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辺境伯家三男、アプリで魔法を再定義する。 ~「賢者」認定されたけど、これ「スマートウオッチ」ですから!  作者: のびろう。
第四章 王都学園(二年生編)、あるいは未知の転生者と波乱の武闘会
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第24話 王家公認の婚約騒動と異例の叙爵。鉄壁のヒロイン協定が導く、若き伯爵の誕生と逃げられない未来

王都の地下水路で魔族の野望を完全に打ち砕き、僕たちが平和な学園生活へと戻ってから数日後のこと。


僕は再び、王城の最も奥深くにある絢爛豪華な謁見の間に呼び出されていた。

赤い絨毯の敷かれた広大な空間には、玉座に座る国王陛下と、その傍らに控える筆頭宰相。


そして、王国筆頭貴族であるヴァンルージュ公爵の姿があった。

僕の左右には、少し緊張した面持ちのリズと、誇らしげな笑みを浮かべるシャルロット、そして静かに扇子を揺らすベアトリスが並んで立っている。


「面を上げよ、アレン・ログレー。そして三人の麗しき乙女たちよ」


国王の威厳に満ちた声が、静寂の空間に響き渡った。


「此度の地下水路における魔族討伐。王属騎士団のバルト隊長から、詳細な報告を受けたぞ」


国王の目が、僕を値踏みするように細められる。


「未知の古代魔法を駆使し、空間そのものを切り裂き、魔族の野望を未然に防いだその功績。もはや一介の学生が成し遂げたとは信じ難い偉業である。我が王国は、貴殿ら四人の力によって救われたのだ!」


国王が立ち上がり、両手を広げて僕たちを力強く讃えた。

ヴァンルージュ公爵も深く頷き、僕に対して敬意の籠もった視線を向けている。


「ありがとうございます、陛下。ですが、僕たちはただ、自分たちの平穏な学園生活を守りたかっただけです。大層な褒美など……」


「そう謙遜するな、アレン殿。これは国としてのケジメだ」


僕がスローライフを守るために牽制しようとした言葉を、国王がニヤリと笑って遮った。

嫌な予感がする。


盤上遊戯の時も、コーラの一件の時も、この王様が笑った後には必ず僕の平穏が崩れ去ってきたのだ。


「これほどの武功と頭脳を持つ稀代の天才を、野に放っておくわけにはいかん。よって余は決断した。アレン殿、貴殿を我が娘シャルロットの正式な婚約者とし、次期王配として王家に迎え入れたい!」


「なっ……!?」


謁見の間に、国王の爆弾発言が木霊した。

シャルロットが「お父様!」と嬉し鳴きのような声を上げ、両手で顔を覆って身悶えしている。

しかし、その提案に待ったをかけた人物がいた。


「お待ちください、陛下。それはあまりにも強引というものでしょう」


ヴァンルージュ公爵が、鋭い声で一歩前に出たのだ。


「アレン殿の類まれなる商才と、我が公爵家の商会がもたらした盤上遊戯の莫大な利益は、すでに王国の経済を根底から支えつつあります。彼の頭脳は、王家ではなく我が公爵家でこそ最も輝くはず。ここはベアトリスとの婚約こそが筋というものでしょう」


「何を言うか公爵!アレン殿の魔法の力は、国の防衛の要である王家が保護すべきだ!」

「いいえ、経済と内政こそが国の礎です!アレン殿は我が公爵家の婿となるべきです!」


なんと、一国の王と筆頭公爵が、僕という一人の学生を巡って、玉座の真ん前で子供の喧嘩のような政治闘争を始めてしまったのだ。


「お父様たち、アレン様が困っておりますわ!」


ベアトリスがため息をつきながら二人を窘めるが、火のついた権力者たちの耳には届かない。

僕は冷や汗を拭いながら、この窮地を脱するための絶対的な「言い訳」を脳内で検索した。


そして、貴族社会における最も明確で、誰も反論できないルールを口にした。


「陛下、公爵閣下。お言葉は大変光栄ですが、どうか冷静になってください。僕は辺境伯家の三男に過ぎず、爵位を持たないただの平民同然の身分です。王女殿下や公爵令嬢の婚約者となるには、あまりにも身分が釣り合いません。貴族院が黙っていないはずです」


