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辺境伯家三男、アプリで魔法を再定義する。 ~「賢者」認定されたけど、これ「スマートウオッチ」ですから!  作者: のびろう。
第十章 卒業と決断の三年生編。最後の一年と、未来へ続くスローライフ防衛戦
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第62話 封印されし古代大迷宮と魔族の残党。最強パーティの快進撃と、共鳴する天界の端末

重厚なオーク材の扉を開けると、そこには王立魔法学園の頂点に立つ学園長が、かつてないほどに険しい表情で待ち構えていた。


「よく来てくれた。アレン・ログレー、そして四人の優秀な乙女たちよ」


学園長室は、昼間だというのに厚いカーテンが引かれ、薄暗い魔力灯の光だけが室内を照らしていた。


「春休み中、お前たちがログレー辺境伯領で上級魔族ザガンを討ち取ってくれたこと、王家からも正式に感謝の意が伝えられている。本当に見事な働きだった」


学園長が深く頭を下げる。


「ですが、今日僕たちを呼んだのは、その表彰のためではありませんよね」


僕が静かに問いかけると、学園長は重々しく頷き、机の上に一枚の古びた羊皮紙の地図を広げた。


「お前たちが討ち取ったザガンが、最期に残した言葉についてだ。三年生になる前に絶望を見せておく、と奴は言ったそうだな」


「ええ。単なる負け惜しみとは思えない、確かな自信を感じましたわ」


シャルロットが炎の杖を床にコツンと突き立て、眉をひそめる。


「奴らの狙い、そして三年生となったお前たちに立ちはだかるであろう真の脅威について、学園の最高機密を明かさねばなるまい」


学園長が地図のちょうど中央、僕たちが今いる王立魔法学園の位置を指差した。


「この学園の地下深くには、建学の祖たちが封印した『古代の大迷宮』が眠っている。そしてその最深部には、魔族のルーツ、ひいてはこの世界そのものの根源に関わる巨大な秘密が隠されているのだ」


「学園の地下に、大迷宮……?そんな話、入学してから一度も聞いたことがないよ」


リズが驚いて目を丸くする。


「当然だ。存在そのものが最高レベルの禁忌だからな。だが、最近になって地下の封印術式に外部から強力な干渉が確認された。ザガンの残党……いや、さらに上位の魔族たちが、迷宮の封印を解こうと暗躍しているのは間違いない」


「なるほど。魔物の大群を辺境に差し向けて王国の戦力を分散させ、その隙に学園の地下を攻略する腹積もりでしたのね」


ベアトリスが扇子で口元を隠し、冷徹に状況を分析する。


「その通りだ。もし迷宮の最深部を魔族に押さえられれば、この世界は文字通り終わりを迎えるだろう。お前たちには、迷宮に潜入し、魔族の残党を排除しながら最深部の調査と防衛を行ってほしい」


学園長は僕たち五人の顔を順番に見回した。


「これは、他の教師や騎士団には任せられない。大魔王を退け、上級魔族すら打ち破った、学園最強のパーティであるお前たちにしか頼めない極秘任務だ」


「……分かりました。僕たちの平穏な日常を脅かす火種なら、ここで完全に消し去ってみせます」


僕が力強く頷くと、四人のヒロインたちも一斉に闘志を燃え上がらせた。


「アレン様の行く道ならば、地の底であろうと共に行きますわ!」


「うん!みんなで力を合わせれば、どんな敵だって怖くないよ!」


かくして、僕たちは三年生の初日から、学園の地下に眠る未知の大迷宮へと足を踏み入れることになった。



学園の最下層にある厳重な隠し扉を抜け、長く薄暗い螺旋階段を降りていく。


「なんだか、空気がジメジメしていて気持ち悪いですわね……」


シャルロットが腕をさすりながら、僕の背中にピタリと密着してくる。


「油断するなよ。ここから先は、何百年も人の手が入っていない古代の領域だ」


僕が警告を発した直後、前方の暗闇から低く唸るような重低音が響き渡った。


「グルルルルル……!!」


暗闇から姿を現したのは、岩と魔石で構成された巨大な三つ首のキメラゴーレムだった。


その体からは、春休みに戦った上級魔族と同等クラスの禍々しい魔力が立ち昇っている。


「いきなり強敵の登場だな!だが、某の剣の錆となるがいい!」


サクラが刀の柄に手をかけ、一歩前に出る。


「サクラ、待って。あのゴーレム、ただの岩じゃない。物理攻撃を反射する呪術コーティングが施されている」


僕は左腕の【天界の端末】を起動し、【構造力学スキャナー】と【魔力解析アプリ】を同時に展開した。


ホログラム画面に、巨大なゴーレムの全身の構造と弱点が瞬時に浮かび上がる。


「物理反射……厄介な防壁ですわね」


ベアトリスが扇子を構える。


「問題ないよ。僕が弱点を共有する」


僕は端末を操作し、四人の視覚野に直接、ゴーレムの弱点座標をリンクさせた。


「中央の首の付け根にある赤い魔石が動力源だ。シャルロット、ベアトリス、まずは二人の魔法で表面の呪術コーティングを剥がしてくれ。リズとサクラは、コーティングが剥がれた瞬間に動力源を破壊するんだ」


