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辺境伯家三男、アプリで魔法を再定義する。 ~「賢者」認定されたけど、これ「スマートウオッチ」ですから!  作者: のびろう。
第四章 王都学園(二年生編)、あるいは未知の転生者と波乱の武闘会
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第28話 赤点回避の勉強合宿とサムライ少女の無防備な素顔。度重なる密着ハプニングと荒れ狂う正妻たちの嫉妬

季節は巡り、王立魔法学園は進級を懸けた『期末魔法テスト』の時期を迎えていた。


武闘会での激闘や、魔族との死闘を乗り越えた僕たちにとって、座学のテストなど取るに足らない行事のはずだった。

しかし、Sクラスの教室で返却された模擬テストの点数を見て、一人の少女が絶望の淵に沈んでいた。


「……零点、だと」


漆黒のポニーテールを揺らし、ヤマト国からの留学生であるサクラが、答案用紙を握りしめてワナワナと震えている。


「サクラ、魔法陣の基礎理論が全く書けていないじゃないか」


僕が彼女の答案を覗き込むと、そこには見事なまでの白紙と、バツ印の山が築かれていた。


「某はヤマト国にて、己の肉体と刀のみを鍛え抜いてきたのだ。この国の魔法という不可思議な術理など、理解できるはずもなかろう!」


サクラが涙目で反論するが、学園のルールは絶対である。


「でもサクラさん、このまま本番のテストで赤点を取れば、ヤマト国へ強制送還(退学)になってしまいますわよ?」


シャルロットが容赦のない事実を告げると、サクラの顔からスッと血の気が引いた。


「きょ、強制送還……!そ、それだけは断じてならぬ!某が国へ帰されれば、あのアレン殿の作る美味なる『白米』も『ショウユ』も食べられなくなってしまうではないか!」


サクラが悲痛な叫びを上げ、僕の席へと猛烈な勢いで詰め寄ってきた。


「頼むアレン殿!某を助けてくれ!この通りだ!」


サクラが勢いよく机に手をつき、僕の顔のすぐ目の前まで身を乗り出してきた。


「わっ、ちょっとサクラ、近いよ」


僕が顔を引きつらせた、その瞬間だった。

サクラの着ているヤマト国の伝統的な制服(着物風の服)の胸元が、激しい動きと前傾姿勢によって、だらりと大きくはだけてしまったのだ。


「あ……」


僕の視界に、普段は晒しで厳重に隠されているはずの、彼女の引き締まった腹筋と、予想以上に豊かで張りのある二つの白い膨らみの谷間が、無防備に飛び込んできた。

剣士としての鍛錬が産んだ健康的な素肌と、微かに漂う汗と花の香りが、僕の鼻腔をダイレクトに直撃する。


「アレン殿……某は、お主のためなら何でもする。だからどうか、某を見捨てないでくれ……!」


サクラは自分の胸元が全開になっていることなど全く気づかず、上目遣いで僕に懇願してくる。

僕の理性が、彼女の無自覚な色気とラッキースケベによって激しく揺さぶられた。

しかし、その甘い時間は一瞬で終わりを告げた。


「ア・レ・ン・様?」


「ちょっとサクラ!アレンに胸を押し付けないでよ!」


背後から地獄の底から響くようなベアトリスの声と、リズの激怒した声が突き刺さった。


「な、何を怒っているのだお主らは。某はただ、主君に助けを求めているだけで……はっ!?」


そこでようやく自分の胸元に気づいたサクラが、顔を真っ赤にして胸元を掻き合わせた。


「み、見事な隙を突かれた!さすがはアレン殿、某の装甲の薄い部分を的確に……ッ!」


「いや、僕は何もしてないだろ!」


「アレン様のえっち!私という妻がいながら、異国の女の肌に鼻の下を伸ばすなんて!」


シャルロットまで加わり、教室は朝から凄惨なラブコメ修羅場と化したのである。



その日の放課後。

僕たちはサクラの赤点を回避するため、僕の屋敷である『アレン伯爵邸』の広間で、緊急の勉強合宿を開催することになった。


「魔法円の構築は、魔力波長の同調が必須ですのよ。なぜここで炎のルーンを逆位置に配置するのですか!」


「ううっ……ベアトリス殿の言葉は、まるで呪文のように難解だ……」


家庭教師役を買って出たベアトリスの厳しい指導に、サクラはすでに知恵熱を出してふらふらになっていた。


「仕方ない。僕の【記憶定着アプリ】を使って、強制的に脳内へ情報をインプットするしかないな」


僕は左腕のスマートウォッチを操作し、サクラの脳波に直接アクセスして学習効率を極限まで引き上げる魔法を展開した。


「おおっ!なんだか頭の中がクリアになって、難解な文字が次々と理解できるぞ!」


サクラが目を輝かせてペンを走らせる。



夜も更け、時計の針が深夜の十二時を回った頃。


「少し休憩にいたしましょう。私が厨房で、アレン様の作ったお茶を淹れてまいりますわ」


「私も手伝うよ。甘いお菓子も持ってくるね」


シャルロットとリズ、そしてベアトリスの三人が、気を利かせて広間から退出していった。

静まり返った広間には、僕とサクラの二人きりとなった。


「……アレン殿。某のために、このような立派な屋敷を提供し、夜遅くまで付き合ってくれて、本当に感謝している」


サクラがペンを置き、僕に向かって深く頭を下げた。


「気にするなよ。サクラはもう、僕たちの大切な仲間なんだから。それに、君が帰っちゃうと僕も寂しいしね」


