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辺境伯家三男、アプリで魔法を再定義する。 ~「賢者」認定されたけど、これ「スマートウオッチ」ですから!  作者: のびろう。
第十四章 合同魔法闘技大会と最後の無双劇。世界を統べる者たちの卒業試験

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第82話 第一回戦開幕。紅茶と神速の剣劇、そして絶望への序曲

王都の巨大なコロシアムは、割れんばかりの歓声に包まれていた。

大陸合同魔法闘技大会の第一回戦が、いよいよ開幕の時を迎えようとしている。

闘技場の中央に広がる広大な石畳のフィールドには、すでに僕たち王国代表チームと、対戦相手である帝国魔法学園の精鋭チームが向かい合って立っていた。


「さあ、第一回戦の開始です!」

実況の魔導放送がコロシアム全体に響き渡る。

「王国代表は、なんと前衛に二人の女子生徒を配置し、後衛の男子生徒は優雅に椅子に座って紅茶を飲んでおります!」

実況の言う通り、僕はフィールドの最後方に持ち込んだアンティーク調の椅子に深く腰掛け、シャルロットが淹れてくれた最高級の紅茶を嗜んでいた。

僕の左右にはシャルロットとベアトリスが控え、少し後ろにはマシロが無表情で直立している。


「ふはははっ!なんだそのふざけた陣形は!」

対面する帝国チームのリーダーが、重装甲の鎧を鳴らしながら下品な笑い声を上げた。

彼らは全員が分厚い魔導装甲に身を包み、身の丈ほどもある巨大な杖や大剣を構えている。

レオンハルトの取り巻きである彼らは、圧倒的な火力と防御力で僕たちを粉砕するつもりのようだ。


「辺境の落ちこぼれが、恐怖で頭がおかしくなったか!」

「女子供を盾にして茶を飲むとは、王国の騎士道も地に落ちたな!」

帝国の生徒たちが次々と僕を挑発してくる。

僕はティーカップをそっとソーサーに置き、小さく息を吐いた。


「リズ、サクラ。彼らはああ言っているけれど、どうする?」

僕が前衛の二人に問いかけると、黄金の闘気を纏ったリズが肩越しに振り返ってウインクをした。

「三分待ってて、アレン。紅茶が冷める前に終わらせてあげるから」

サクラも刀の柄に手を当て、桜色の剣気を静かに立ち昇らせている。

「うむ!主君の優雅なティータイムを邪魔する輩は、ヤマトの刃が許さぬぞ!」


「開始っ!」

審判の開始の合図が響き渡った瞬間、帝国チームが一斉に呪文の詠唱を始めた。

「喰らえ!極大爆裂魔法!」

五人の魔法使いたちの杖の先端から、闘技場を丸ごと吹き飛ばすほどの巨大な火球が生み出されようとしている。

観客席から悲鳴のような歓声が上がる。


しかし、僕には彼らの動きがスローモーションのように見えていた。

僕は左腕の天界の端末を指先で軽く弾いた。

「【身体能力強化アプリ】起動。対象、リズとサクラ。出力制限全解除」

僕の現代科学チートによるバフが、見えない光となって二人の体を包み込む。

ただでさえ規格外の強さを持つ彼女たちが、システムの管理者権限による限界突破の支援を受けたのだ。

その結果がどうなるかなど、火を見るよりも明らかだった。


ドンッ!!

空気を切り裂くような破裂音がコロシアムに響き渡った。

それは、リズとサクラが石畳を蹴ってトップスピードに達した際に生じた衝撃波の音だった。

「なっ……!?」

帝国チームの詠唱が止まる。

彼らの視界から、前衛にいたはずの二人の少女の姿が完全に消失したからだ。


「剣聖技・黄金閃破」

リズの涼やかな声が、敵陣のど真ん中から響いた。

直後、黄金の剣閃が網の目のように空間を切り裂く。

「ぎゃあっ!」

「装甲が、紙のように……!」

分厚い魔導装甲ごと、帝国チームの生徒たちの武器が綺麗に両断されて宙を舞う。

彼らが何が起きたのか理解する間もなく、今度は背後から桜色の疾風が吹き荒れた。


「ヤマト抜刀術奥義・桜花乱舞」

サクラの刀が閃くたびに、強烈な衝撃波が帝国の生徒たちを闘技場の壁際まで吹き飛ばしていく。

詠唱中だった極大爆裂魔法は不発に終わり、火の粉となって虚しく霧散した。

開始の合図から、わずか三秒。

瞬きをする間もなく、圧倒的な火力と防御力を誇っていたはずの帝国チームの精鋭たちは、全員が白目を剥いて地面に転がっていた。


「え……?」

実況も、観客も、何が起きたのか全く理解できず、コロシアムは水を打ったような静寂に包まれた。

「終わったよ、アレン」

リズが剣を鞘に収め、ニコニコと笑いながら戻ってくる。


「うむ!少しばかり手応えがなさすぎたが、準備運動にはなったぞ!」

サクラも息一つ乱さず、僕の横に並んだ。

僕はまだ温かい紅茶を一口飲み、満足げに頷いた。


「お疲れ様、二人とも。見事な連携だったよ」

「勝者、王国代表チーム!」

遅れて響いた審判のコールにより、ようやく事態を飲み込んだ観客席から、地鳴りのような大歓声が巻き起こった。


「なんだあのスピードは!魔法も使わずに重装甲を切り裂いたぞ!」

「凄すぎる!王国の代表はバケモノ揃いか!」

僕は歓声を聞きながら、貴賓席の近くで顔面を蒼白にしているレオンハルトの姿を捉えた。

彼は信じられないものを見るような目で、震える手で闘技場を指差している。

そんな彼の様子を見て、僕の隣にいたシャルロットが優雅に一歩前に出た。


「ふふっ。あのような下級生レベルの相手では、わたくしたちの出番はありませんでしたわね」

シャルロットはレオンハルトの視線を受け止めながら、極上の笑みを浮かべた。

「次はわたくしたちの番ですわ。帝国の首席とやらがどれほどの絶望を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方がありませんの」

その冷酷で美しい微笑みは、レオンハルトの心に確かな恐怖を植え付けたはずだ。

「対象者の精神状態に著しいパニック反応を検知。論理的に戦闘継続は不可能と推測されます」

マシロが無感情に分析結果を口にする。


「私の計算通りですわ。このまま彼らのプライドを完全にへし折り、アレン様のための未開拓地を手に入れましょう」

ベアトリスが扇子で口元を隠しながら、知的な瞳を輝かせた。

圧倒的な力による蹂躙劇は、まだ幕を開けたばかりだ。


僕たちは歓声に包まれる闘技場を後にし、次なる獲物が待つ控え室へと悠然と引き上げていった。

世界を裏側から統べる者たちの卒業試験。

それは他国のエリートたちにとって、生涯忘れることのできない絶対的な絶望の記憶として刻まれることになろうとしていた。

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