表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境伯家三男、アプリで魔法を再定義する。 ~「賢者」認定されたけど、これ「スマートウオッチ」ですから!  作者: のびろう。
第七章 大陸魔法交流戦と最強の乙女たち。裏方賢者のチートサポートと、四つの華麗なるざまぁ無双
48/72

第47話 悪徳商人の罠と絶対零度の完全論破。公爵令嬢の冷徹なる盤上遊戯と逆ハッキングの極北

リズの剣聖無双、そしてシャルロットの極大火力による粉砕劇。


王国代表の乙女たちが連続で見せた圧倒的すぎる勝利に、大陸魔法交流戦の闘技場は完全に熱狂の渦と化していた。


「続いて第三試合!知の象徴たる美しき公爵令嬢、ベアトリス・ヴァンルージュ選手の入場です!」


実況の興奮した声と共に、ベアトリスが静かに闘技場へと足を踏み入れた。


彼女は銀色の髪を美しく結い上げ、氷の結晶をあしらった特製の青いドレスアーマーを身に纏っている。


その手にはトレードマークである扇子が握られ、歩くたびに知的な色気と絶対的な自信が溢れ出していた。


対するゲートから現れたのは、大陸屈指の商業国家の代表である令息だった。


豪華な装飾が施された魔法衣を着崩し、金と権力で甘やかされて育ったことが丸わかりの、底意地の悪い笑みを浮かべている。


「やあ、ベアトリス嬢。昨夜のパーティでは冷たくあしらわれましたが、闘技場の上ではそうはいきませんよ」


令息が気取った仕草でベアトリスを指差した。


「あなたのヴァンルージュ商会と、あの雑用係のアレンとかいう男が始めた新規ビジネスのせいで、我が商業国家は多大な利益を損ないました。その恨み、この公開の場でたっぷりと晴らさせてもらいますよ」


「恨み、ですか。それは市場の原理と、私共の商品開発力の高さを理解できない無能の僻みですわね」


ベアトリスが扇子で口元を隠し、冷ややかに嘲笑う。


「ふん、減らず口を。だが、あなたの運命もここまでだ。この試合、私の完璧な策の前で、公爵令嬢が泥にまみれて泣き叫ぶ姿を観客に見せてあげましょう」


令息が邪悪な笑みを深めた瞬間、試合開始の銅鑼が鳴り響いた。



「絶対零度の氷槍雨アイス・ジャベリン!」


ベアトリスが先手を取り、扇子を鋭く振り下ろした。


空中に無数の氷の槍が生成され、令息に向かって降り注ごうとする。


しかし、次の瞬間だった。


キュィィィィンッ!!


闘技場の石畳全体に、幾何学的な魔法陣が突如として青白く浮かび上がった。


魔法陣から発生した光の波紋が空中の氷の槍に触れると、氷はパチンと弾けるように霧散し、魔力の粒子となって地面へと吸い込まれてしまったのだ。


「なっ……私の魔法が、消滅しましたわ?」


ベアトリスが僅かに目を見張る。


「ははははっ!驚いたか!これぞ我が商業国家が誇る、莫大な資金を投じて開発した『対魔法・広域吸収トラップ』だ!」


令息が勝ち誇ったように両手を広げ、闘技場を歩き回る。


「試合前夜に、闘技場の管理官にたっぷりと金を握らせて、石畳の地下にこの魔力回路を仕込んでおいたのさ!この陣の上では、お前がいかなる高位魔法を紡ごうとも、発動前に魔力をすべて吸い取られて無効化される!」


観客席から、卑劣な罠に対するブーイングが巻き起こる。


しかし、令息はそれすらも称賛の声のように受け取っていた。


「金も権力も、すべては実力のうちだ!さあ、魔法を封じられた公爵令嬢に何ができる?大人しく土下座して、私の靴でも舐めるか?」


令息が下品な笑い声を上げながら、自身の杖に魔力を込めて攻撃の準備を始める。


一方、魔法を封じられたはずのベアトリスは、焦るどころか、どこか呆れたようなため息をついていた。


『アレン様。やはり、この程度の浅はかな罠でしたわ』


僕の脳内に、念話通信アプリを通じてベアトリスの冷静な声が届いた。


控室にいる僕は、すでに闘技場の地下に展開された魔法陣の構造を、端末の【物理法則シミュレーター】で完全に解析し終えていた。


「ああ。闘技場全体から魔力を吸い上げる大掛かりなトラップだけど、突貫工事で仕掛けたせいか、魔力回路の構築が穴だらけだね」


僕はホログラム画面に表示された回路図の欠陥部分を指でなぞった。


「吸収した魔力を地下に逃がすための、ベクトル制御の演算式が甘すぎる。今から君の脳内に、魔力の流れる方向を『逆転』させるための演算コードを送るよ。君の魔力で、そのコードをトラップの結節点に打ち込んでくれ」