僕が素直な気持ちを伝えると、サクラの顔がポッと赤く染まった。


「仲間……。そうか、某は、アレン殿の……」


サクラが急にモジモジとし始め、僕の隣に座り直した。


「その……アレン殿。某はヤマト国を出る時、母上から『強い殿方を見つけたら、絶対に逃すな』と言われてきたのだ」


「へえ、サクラのお母さんが?」


「うむ。そして、某にとってアレン殿以上に強く、優しく、そして……美味なる飯を作る殿方は存在しない」


サクラがじりじりと距離を詰め、僕の肩に自分の肩を密着させてきた。

夜の静寂と、勉強の疲労による謎のテンション。


「あ、あのな、アレン殿。某は剣の道しか知らぬ不器用な女だが……貴殿の妻として、その……背中を流すくらいのことは……」


サクラが熱を帯びた瞳で僕を見つめ、そっと僕の手に自分の手を重ねてきた。

その時、極度の疲労とアプリによる脳への負担が限界に達したのか、サクラの体がふらりと傾いた。


「あっ……」


サクラがバランスを崩し、僕の膝の上へと完全に倒れ込んできたのだ。


「サクラ!大丈夫か!?」


僕が慌てて彼女の体を抱き留めると、サクラは僕の胸に顔を埋めたまま、スゥスゥと静かな寝息を立て始めた。

完全に気を失うように眠ってしまったのだ。


しかし、彼女の両腕は僕の首にしっかりと回され、まるで抱き枕のように僕の体にピッタリと密着している。

袴の隙間から覗く白い太ももと、僕の胸に押し付けられた柔らかな感触。


「ちょ、サクラ、起き……」


僕が彼女を揺り起こそうとした、まさにその瞬間。


「お待たせいたしましたわ、アレン様。特製の紅茶と……って、何をしておりますのォォォォッ!?」


扉を開けて入ってきたシャルロットが、お盆を落としそうになりながら絶叫した。


「アレン!?私たちがいない隙に、サクラを押し倒すなんて!」


「アレン様……これは、どういう状況かご説明いただけますわよね?」


リズが剣の柄に手をかけ、ベアトリスが絶対零度の冷気を纏いながらジリジリと迫ってくる。


「違う!これは事故だ!サクラが勝手に寝落ちして……!」


「言い訳は無用ですわ!やはりこのサムライ女、油断も隙もありませんわね!」


深夜のアレン伯爵邸に、眠るサクラを巡る三人の正妻たちの激しい修羅場が響き渡ったのである。



数日後。

僕たちの血の滲むような(主に僕の貞操の危機的な意味で)勉強合宿の甲斐あって、サクラは無事に期末魔法テストの合格発表掲示板に自分の名前を見つけていた。


「あった……!某の名前がある!赤点回避だ!」


サクラが掲示板を指差し、歓喜の声を上げた。


「よかったね、サクラ。これでヤマト国に帰されずに済むよ」


僕が安堵の息を吐きながら声をかけると、サクラは振り返り、満面の笑みで僕に向かって一直線に駆け出してきた。


「アレン殿ォォォォッ!」


「うわっ!?」


サクラが凄まじい脚力で跳躍し、僕の体に猛烈な勢いで飛びついてきたのだ。

ドスッという鈍い音と共に、僕はサクラの体重を支えきれず、中庭の芝生の上へと見事に押し倒されてしまった。


「やった、やったぞアレン殿!これもすべて、貴殿の教えと、あの美味なる夜食のおかげだ!」


僕の上に馬乗りになった状態のサクラが、僕の胸ぐらを掴んでぶんぶんと揺さぶる。


「わ、分かったから!サクラ、重い、重いよ!」


「某の命は貴殿に救われた!この御恩、必ずや某の体をもって一生かけてお返しいたす!」


サクラが僕の顔に自分の顔を近づけ、感動の涙を流しながら熱烈な忠誠を誓ってくる。

しかし、芝生に押し倒されて馬乗りになられているという体勢は、端から見れば完全にアウトな光景だった。


彼女の袴の裾がめくれ上がり、健康的な太ももが僕の腰に絡みついている。

そして、顔と顔の距離は数センチ。


「……サクラさん?」


地獄の底から響くような、絶対零度の声が僕たちの頭上から降ってきた。

僕が恐る恐る視線を上げると、そこには般若のような顔をしたリズ、シャルロット、ベアトリスの三人が立っていた。


「白昼堂々、神聖な学園の中庭で、私たちの婚約者を押し倒すなど……万死に値しますわよ」


ベアトリスが扇子からパキパキと氷の魔力を溢れさせている。


「サクラ。いくらテストに受かったからって、それはやりすぎ。アレンから今すぐ離れなさい」


リズが木剣を構え、シャルロットはすでに炎の杖を掲げていた。


「な、なんだお主ら!某はただ、主君に感謝の意を伝えているだけで……ヒィッ!?」


三人の放つ圧倒的な殺気に、さしものサムライ少女も悲鳴を上げて僕の上から飛び退いた。


「逃がしませんわよ!今日こそ、誰がアレン様の正妻か、その体に教えて差し上げますわ!」


「待って!僕の上で魔法を放つな!熱い!冷たい!痛い!」


赤点回避の歓喜の瞬間は、またしても僕を巻き込んだ壮絶なヒロインたちの嫉妬と暴走によって、ドタバタのコメディ劇へと塗り替えられてしまった。


しかし、こんな騒がしくも愛おしい日常こそが、僕たちが激闘の末に勝ち取った平穏の証なのだ。


ヤマト国のサムライ少女という新たなトラブルメーカー(ヒロイン)を完全に仲間に加え、僕の王都学園での二年次は、賑やかな笑い声と共に夏休みへと向かっていくのだった。

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