「「「「了解(承知)!!」」」」


僕の的確な指示を受け、四人の乙女たちは見事な連携で動き出した。


「燃え尽きなさい!紅蓮の火炎槍!」


「凍てつけ!絶対零度の氷槍!」


シャルロットの放つ極大の炎と、ベアトリスの放つ極低温の氷柱が、ゴーレムの巨体に同時に直撃する。


急激な温度変化による熱衝撃が呪術コーティングに亀裂を生じさせ、パリンとガラスの砕けるような音と共に防壁が完全に剥がれ落ちた。


「今だよ、サクラちゃん!」


「うむ!遅れはとらん!」


リズが壁を蹴って跳躍し、空中から黄金の剣閃を放って左右の首を一瞬で切り落とす。


その隙に、サクラが神速の抜刀術でゴーレムの懐へと潜り込んだ。


「ヤマト抜刀術・桜花一閃!!」


サクラの刃が、僕の指示した中央の首の付け根、赤い魔石を寸分の狂いもなく一刀両断する。


「グガァァァァァァッ!!」


断末魔の咆哮を上げ、巨大な上級キメラゴーレムはガラガラと音を立てて崩れ落ち、ただの瓦礫の山へと変わった。


「ふふっ、あっけないものですわね。私たち五人の完璧な連携の前では、古代の守護者もただの石ころですわ」


シャルロットが炎の杖をクルリと回し、誇らしげに微笑む。


「みんな、ナイス連携だったよ。この調子で最深部まで一気に駆け抜けよう」


僕が端末の【マッピングアプリ】で安全なルートを構築しながら先導する。


迷宮の内部には、毒ガスのトラップや、迷いの幻覚、さらには上位の魔族の残党たちが次々と襲いかかってきた。


しかし、二学期から春休みの激戦を経て、さらに絆を深めた僕たちにとって、それらはもはや脅威ではなかった。


僕の現代科学チートによる完璧なサポートと罠の解除。


そして、四人のヒロインたちの圧倒的すぎる戦闘力。


僕たちは立ち止まることなく、まるでピクニックにでも来ているかのような余裕の足取りで、古代の大迷宮を猛スピードで攻略していった。


「アレン様、少し休憩にいたしませんか?私が淹れた特製の紅茶がありますのよ」


迷宮の中層の安全地帯で、ベアトリスが優雅にティーセットを取り出す。


「ありがとう、いただくよ。でも、こんな地下深くでお茶会なんて、本当に僕たちくらいしかやらないだろうね」


僕が苦笑いしながら紅茶を受け取ると、リズが僕の隣に座り込んで肩に頭を乗せてきた。


「だって、アレンが一緒ならどこだって安心だもん。私、このまま迷宮の奥でアレンと暮らすのも悪くないかもって思えてきたよ」


「リズさん、抜け駆けは許しませんわよ。アレン様、私の持参した手作りクッキーも召し上がってくださいませ。あーん」


シャルロットが僕の口元にクッキーを運んでくる。


「むむっ、某もアレン殿に尽くさねば!肩をお揉みしよう!」


サクラが僕の背後に回り、力強く、それでいて心地よいマッサージを始めてくれる。


四人の絶世の美少女たちに囲まれ、迷宮のど真ん中で至れり尽くせりの世話を焼かれるという、緊迫感ゼロのラブコメディ。


「みんな、あまり気を抜きすぎないようにね。迷宮の深層になれば、何が待ち受けているか分からないから」


僕は幸せな溜息を吐きながらも、気を引き締めるように促した。


休憩を終え、さらに地下へと続く階段を降りていくと、周囲の景色が徐々に変化し始めた。


これまでの石造りの古めかしい壁が、滑らかで無機質な、まるで金属のような材質へと変わっていったのだ。


「これは……魔法の産物ではありませんわね。未知の金属ですわ」


ベアトリスが壁に触れ、驚きの声を上げる。


「アレン、なんだかここ、すっごく変な感じがするよ。空気がピリピリしてるっていうか……」


リズが警戒して剣の柄に手をかける。


僕もまた、言葉にできないほどの強烈な違和感を感じていた。


いや、違和感ではない。


これは、僕が前世の地球で感じていた、現代科学のテクノロジーが放つ特有の静電気のような空気だった。


ピピピッ……ピピピピピピッ!!


その時、僕の左腕に装着された【天界の端末】が、これまでにないほど激しい警告音、いや、共鳴音を鳴らし始めた。


「アレン殿!腕の魔道具が、異常な光を放っておるぞ!」


サクラが叫ぶ。


端末のディスプレイには、『未知のローカルネットワークを検出』『同期プロトコルを受信中』という見慣れない文字列が高速で流れていた。


「そんな馬鹿な……この異世界に、僕の端末と通信できるネットワークが存在するはずが……!」


僕たちが辿り着いたのは、迷宮の最深部と思われる広大な空間だった。


その中央には、魔族の姿はなく、代わりに天を突くような巨大な金属製の扉がそびえ立っていた。


扉の表面には、複雑な幾何学模様が青白く発光しながら明滅している。


僕は吸い寄せられるようにその扉へと近づき、震える手で扉の表面に触れた。


ピシュゥゥゥンッ!


その瞬間、扉の表面に、僕の端末と全く同じデザインのホログラムインターフェースが空中に展開されたのだ。


『アクセスを承認。生体認証クリア。歓迎します、管理者権限保有者』


機械的で無機質な合成音声が、迷宮の最深部に響き渡った。


「アレン様……これはいったい、何なのですか……?」


シャルロットが、信じられないものを見るような目でホログラムを見つめている。


「分からない……。でも、この迷宮はただの遺跡じゃない。僕の『転生の秘密』、そしてこの世界の成り立ちそのものに直結している場所だ」


魔族の残党が狙っていたのは、このテクノロジーだったのか。


なぜ、剣と魔法の異世界の地下に、現代科学を凌駕するようなシステムが眠っているのか。


天界の端末と共鳴する巨大な扉が、重々しい音を立ててゆっくりと開き始める。


僕の平穏なスローライフの夢は、世界の根源に関わる巨大な謎と、新たなる戦いの渦へと容赦なく巻き込まれていくのだった。

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