身分差の壁。

これこそが、僕が王家や公爵家からの束縛を躱すための最強の盾だった。

僕の言葉を聞いて、言い争っていた二人がピタリと動きを止めた。


(よし、これで納得してくれるはずだ。僕は田舎でリズとスローライフを送るんだ)


僕が心の中でガッツポーズをした、その瞬間だった。


「ふははははっ!そうか、身分が問題か!ならば話は早い!」


国王が突然、謁見の間の天井が震えるほどの大爆笑を放ったのだ。


「公爵よ、貴族院の根回しはすでに済ませてあるな?」


「ええ、陛下。魔族討伐の事実と、盤上遊戯の利益還元を盾に取れば、反対する愚か者は一人もおりませんでした」


国王と公爵が、まるで悪戯を成功させた少年のように顔を見合わせてニヤリと笑う。


「アレン・ログレー!前へ出よ!」


国王の威厳に満ちた号令に、僕は無意識のうちに一歩前に引き出された。


「貴殿の此度の魔族討伐、および王都経済への多大なる貢献を高く評価し、王家の名において貴殿に特例の恩賞を授ける。アレン・ログレー、貴殿を今日この日より『一代伯爵』に叙爵する!」


「……はあ!?」


僕の口から、謁見の間にはふさわしくない間抜けな声が漏れた。


「一代限りとはいえ、伯爵位であれば王族や公爵家と縁を結ぶに何の障害もない。領地は王都近郊の直轄地を一つ譲り渡そう。これで身分の問題は完全に解決したな、アレン伯爵よ!」


やられた。

僕の最強の盾であったはずの身分差の壁が、王様と公爵のタッグによる権力の暴力(叙爵)によって、木端微塵に粉砕されてしまったのだ。


「お待ちください!いくらなんでも、学生の身分で伯爵など……!」

「すでに決定事項である。さあ、アレン伯爵よ。シャルロットか、ベアトリスか。我が王家か公爵家か、どちらを選ぶのか今ここで宣言するが良い!」


国王が玉座から身を乗り出し、僕に決断を迫る。

左右からは、シャルロットとベアトリスが期待に満ちた、しかしどこか余裕のある笑みを浮かべて僕を見つめている。

背後には、心配そうに僕の服の裾を握りしめるリズの姿があった。


逃げ場はない。

外堀は完全に、そして物理的に埋め立てられてしまった。

ならば、僕が取るべき行動は一つしかなかった。


僕は深く息を吸い込み、王国の最高権力者二人を真っ直ぐに見据えた。


「どうしても婚約を選べと仰るなら、僕にも絶対に譲れない条件があります」

「ほう、言ってみよ」

「僕の第一夫人……つまり『正妻』の座は、僕の幼馴染であるリズにしか譲れません」


謁見の間に、静寂が落ちた。


「な、なんだと……!?」


国王の顔が、驚愕と怒りでピクピクと引き攣り始めた。


「アレン殿!それはいくら何でも不敬が過ぎるぞ!一介の騎士の娘を、王女や公爵令嬢の上に立たせるなど、貴族社会の秩序を根底から覆す暴挙だ!」


ヴァンルージュ公爵も顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げた。

当然の反応だ。


どれほど僕に価値があろうと、王族を第二夫人以下にするなど、王家の尊厳を泥で塗るようなものである。


「リズ……お前からもアレン殿を説得しろ!身の程を弁えろと!」


リズの父親の元上司でもある公爵が、リズに向かって厳しい視線を向ける。

リズは一瞬だけ怯んだように肩を震わせたが、すぐに顔を上げ、僕の隣に力強く並び立った。


「私は……アレンがそう望んでくれるなら、絶対にアレンの隣を離れません」


前世から続く彼女の強い意志が、碧眼に宿っていた。

国王と公爵がさらに激怒し、近衛騎士たちを呼ぼうとした、まさにその時だった。


「お父様、公爵閣下。どうかお怒りをお収めくださいませ」


シャルロットが、凛とした声で一歩前に出た。

そして、リズの右手を優しく握りしめた。


「アレン様が仰った条件。私たち三人は、すでにそのことで完全に合意し、固い協定を結んでおりますわ」


「な……シャルロット、お前、自分が何を言っているのか分かっているのか!?」


国王が信じられないという顔で娘を見る。

ベアトリスもまた、リズの左手を握り、静かに扇子を閉じて微笑んだ。


「ええ、シャルロット様の仰る通りですわ、お父様。アレン様の心を誰よりも深く理解し、支え続けてきたのはリズさんです。彼女を差し置いて、私たちが正妻の座に就くなど、アレン様への愛を偽るも同然ですわ」


