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辺境伯家三男、アプリで魔法を再定義する。 ~「賢者」認定されたけど、これ「スマートウオッチ」ですから!  作者: のびろう。
第十章 卒業と決断の三年生編。最後の一年と、未来へ続くスローライフ防衛戦
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第64話 魔法と科学の完全同期。愛する乙女たちの魔力が紡ぐ、バグの初期化と新世界の夜明け

制御室にアラートの赤い光が明滅し、耳障りなエラー音が鳴り響いていた。


『警告。』

『メインコアへの不正アクセス率、七十パーセントを突破。』

『ファイアウォール第三層、崩壊しました。』


マザーの無機質な合成音声が、状況の絶望的な悪化を告げている。


「くっ……ハッキングの速度が異常すぎる!」


僕は左腕の天界の端末を操作し、空中に展開した無数のホログラムキーボードを叩き続けていた。


前世の知識と魔法理論を組み合わせた迎撃プログラムを次々と走らせるが、魔族のウイルスはそれらを捕食するように増殖していく。

システムのエラーから生まれたバグである彼らにとって、この箱庭のシステムを破壊することは本能そのものなのだ。


「はぁぁぁぁっ!」


リズの黄金の剣閃が、魔族のリーダー格の胴体を斜めに両断した。

しかし、魔族の体は黒い靄となって一瞬で繋がり、無傷の状態へと再生してしまう。


「嘘でしょ……あんなに手応えがあったのに!」


リズが荒い息を吐きながら後退する。


「物理攻撃も魔法も通じないなんて、どういう理屈ですの!」


シャルロットの極大火炎が魔族を包み込むが、炎の中から涼しい顔で魔族が歩み出てくる。


「再生能力という次元ではありませんわ。ダメージを受けたという事象そのものがキャンセルされているようです」


ベアトリスが氷の防壁を展開しながら、絶望的な分析結果を口にした。


「不死身の化け物め……だが、主君に指一本触れさせるわけにはいかぬ!」


サクラが傷だらけの体で再び抜刀術の構えをとる。

四人の乙女たちは、すでに魔力も体力も限界に近づいていた。


「無駄な足掻きだ。我々はこの世界のバグ。システムが正常である限り、エラーである我々の存在は無限に復元される」


魔族の男が嘲笑う。

ハッキングによる世界崩壊までのタイムリミットが迫り、物理的な防衛線も突破されようとしている。


絶体絶命の窮地だった。

だが、僕は端末の画面を睨みつけながら、一つの逆転の糸口を見出していた。


「システムが正常だから復元されるなら……そのバグの記述自体を、システム側から書き換えてしまえばいい!」


僕はキーボードから手を離し、背後で戦う四人に叫んだ。


「みんな、僕のところに集まってくれ!」


「アレン!?」


「いいから、早く!」


僕の切羽詰まった声に、四人は迷うことなく敵に背を向け、コンソールの前で作業する僕の元へと飛び込んできた。


「みんなの残っている魔力を、全部僕の端末に流し込んでほしい。君たちの莫大な魔力を、僕の端末の演算能力に変換して、システムを上書きするんだ!」


「魔力を……演算能力に?」


「ええ、やりますわ!私のすべて、アレン様に捧げます!」


シャルロットが真っ先に僕の背中に抱きつき、その柔らかな胸を押し当てながら魔力を注ぎ込んできた。


「アレンの力になれるなら、いくらでも使って!」


リズが僕の右腕に絡みつき、黄金の闘気を流し込む。


「私の魔力も、心も、すべてあなたと同調させますわ」


ベアトリスが僕の左腕に触れ、冷たくも熱い魔力を流し込む。


「某の命、主君と共に燃やし尽くそう!」


サクラが僕の正面から抱きつき、その温かい体温と共に膨大な気力を注ぎ込んできた。


四人の絶世の美少女たちと完全に密着し、彼女たちの肌から直接、膨大なエネルギーが僕の魔力回路へと流れ込んでくる。


『警告。』

『規定値の八千パーセントを超える魔力流入を確認。』

『端末の処理能力が限界を突破しました。』


