちを連れてワープする。


 やってきたのは、高い崖に掘られた穴型の住居らしき場所。ただの穴というわけではなく、入口には火のついたトーチのようなものが置かれているし、穴の中には等間隔で松明が設置されているのか、そこまで薄暗さは感じない。


 そんな感想を抱いていると、穴から一体のゴブリンが出てきた。


 RPGゲームで見るのと同じように、緑色で小型の見た目をしているゴブリン。


 わたしたちを認めるとゴブリンはビクッと驚きの表情を見せ、すぐに穴の中に走って戻っていってしまった。


「あ……挨拶できませんでした」

「いえ、ご心配ありませんよ」

「あいつらは常に団体行動したがるからにゃー」


 アランさんとハーリヤさんがそんなことを言っていて、最初はどういう意味か分からなかったけれど、すぐにゴブリンの住処である穴から凄まじい数の足音が聞こえてきて、二人の言っていた意味を理解する。


 あまりの大群のゴブリンに半ばパニックを起こしたしばちゃんが、わんわん!と吠えていて、そちらをなだめるのも大変だった。


 ――そして百近くいるゴブリンたちに挨拶をして、あやうく宴まで開かれそうになったけれども、そこはなんとか辞退してその場を後にした。


 ゴブリンってもっと意思疎通のできない凶暴なイメージがあったけど、意外とフレンドリーというか、驚いたり笑ったり残念がったり……表情豊かだったな。


 そんな感想を抱きながら、オークの住処に移動する。


 オークの住処に関しても、洞窟のような場所に松明……という、ゴブリンたちと似た生活をしているように見受けられた。


 違ったのは、入口に見張りのオークが立っていたことくらいかな。


 わたしたちの存在に気がついた見張りのオークは、ゴブリンのときと同じように穴に入っていき、仲間を引き連れて戻って来た。


 ゴブリンほどではないけれど、オークもなかなかに大所帯だ。


 長らしき白髪のオークが、なにやら手土産をくれるらしいとアランさんが説明してくれたけれど、すぐさまハーリヤさんの手がわたしの目元を隠して、お土産を確認することはできなかった。


 ハーリヤさんの手しか見えない視界の中、アランさんがオークたちと何やら話している声が聞こえる。そしてハーリヤさんの手がどかされたと思ったら、オークたちからお土産として樹の実詰め合わせをもらえた。


 ……視界が遮られていたことのことは考えないでおこう。


 次に山の麓あたりに移動する。


 先程まで鬱蒼と茂っていた木々がすっかりなくなり、周囲にはゴツゴツとした岩場が目立つようになった。


「このあたりにはワームやゴーレムが暮らしています」

「へー。いわ・じめんタイプが集まるのかな?」

「え?」

「い、いえ、なんでもないです!」


 そしてワームやゴーレムさんとも挨拶したけれど、ワームさんは正直……うん……虫苦手な人は閲覧注意な見た目をなさっていたし、ゴーレムさんは寡黙というか……森で見られたような大歓迎! みたいな雰囲気はなくて、さくっと対面を終えた。


 ワームと会ったときに、頭の上のぴよちゃんが『ご飯』を求める鳴き声を上げていて、今までのぴよちゃんの食生活を想像しそうになったのを振り払い、先程オークたちからもらった樹の実を与えておいた。


 次に川へ。


 川の長が住んでいた小川よりも、幅も広く深さのある川までやってきた。まるで森を分断しているかのような大きな川は、太陽の光を反射してキラキラと光り輝いている。


「川には河童や半魚人などが生息しています」

「か、かっぱ……? 急に古風な……」

「おや、ご存知なのですか? 古から生息している種族です」

「へ、へえー。会うことはできますか?」

「うーん……難しいかもしれませんね。彼らは気分屋なので」

「そうなんですね」

「一応、顔だけ見せてくれてるみたいだにゃー」

「え?」


 ハーリヤさんの言葉に川の方に視線を向けると、河童と半魚人が並んで顔の上半分だけ出して、こちらを眺めていた。


「うぉ……。こ、こほん……は、はじめましてー」


 驚きから乙女らしからぬ声が漏れたけれど、気を取り直して挨拶してみると、彼らは頭の下半分を出して意味深にニヤリと笑みを見せて、そのまま水の中に消えてしまった。


 な、なんだ……あの笑みは。


「魔王として認められてるみたいだにゃー」

「え!? あれで!?」

「うん。気難しい奴らだから分かりにくいけど、魔王だと認めてなかったら顔すら出さないにゃ」

「そ、そうなんですね」

「当然だ。誰がなんと言おうとリサ様は魔王陛下であらせられるのだから」

「はは……」

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