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辺境伯家三男、アプリで魔法を再定義する。 ~「賢者」認定されたけど、これ「スマートウオッチ」ですから!  作者: のびろう。
第十二章 卒業前の領地開拓と疑似家族。未来へ繋ぐ新婚スローライフ
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第74話 究極の異世界カレーと愛のログハウス完成。学生生活最後の年へ向けて

獣人族の集落から無事に帰還した僕たちは、開拓地の真ん中で早速持ち帰った香辛料の選別作業に入っていた。

僕の左腕にある天界の端末を起動し、【成分分析アプリ】でスパイスの効能や風味を一つ一つ解析していく。


「アレン様、この赤い木実はとても刺激的な香りがしますわね」


シャルロットが興味深そうに赤いスパイスを手に取る。


「それは辛味の強いスパイスだね。入れすぎると大変なことになるから気をつけて」


僕が微笑みながら注意すると、シャルロットは嬉しそうに頷いた。

今日は、僕がずっと夢見ていた最強のスローライフ飯である『カレーライス』を作る日だ。

システム管理者としての権限と【天候操作アプリ】を駆使し、超高速で育て上げた僕の自慢のお米が、すでにツヤツヤと炊き上がっている。

あとは、この獣人族のスパイスと辺境領の新鮮な肉や野菜を煮込み、究極のカレーソースを完成させるだけだ。


「アレン殿、野菜と肉のカットは某に任せてくれ!ヤマト抜刀術の冴えを見せてやろう!」


サクラが厨房に立ち、神速の包丁さばきで食材を均等な一口大に切り分けていく。


「サクラちゃん、すごく手際がいいね。私はお鍋を火にかける準備をするよ」


リズが薪をくべ、大きな鍋に火を入れる。


「火力の調整と煮込み時間の計算は私にお任せくださいませ。最高の旨味を引き出してみせますわ」


ベアトリスが眼鏡を輝かせながら、火力の温度と時間を厳密に測り始めた。

四人の花嫁候補たちとの共同作業は、驚くほどスムーズで心地よいものだった。

鍋から立ち上るスパイシーな香りが、ログハウスの広大なリビングを満たしていく。


「すごくいい匂いですわ。アレン様、味見をお願いしてもよろしいですか?」


シャルロットが木製のスプーンでカレーを掬い、ふーふーと息を吹きかけて冷ましてから僕の口元へと差し出してきた。


「あーん、ですわ」


彼女の王女らしからぬ甘い声に、僕の胸が小さく跳ねる。


「ありがとう、シャルロット。……うん、すごく美味しいよ。スパイスの配合が完璧だ」


僕が素直な感想を伝えると、シャルロットは満面の笑みを浮かべた。


「ちょっとシャルロット殿下!味見なら私が先にする予定でしたのよ!アレン様、私のも食べてくださいませ!」

「某の切った肉の味も確かめてほしいぞ!ほら、アレン殿、あーんだ!」

「みんなずるい!アレン、私のよそったご飯と一緒に食べて!」


あっという間に、僕の口元には四つのスプーンが突きつけられることになった。

平和なスローライフの中に訪れる、可愛らしくも激しい愛情のぶつかり合いだ。

僕は苦笑いしながらも、順番に四人の差し出すスプーンからカレーを味わった。

どれも僕の知る前世のカレーを超える、異世界の豊かな食材と彼女たちの愛情が詰まった究極の味だった。


「みんなのおかげで、最高のカレーライスが完成したよ。さあ、冷めないうちに食べよう」


僕の言葉を合図に、広々としたリビングの大きなダイニングテーブルに五人分の料理が並べられた。

白い湯気を立てる炊きたてのご飯に、黄金色に輝くスパイシーなカレーがたっぷりと掛けられている。


「いただきます!」


五人の声が重なり、僕たちは一斉にスプーンを口に運んだ。


「美味しい……!これ、お口の中で色々な味が弾けて、すごく元気がでるよ!」


リズが目を丸くして歓声を上げる。


「辛味の中に深いコクがありますわ。これなら王宮の晩餐会でもメインを張れますわね」

シャルロットも上品に口元を拭いながら絶賛する。


「計算外の美味しさですわ。この香辛料の黄金比、我が商会の最高機密として登録しておきます」


ベアトリスがスプーンを動かす手を止めず、早くもビジネスの算段を立てている。


「ヤマトの料理とはまた違うが、米とこれほどまでに合う汁物があったとは!某、おかわりをもらうぞ!」


サクラがあっという間に皿を空にし、元気よく立ち上がった。

彼女たちの笑顔を見ながら食べるカレーは、世界を救ったという事実以上に、僕の心を満たしてくれた。

食後、満腹になった僕たちは、完成したばかりのログハウスの広い縁側に並んで腰を下ろした。

夜空には無数の星が瞬き、春の夜風が心地よく僕たちの頬を撫でていく。


「ついに、私たちの愛の巣が完成しましたわね。今夜から、ここでアレン様との甘い新婚生活が始まると思うと、胸が高鳴りますわ」


シャルロットが僕の肩に頭を乗せ、うっとりとした声で囁いた。


「ええ。子供部屋の準備も完璧ですし、いつでも新しい家族を迎えることができますわよ」


ベアトリスが僕の腕にそっと触れ、意味深な微笑みを浮かべる。


「うむ!某もヤマトの嫁として、夜の務めも全力で果たす所存だぞ!」


「ちょっとみんな、抜け駆けはダメだよ!今日はみんなで川の字になって寝るんだからね!」


リズが慌てて三人を牽制し、僕の背中にぎゅっと抱きついてきた。

彼女たちの熱烈なアピールに、僕は思わず吹き出してしまった。


「あはは。みんな、すごく嬉しいよ。でも、ここで新婚生活を始めるのは、もう少しだけ先の話だ」


僕の言葉に、四人は不思議そうに顔を見合わせた。


「このログハウスは、僕たちの未来の居場所として完璧に準備できた。でも、僕たちはまだ王立魔法学園の三年生だ」


僕は星空を見上げながら、穏やかな声で続けた。


「学生として学ぶべきこともあるし、王都で片付けないといけない用事も残っている。何より、学園生活の最後の一年を、みんなと一緒に思い切り楽しみたいんだ」


僕の言葉の真意を理解し、四人の表情に柔らかな笑みが戻った。


「そうですわね。この愛の巣は、私たちが無事に卒業を迎えた後の、最高のご褒美として取っておきましょう」


シャルロットが僕の手に自分の手を重ねてくる。


「学生生活最後の年。アレン様と共に過ごす王都での日々も、完璧な計算で素晴らしいものにしてみせますわ」


ベアトリスがもう片方の手を優しく握りしめた。


「うむ!主君の背中は、卒業するその日まで某が学園でも守り抜こう!」


サクラが力強く頷く。


「アレン。卒業したら、絶対にここに戻ってきて、みんなで家族になろうね」


リズが僕の頬に自分の頬をすり寄せ、愛おしそうに囁いた。


「ああ、約束だ。僕の思い描く最高のスローライフは、君たちがいて初めて完成するんだから」


僕は四人の温もりを感じながら、夜空の星に固く誓った。

運命の強制力という絶対的な死線を越え、僕たちは今、未来への確かな準備を終えた。

明日には、王都の学園へと戻る馬車に乗ることになる。

世界を裏側から管理する力を持ちながらも、あくまで一人の学生として過ごす最後の一年。


愛する花嫁たちとの賑やかで騒がしい日常は、舞台を再び王都へと移し、新たなページを捲ろうとしていた。

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