『承知いたしましたわ。アレン様から授かった知識で、あの愚か者を完全論破して差し上げます』


ベアトリスが扇子をパチンと閉じ、一歩も動くことなく令息を見据えた。


「どうした?恐怖で足がすくんだか?それとも、魔法が使えなくて絶望したか?」


令息がニタニタと笑いながら、炎の魔法球を生成する。


「絶望?ええ、あなたのアマチュア以下の魔力回路の構築精度に、絶望と呆れを隠せませんわ」


ベアトリスが冷徹な声で言い放つと、令息の顔から笑みが消えた。


「なんだと……?」


「あなたのトラップ、流体力学的な魔力の循環という基本概念が完全に抜け落ちていますわ。広域から魔力を吸収するだけ吸収し、それを安全に逃がすための排熱システムが全く機能しておりません」


ベアトリスが一歩前に踏み出し、地面の魔法陣の一部を扇子で指し示した。


「こんな欠陥だらけのトラップ、外部から少しでも演算式を書き換えれば、一瞬で内部崩壊を起こしますわよ。まるで、あなた自身の底の浅さを体現したような素晴らしい欠陥品ですわね」


「知ったふうな口を叩くな!このトラップは完璧だ!負け惜しみを言いながら焼け焦げろォ!」


令息が激昂し、炎の魔法球をベアトリスに向けて放とうとした。


しかし、ベアトリスは扇子の先端から、僕の送った『逆ハッキングの演算コード』を込めた微小な魔力の針を、地面の魔法陣の結節点へと正確に撃ち込んだ。


「【ベクトル反転】。自らの愚かさに溺れなさい」


ベアトリスが冷酷に宣言した瞬間。


キュィィィィィィィィンッ!!!


闘技場の地下に仕掛けられた魔力吸収トラップが、耳をつんざくような異常な高周波を発し始めた。


青白かった魔法陣の光が、危険な赤色へと変色していく。


「な、なんだ!?何が起きている!?」


令息が足元の魔法陣を見てパニックに陥る。


「簡単なことですわ。あなたのトラップが吸収した膨大な魔力を、すべてあなた自身の魔力回路に『逆流』させているのです」


ベアトリスの言葉の通り、トラップが吸い上げていた闘技場中の魔力が、凄まじい勢いで令息の体へと逆流し始めた。


「あ、がああああッ!?ま、魔力が、体が破裂するゥゥゥッ!」


令息の体が異常な魔力の過剰摂取によって内側から膨張し、彼が持っていた杖や魔道具が次々とショートして火花を散らし始めた。


「お、俺のトラップが……!金で買った最強の罠がァァッ!」


「アレン様の知略の前では、あなたの金に頼った策など、子供の泥遊びにも劣りますわ」


ベアトリスが扇子を開き、氷のように冷たい視線で令息を見下ろす。


ドガァァァァァンッ!!


許容量を超えた令息の魔力と、暴走したトラップが同時に大爆発を起こした。


爆風と衝撃波が闘技場を駆け抜け、令息の体は空中高くへと打ち上げられた。


「仕上げですわ。絶対零度の氷葬コキュートス


ベアトリスが扇子を優雅に振り抜くと、闘技場全体の気温が一瞬にして絶対零度まで低下した。


空中に打ち上げられていた令息の体は、爆発の炎ごと完全に凍結し、巨大な氷柱の中に閉じ込められてしまったのだ。


ズシンッ!!


分厚い氷柱となった令息が、闘技場の地面に突き刺さる。


氷の中の令息は、恐怖と絶望に顔を引き攣らせたまま、完全に意識を失って白目を剥いていた。


「……」


闘技場は、あまりにも知略に満ちた逆転劇と、冷酷無比な公爵令嬢の戦いぶりに、またしても静まり返ってしまった。


「しょ、勝者、ベアトリス・ヴァンルージュ選手ゥゥゥッ!!」


実況の震えるような声が響き、遅れて称賛と感嘆の拍手が闘技場を包み込んだ。


「すげえ……一歩も動かずに相手の罠を逆手にとったぞ!」


「あんな欠陥だらけの罠を仕掛けるなんて、商業国家の連中は恥さらしだな!」


観客たちの声援と嘲笑が交差する中、ベアトリスは凍りついた令息には目もくれず、僕のいる控室の方角へ向かって深々と、そして艶やかに一礼した。


『アレン様。私のアレン様への愛の演算、完璧に実行いたしましたわ』


念話越しに響くベアトリスの誇らしげな声に、僕は端末の前で安堵の息を吐き、微笑み返した。


「ああ、完璧な論破と逆ハッキングだったよ。君の頭脳と美しさは最高だ。お疲れ様、ベアトリス」


愛するパートナーの華麗なざまぁ無双を見届け、僕は最後の試合に向けて端末の最終チェックを行った。


リズ、シャルロット、ベアトリス。


三人のヒロインたちが、僕のチートサポートと共に各国の傲慢なエリートたちを完璧に粉砕してきた。


残るはあと一人。


ヤマト国の誇りを胸に秘めた、あの大和撫子の出番である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