マザーの音声が響く中、僕の左腕の端末が神々しいまでの純白の光を放ち始めた。


「いける……!みんなの愛と魔力があれば、僕の科学チートはどんな限界だって超えられる!」


僕は光り輝く端末のインターフェースを力強く叩いた。


「アンチウイルスアプリ、最大出力で起動。魔族の不正なアクセスプロトコルを完全に隔離して初期化しろ!」


僕の端末から放たれた光の波が、制御室のメインコアへと流れ込む。


『管理者権限、復旧。』

『ウイルスプログラムの駆除に成功しました。』


マザーの報告と同時に、コンソールを覆っていた黒いノイズが霧散した。


「なっ……馬鹿な!我々のハッキングが、たかが人間の端末ごときに押し返されただと!?」


魔族の男が驚愕の声を上げ、後ずさる。


「これで終わりじゃない。お前たちの『不死性』というバグの記述も、僕が書き換えた」


僕は四人に抱きしめられたまま、冷徹に魔族を見据えた。


「お前たちはもう、ただの的だ」


僕の言葉を合図に、僕の体から離れた四人の乙女たちが、一斉に反撃の体勢をとった。


「アレンの作った平和な世界、壊させてたまるかぁぁっ!」


リズの剣閃が魔族の男の片腕を斬り飛ばす。

今度は黒い靄となって再生することはなく、魔族は痛みに顔を歪めた。


「バグは修正されましたわ。あとは私たちが、綺麗にデバッグして差し上げます!」


ベアトリスが絶対零度の吹雪を放ち、魔族たちの足を床に凍りつかせる。


「アレン様の愛の力、思い知りなさい!」


シャルロットの極大火炎が魔族たちの退路を完全に塞ぐ。


「ヤマト国抜刀術奥義……桜花乱舞!!」


最後にサクラの神速の抜刀術が、凍りつき燃え盛る魔族たちを文字通り千の肉塊へと切り刻んだ。


「ガァァァァァァッ!!」


不死性を失った魔族たちは、断末魔の悲鳴を上げながら、今度こそ完全に塵となって消滅した。

制御室に、再び静寂と、冷却ファンの規則正しい音だけが戻ってきた。


「やった……私たち、勝ったのね」


リズがその場にへたり込み、安堵の息を吐く。


「ええ。世界の崩壊は、私たちの愛で食い止めましたわ」


シャルロットが杖を置き、優しい笑顔で僕を見つめる。

僕も限界を超えた魔力行使により、コンソールに寄りかかるようにして座り込んだ。


『脅威の完全な排除を確認。』

『システムの初期化プロセスをキャンセルします。』


マザーのホログラムが再び僕たちの前に姿を現し、深々と一礼した。


『イレギュラーな管理者様。あなたの尽力により、この世界は救われました。』

『本日をもって、あなたを当システムの正規管理者に任命いたします。』


「正規管理者……。つまり、僕がこの世界の設定をいじれるようになったってこと?」


『肯定します。環境、気候、マナの循環など、あらゆる事象へのアクセス権限を付与します。』


その言葉を聞いて、僕は思わず笑みをこぼした。

これで僕のスローライフ計画は、文字通り神の領域に達したことになる。


領地の天候をいつでも晴れにして、最高のお米を育てることができるのだから。


「アレン様、やりましたわね!これで私たちは、名実ともにこの世界を導く存在となりましたわ!」


ベアトリスが興奮した様子で僕の手を握る。


「アレン殿が世界の理を統べる……。うむ、やはり某が見込んだ主君だ!」


サクラも誇らしげに胸を張る。


「よし、終わったなら早く地上に戻ろう。なんだかすごくお腹が空いちゃった」


リズがぐうと鳴るお腹を押さえながら立ち上がった。

僕たちは顔を見合わせ、制御室の中で楽しげな笑い声を上げた。


世界の真実を知り、それを守り抜いた僕たち。

古代の大迷宮での壮絶な戦いを終え、僕たちの足取りは不思議なほどに軽かった。


地下深くの制御室を後にし、平和な日常が待つ地上へと続く階段を登り始める。

三年生としての生活は、まだ始まったばかりだ。


新たなる管理者としての権限と、僕を愛してやまない四人の花嫁たち。

すべてを手に入れた僕の未来は、希望と、そして少しの胃痛に満ち溢れて輝いていた。

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