「ベアトリス……お前まで……!」


公爵が額を押さえてよろめいた。


「第二夫人でも、第三夫人でも構いません。私たちは、ただアレン様と共に生き、同じ景色を見ていきたいのです。私たち三人の間に、身分の壁や嫉妬などというくだらないものは存在いたしませんわ!」


シャルロットの力強い宣言が、謁見の間に響き渡った。

王女と公爵令嬢が、騎士の娘を正妻として認め、自らは側室でも構わないと国王の面前で堂々と宣言したのだ。


それは、貴族社会の常識を遥かに超越した、彼女たちの絶対的な愛情と絆の証明だった。

国王と公爵は、娘たちのあまりにも真っ直ぐで強固な意志を前に、完全に言葉を失ってしまった。


「お前たち……そこまで、この若者に惚れ込んでいるというのか……」


国王が玉座に崩れ落ちるように深くため息をついた。

ヴァンルージュ公爵も、もはや反論する気力を失い、静かに首を横に振った。


「分かりましたわね、お父様。ですから、アレン様を責めるのはお門違いですわ」


シャルロットがトドメを刺すように微笑むと、国王は渋々といった様子で頷いた。


「……よかろう。余の負けだ。お前たちのその固い絆と意志を、王として無碍にはできん。アレン・ログレー……いや、アレン伯爵よ。我が娘を、そして公爵令嬢を、生涯かけて幸せにすると誓えるか?」


国王の真剣な問いに、僕はリズ、シャルロット、ベアトリスの三人の顔を順番に見つめた。

皆、僕を信じ切り、愛おしそうな瞳で僕を見つめ返してくれている。


「はい。僕の命に代えても、彼女たちを幸せにします」


僕がはっきりと答えると、国王と公爵はようやく満足そうに頷いた。


「よし!では、今夜にでも王都全域に三人の婚約を大々的に発表し、祝賀のパレードを……!」


「お待ちください、陛下!!」


国王が再び暴走しそうになったのを、僕は慌てて全力で止めた。


「どうか、婚約の正式な発表は、僕たちが学園を卒業するまで待っていただけないでしょうか」


「む?なぜだ。これほど目出度いことを隠す必要がどこにある」


「今、王女殿下と公爵令嬢との婚約を同時に発表すれば、学園内はもちろん、王国中が大混乱に陥ります。僕たちはまだ学生です。残りの学園生活だけは、どうか今まで通りの平穏な日々を過ごさせてください。一生のお願いです!」


僕が深々と頭を下げて懇願すると、三人のヒロインたちも「お父様、どうかお願いしますわ」と一緒になって頼み込んでくれた。


「……やれやれ。仕方あるまい。アレン伯爵の叙爵の儀は内々で行い、婚約の件も卒業までは王家と公爵家のトップシークレットとしておくことにしよう」


国王が呆れたように笑いながら、最終的な許可を下してくれた。



こうして。

王宮の奥深くで行われた極秘の会談により、僕はただの辺境の三男坊から、若き『アレン伯爵』へと異例の出世を遂げてしまった。


そして、リズを正妻とし、シャルロットとベアトリスを妻に迎えるという、王家公認の超絶ハーレム婚約が密かに成立してしまったのである。


僕の夢見た目立たないスローライフは、爵位という新たな鎖と、三人の美少女たちの重すぎる愛情によって、完全に逃げられない未来へと固定されたのだった。


謁見の間を退出する際、三人のヒロインたちは僕の両腕と背中にぴったりとくっつき、幸せそうに微笑んでいた。


「これから末永く、よろしくお願いいたしますわね、旦那様?」

「私の知略と財力、すべてアレン様に捧げますわ」

「アレン……大好きだよ。ずっと、ずっと一緒にいようね」


三人の甘い声と柔らかな感触に包まれながら、僕は王城の長い廊下を、顔を真っ赤にして歩いていくしかなかった。

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